k osawa

何かの草稿 書きながら考えています。よかったら反応いただけるとうれしいです mail: k.osawa.0128@gメール

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    最近の記事

    「近況報告」

    ふと、昨年書いた小説をまるごとアップします。 街中のベランダと、いくつかの二人の話です。 いつも何か書いていますから、もし興味ある方いたら お気軽に連絡もらえたら! 冊子版もあります。 (写真:カバーのartwork & design by genn hiraqui) 1 その先にとびきりの狂気があるぞ、と聞いて、太助さんはベランダで過ごしていた。  やがて狂気に出会うのでは、と半ばこわく、半ばわくわくしながら。  かの女がしているのは、そこに出してある折りたたみのイスに

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      • 散歩道|12

        [ブレと揺れ]  対岸で安藤は、まだくしゃみを引きずっている。繰り返しくしゃみをしているわけではない。くしゃみをしたその迫力に、自分が衝撃をくらっている。どうして、くしゃみをしたんだろう。肌感覚では分かっている、向かいの部屋であなたが、こちらの話をしている。私の髪型について話しているという様子が、ありありとした雰囲気で伝わっていた。勘違いかもしれないけれど、遠く外れてはいないだろう。ただ、それを口にするのは何となく、ためらわれる。口に出したら、これまでのルールがなくなって、

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        • 散歩道|11

          [みんなと私たち] 「何か、あれはたまたま鏡合わせっぽかっただけであって、実際はただ単にお互い、日々過ごしているだけなのだなと、思うよね」 「私たちと同じような、人が」 「そういうと語弊があるけれど。まあ同じような人間ではあるんだけど」 「それでもいいんじゃないの? そもそもどうして……鏡合わせなんだっけ」 「いつからか分からないけど、気づいたら。それこそ、ここに引っ越してから一年くらい、ずっとかな」 「そういうことになっていたというわけ?」 「ええまあ」 「

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          • 散歩道|10

            [みんなと私たち] 「何か、あれはたまたま鏡合わせっぽかっただけであって、実際はただ単にお互い、日々過ごしているだけなのだなと、思うよね」 「私たちと同じような、人が」 「そういうと語弊があるけれど。まあ同じような人間ではあるんだけど」 「それでもいいんじゃないの? そもそもどうして……鏡合わせなんだっけ」 「いつからか分からないけど、気づいたら。それこそ、ここに引っ越してから一年くらい、ずっとかな」 「そういうことになっていたというわけ?」 「ええまあ」 「

            散歩道|9

            [夢見る三十五歳]  もう遅い、お互いのことを何となく知ってしまったから、人が想像を育む余地がなくなってしまった。それもまた思想なんだろうか。あなたはそう、安藤があの部屋で行き来している様を思い浮かべてしまう。会ったのが本当に安藤だったのかは、そうとは言い切れない。けれど安藤が渡辺に、くどくどと何か、日々のこだわりを伝えること。彼が職場に出て行って、そうして昼間にエレベーターを愛好している様子などが、以前よりクリアに想像できるようになってしまった。 対岸の鏡越しに、似たよ

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            散歩道|8

            [何かによる抽象]  生活とは、結構、抽象的な思考じゃないだろうか。生きるとか、暮らすとか。元々は考える必要はないことだけれど、どうも、皆が言うからそこにあるように思える。絵画が、絵具か何かが画面に筆で塗られて重なっているだけなのに、何か皆が「描かれている」と思ってしまうから、実際にある出来事のようになっている。ほんとうはただ、一瞬一瞬の現象が毎日毎日、続いて重なっているだけというのに、そう見えてしまう。ある時にたちどころに消えてしまう、かりそめのかたちなのかもしれない。け

            散歩道|7

            [テーブルを囲む三人]  さて、夜中に、あるテーブルを囲んでいる。あなたが歩く斜めの道のその先に、すこし道幅より広いくらいの細い建物があって、その中頃の階がバーになっている。きしんだような床に、小さいテーブル。テーブルを囲むソファと椅子にすわって、3人の人たちが酒をゆっくりと飲んでいる。3人とは、あなたと、安藤のようなひとと、もうひとり……八子さんのところにいた、Yだろうか、かたちは分からない。分かるとしたら、3人がそれぞれお互いに、暮らしの話をしている。それぞれのグループ

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            散歩道|6

            [植物との出会い]  知らぬ間に日々は過ぎる。意味のないことを勝手に繰り返しているのではない。出たり入ったり、繰り返すたびに、景色はすこしずつ新しくなっている。息や、気象なんかもそうだ。世間も色々と、あわただしい。ただ戸を出入りするだけでも、どこか前のときと少しばかり変化している。 「ちょっと今日ここで、多めに光をあててあげていい?」  ある朝、太助さんはそう聞いた。あなたに言ったのか、それとも手にもった植木鉢にむかって言ったのか分からなかったけど、あなたは「うん」と適

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            散歩道|5

            [あふれて混じる思い]  思想とは、浴場のようなものかもしれない。裸の人が寄り集まって、湯気がもわもわと立ち上り、中で人たちはゆったりと、ただ身体を温める。浴場をうろつき、身体を洗ったり、毛を剃ったりする。そのうちに温まった身体から、汗や、なにか断片的な思いなどがあふれてきて、目を合わせると互いに「これや!」と感じる。その言葉がだんだんと集積して、かたちになる。なるものの、それが皆の考えの集まったものだとは思いたくない。何だか汚いから。かしこまった作品としては認識されないが

            散歩道|4

             タコがいる。広大な湖面の、その底の方に見え隠れしている。そこに住まいをつくって、岩陰からでたり隠れたり、何かをとって捕食したり、寝たり夢を見たり寝ぼけたりしている。数匹で家族になって、一緒に暮らしたりしている。漁師が仕掛けた蛸壷には、気をつけないといけないのだが、生来の性質から、あのフォルムにはどうしても惹かれてしまう。気づくと軟体の手が数本入り込んで、そのまま、のたりのたりと、身体中がツボの中へ……そうなるといけないから、自意識をツボから遠ざけるように、マインドトレーニン

            散歩道|3

             何か決められた、こうあらねばならぬ、という枠などがあると、いつでもそれを疑ってしまって一歩戸惑う。何も言わなくなってしまう。時にそっぽを向いて、何も関係のないことばかりしてしまう。語る言葉を持たない鳥は、問われてそうしてどうするのか。  何かを伝えたときのあなたのそんな反応を見て、太助さんは、ボンヤリしてどうしたのか、聞いてなかったのかと訝る。時間がたってあなたが返事をしている途中に、口早に自説を述べたりする。あなたとしては、先の問いに応える言い方を考えていたところだった

            散歩道|2

             あなたがそう、思いふけりながら歩いていると、いつか、道ばたにある石のベンチに腰掛けている。いつも、ふと座りたくなるベンチだから、そこのコンビニエンスストアで買った缶のチューハイを飲んでいる。何%だろうか? ストロングではない。遠くにかすかに、飲み屋の喧騒がしている。乾いた風が心地いい。季節はもうあれか、秋なんだな。いや、秋も終わるのか? その部屋があった国も、秋だったのか? 忘れてしまった。熱帯だけれど山あいだったから、そう暑くなくて、時折霧のような雨がふって、すぐに乾いて

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            散歩道|1

             あなたは仕事柄、よく散歩をしている。別に、歩く仕事をしている、というわけじゃない。  歩いていると、空洞の多い頭の中で、何かコロコロと転がる音がしている。言葉だろうか。  後ろの方から、何か人の気配がしている。呼吸するような声。はぁはぁといいながら、ジョギングをしている。蛍光色のシャツを着ている。蛍光がチラつくことで脳の回転に磨きがかかり、その揺れる速度をより速くしているらしい。右腕にはスマートフォンをくくりつけていて、そこから何か音が流れている。必死な感じのシティポッ

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            風通し|20+

             炎の中で私たちは呼吸をしている。それは真っ赤に燃え盛った空気を吸っているわけで、そこにいるとしぜんと、肺が焼けつくような感じがする。それに合わせて、体温も上がっていく。炎を見ている人たちも同様だ。心拍数がどこか、ふだんより高まっている気がする。心臓に炎症が起きる。炎症を休めるために、ある人はタバコを喫う。ある人は飲酒をする。手、手仕事をしているひまもない。道端にのこされたストロング飲料の空き缶をみるだにそれは確かなことだろう。 「ねえちょっとさ、燃えちゃってさー!」そんな声

            近況|19

             ところでSというのは太助さんが同居していた、いわゆるパートナーだった。そういえば一緒にいたころも、よく揺れていたんだった。電話がぷいぷい言い出したのも、ちょうどその頃じゃなかっただろうか。そうしてその頃から、手元を見つめて過ごす人が目立つようになった。ぷいぷいと言えば画面をみて、人々の声をチェックする。万事を確かめる。いつしかぷいぷい言うスイッチはなくても、手元の画面をみて、合間に手元ではない景色を見るようになっていた。そうして発話をしないから、徐々に内向していく。中には、

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            近況報告|12

             今日も日は暮れなずむ。  太助さんの方ではピアノの音もお隣さんの気配もまったくしない。街の方ではほのかな喧騒がしている。それでかの女はそこにいて、ぬれているサンダルではなく玄関から持ってきたツッカケをはいて、山の本のつづきを開く。誰も知らない山がそこにあるという。チームを組んで、人たちは向かっていこうとする。しかし、計画段階で手間取っている。山がどこにあるか、誰も知らないから。けれども彼らは喧々諤々とやりあって、行くための計画を立てている。何か、精神の力を使って。それはいい

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