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タイ族 (Tày)…静寂な山村の田園風景…


ベトナムを知る⑯【2,098字】

ベトナムの多様性と統一性について③

 ベトナムは、多数民族と少数民族の視点からは、多様性と統一性の国です。

2. タイ族 (Tày)
…静寂な山村の田園風景…


 山の向こうに広がる棚田の緑が、眼前に広がる。まるで大地そのものが階段となり、天へと続くかのようです。




 タイ族の村に足を踏み入れると、まずその静寂さに心を奪われるのです。

 竹と木材で造られた高床式の家々が、村のいたるところに並び、風にそよぐ竹の音が穏やかに響き軽やかな音色。。。



 遠くからは、牛の鈴のかすかな音が聞こえ、日常の忙しさを忘れさせる静けさが広がっています。

 タイ族の人々は、この豊かな自然と共に生き、何世代にもわたってこの地でその文化を紡いできました。

 タイ族はベトナムの北西部、特にボアビン省、カオバン省、ランソン省、バックカン省などの山岳地帯に集中して住んでいます。



 約180万人の人口を誇る彼らは、ベトナム国内で最も人口の多い少数民族の一つです。

 その生活の中心には農業があり、特に稲作が彼らの主な生業です。

 幾層にも重なる棚田での稲作は、ただの農業ではありません。これは、自然との対話であり、年々繰り返される収穫の儀式でもあります。



 田んぼに水を引き、苗を植え、収穫するその手間のかかる作業は、タイ族の手によって丁寧に丁寧に行われています。

 静寂の中、女性たちは家の中で刺繍や織物に取り組んでいます。



 色とりどりの糸が手元で踊り、少しずつ形を成していく布は、まるで彼女たちの物語そのものです。



 タイ族の織物は、その鮮やかな色彩と独特の模様で知られており、特に結婚式や祭りの際には華やかな民族衣装として身に纏われます。

 その衣装は、一つ一つが手作りであり、そこに込められた時間と労力は、着る者だけでなく、それを見る者の心も豊かにしていく。

 女性たちは、こうして祖母から母へ、母から娘へと手工芸の技術を受け継ぎ、村の伝統を守り続けています。



 村の生活は、自然と密接に結びついています。稲の穂が黄金色に染まる頃、村全体が収穫の時期を迎えます。村人たちは手を取り合い、共に田んぼで働き、豊作を祝う祭りを開きます。



 村の中央広場には、太鼓や笛の音が響き渡り、人々は踊り始めるのです。

 足を軽やかに動かしながら、彼らは自然への感謝と祖先への敬意を表現しています。



 その踊りの中には、過去から未来へと続くタイ族の歴史が感謝の舞と音の鼓動に包まれて刻まれていくのです。



 高床式住居は、タイ族の知恵の結晶でもある。山岳地帯での湿気や洪水から家を守るために、彼らは家を地面から高く上げて建てています。



 この構造は、自然災害に強く、また通気性も良いため、快適な住環境を提供してきます。

 家の下には家畜が飼われ、家の中では家族が食事を共にします。

 タイ族の生活は、家族を中心に回っており、家族間の絆がとても強いのです。

 結婚式や新年などの重要なイベントでは、家族全員が集まり、互いに助け合いながら準備を進めます。



 そして、タイ族の社会は、伝統的なアニミズムの信仰に基づいています。



 彼らは山や川などの自然を神聖なものとし、定期的に自然の精霊に感謝を捧げる儀式を行います。

 これらの儀式は、タイ族が自然との調和を重んじていることを象徴しています。

 現代においてもその伝統はつなぎ合わされて幾年も重ねて自然を尊び、共に生きるという彼らの哲学は、現代の環境問題に対する重要な教訓を含んでいます。

 確かに、近年の都市化やグローバル化の影響で、タイ族の若い世代の中には、都市部での生活を求めて村を離れる者も増えています。

 それでもなお、彼らの文化と伝統は深く根付いており、村に残った者たちはその伝統を守り続けています。

 タイ族の村を訪れると、そこにはただの静けさだけではなく、彼らが大切にしてきた知恵と努力、そして未来への希望が感じられます。

 棚田に広がる稲穂、刺繍に込められた物語、そして踊りの中に表現される感謝の心。

 これらはすべて、タイ族が代々受け継いできた文化の証であり、彼らの生き方そのものなのです。

 山々に囲まれたタイ族の村には、ただの風景以上のものがあります。

 それは、自然との調和を尊び、共に生きるという彼らの姿勢が織り込まれた生活そのものです。

 訪れた者、私たちは、静かな村の中で、彼らの文化と自然への敬意を感じ取り、心の奥深くにその風景を刻み込みます。


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