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アイドルヲタ4人でBiSHの今後について喋った話|地下→地上→解散という稀有な例について

「師走」の語源になった師匠を見てみたい。弟子の僧侶がこう床の雑巾掛けとかしながらさ……

「あー、ヤベェ。12月マジ多忙で死ぬわコレ」「それな、年賀に歳暮に大掃除に仏名会だもんな〜」「………おい見ろ。師匠すら走ってんぞ」「大事件じゃんこれ……。あの師匠が走る……こりゃ師走だな」ってなったわけやん。

いや、普段どんだけゆったりしてんだよ。絶対に太ってるでしょ。かっけぇなって感じで見習いたい気持ちになるわけですが、語源を調べると「師が走るから師走」ってわけじゃないらしい。

まさかの前提から覆るパターンね。なんだそれおい、と。マニフェスト無視する系の政治家か、と。そこにも突っ込みたくなるが、いやいやこんな話がしたいんじゃない。何が言いたいかって、私もこの年末はゆったりに憧れるくらい忙しかったのである。

イヴにアイドル周りの人々とカラオケ

だーるまさんがマーライア

24日もけっこう深くまで仕事をしていて、コンビニの店内BGMのマライア・キャリー聴いて「あら、今日イヴじゃん」と気づいたくらいでした。

カップルとキリストを心のなかで「おめ〜」なんて祝福しながら仕事終えて、帰り道を歩いてたら急に電話。1年くらい前に一緒に仕事をしていたアイドル雑誌の編集者から「おい、新宿でチキン食おうぜ」と、暇だとタカを括って電話が来たわけですよ。

もうなんか知らんけど、声が低すぎて「(こわ。「新宿でチキン」って反社の暗号か何かかな?)」とか思ったんですが、そんな恐怖よりもなにせイヴに暇であることが勝りますよね。

そこで大江戸線でズバーンと新宿に行くと、編集者が、元地下アイドルのライターと、過激派の女乃木ヲタ(映像作家)と3人で待ち構えてました。

コンビニで買ったらしいパック詰めのチキンと、なんかもう「KALDIの最底辺」みたいなやたらカラフルなお菓子を持って、一言「よし揃ったな。カラオケ行こう」ってスネークみたいなテンションで言いやがって。それでイヴの夜にカラオケに行ったんです。

明らかにおかしいんですね。友だち同士でイヴはのに、決して「いえ〜い!」みたいなテンションじゃなくて、なぜかめちゃくちゃローテンションなんですよ。もうなんか「今から刑務所入る人」みたいな顔で検温受ける、みたいな。明らかにおかしな感じだったんですね。

「BiSHが解散するけど、どう?」という投げっぱなしジャーマン

投げっぱなしジャーマンの図

広めの席に案内されたら、隣から「あめはよふけすぅぎぃにぃ〜」「アハハ!わーいわーい!」みたいな、山下達郎モノマネで盛り上がってる大学生の声が聞こえてくるわけです。こっちはなんか、友だちが怒られてるの見る、みたいな神妙な面持ちで4人して座ってるわけだ。

編集者がおもむろに、底辺KALDIの袋を開ける。腹の中で「(そこははまず鶏やろ)」とM-1のブラマヨのネタのオマージュをつぶやくも届かない。ライターも乃木ヲタもスマホ触って一言も喋らない。そういえばこの二人は会ってからまだ一言も喋ってない。いつも大口開けて笑ってんのにどうした……。「ジョイサウンドをお楽しみの皆さん♪」とかもう、完全に右から左に抜ける。「LiSAでーす」…-じゃない。今いちばんLiSAじゃない。なんでイヴにこんな暗黒の集会に参加せにゃならんのだ。と思っていたら、真っ赤なポップコーンを持った編集者が急にマイクを持って言い放った。

「ジュウ・ショさん、BiSHが解散するらしい。どう?」

……。

……いやその日、BiSHの解散は話題になっていて、各SNSのトレンドになっていたんで知ってました……。知ってましたが「どう?」てなんやねん。というのが正直なところで、それはもう洋食屋のシェフから、急に「あの……ハンバーグの付け合わせをブロッコリーからニンジンに変えたんですけど、どう思います?」と聞かれるくらい、超絶怒涛の知らんがな状態だったんです。

「……どう、て。どう……う〜ん。どう? まぁ、でも彼女たちも、よりやりたいことに邁進し、健康的な毎日を送れるのではないかしら」としか答えられなかったわけです。

それを聴いて編集者は「だよね、うん」とうなづき真っ赤なポップコーンを口に入れ、横の元地下アイドルライターは急にスマホを置き無言でデンモクいじり出して、ユーミンの「守ってあげたい」を入れ「ユゥドンハフトゥウォーリウォーリー」と歌い出し、乃木ヲタが「いや全員守る気? どんだけ母性強いん」とうっすらエコーのかかった声でツッコんだところで、ようやくその場にはじめての笑いが起きたわけです。

ここからはその日のBiSH談義について書かせてほしい。テーマは明確でないのだが「地下から地上に上がって卒業・解散するアイドルは1人になってもメジャーに残れるのか」ってことを語った。

なかなか、こうアイドル好き、というか一部生業にしてる人が集まって話すこともなかったので、貴重な会話になるかな、と思いまして。忖度なしの編集ほぼなしで書いてみます。マジで超だらっだら話してるだけなので、覚悟してください。

地下→地上→独立後の最適解は何なのか

わけわかんないくらい豪華な部屋に誘導された

元地下アイドル(以降:元)「コウザイラァビュー、コウザイ…ソユドンハフトゥウォ………もういいや(演奏中止ボタンぽちー)」

乃木ヲタ(以降:乃)「え、嘘でしょ。最後のリフレインがよくない? あれ永遠に歌いたくなんない? 銀河鉄道999バリに続けてほしいのに……あ『リフレインが叫んでる』歌お」

編集者(以降:編)「もういい。ユーミンもういい!というか、どうせなら恋人がサンタクロースだろうが。クリスマスだぞ」

乃「……BiSHはね、あたしはそろそろかなって思ってたよ(マイク置く)」

私「いや急。めっちゃ急。そして完全なる嘘だろそれ。そんなわけないやん」

編「俺はまだ続けると思ってたなぁ。せっかくWACKから世間的にメジャーなアイドルが出たんだから、普通はもうちょい続けるよね。あれかな。解散して別グループとして出す的なお得意のやつかな」

元:「逆に売れるのがWACKっぽくなかったよね。売れることでアイデンティティが崩壊する的な感じね。MOROHAと一緒だよね。ジュウ・ショさんはWACKのそういうとこ嫌いだもんね(笑)」

私「やめて。(笑)はやめて。嫌いじゃないから。なんなら旧BiSのときテンちゃん推してたから。現場派じゃなかったけど(以前、記事で「バズ系アイドルは不健康だ」と書いて以降WACKアレルギーと思われているのである)」

私「でもファーストサマーウイカは、きちんとメジャーでブレイクしたしね。BiSHの『集団無個性的』な感じだと在籍中に個人の仕事が取れず、解散後に路頭に迷っちゃうのでは? みたいなのが……。なんか、アイドルってただでさえ寿命短いのに、どうしても大人の食い物にされてる感があって。優しくないなぁとは感じるけど。嫌いじゃないよ」

編「あ〜それはそうかも。『BiSHって急に下ネタ叫んだりする、なんか変なサブカルユニットでしょ』っていう全体のイメージが先にくるわけね。一人ひとりが個性強そうに見えるけど、実は無個性なんだ。それおもしろいな」

元「でもアユニちゃんとかハシヤスメとかチッチがソロやってるし、アイナちゃんは歌とか踊りやったりしてるし、モモコちゃんは本書いたりしてるじゃん? リンリンもお洋服でしょ? ちゃんとマネジメントとして個人にフォーカスしてるよね」

私「ん〜たしかに。なんだろう。それより先に「BiSHっていう変なことする集団」のイメージがついてる感ない? だから世間的にはどうしても箱として見られちゃうというか」

元「プロモーション自体に、サブカル地下アイドル独特の臭いあるんだよね。馬糞がまだ取れてないんだよ。とにかく強烈なことして、目立ってなんぼよ!レッツバズ!って感じが。それが存在意義みたいになってるから、疲弊しても変なことし続けないと存在意義なくすやん? だからいっつもやることがグループとして強烈なのさ」

乃「なるほど」

元「だから、もしかしたら他のグループより、箱推しが多くなるんかもね。ファンコミュのなかでは、もちろん単推しばっかりだろうけど。根っこは普通の子だから、そこで個人の活動としてスタンダードなバンドとか歌とかエッセイとか出しても、確かに弱いかもな〜。前衛芸術とかしたら一貫性ありそう

編「わかる。でも前衛やるほど地下に潜るからな……。そしてWACK自体が世間に馴染めないキャラが売りになってるから、解散後にメジャーにいくなら、いったんキャラクターをリセットしなきゃ……という枷もある」

私「そうなんよ。テンちゃんもずっと表現活動してるけど、なかなか地上に上がってこれない。何回かDJ観に行ったけど、かっこいいのになぁ。カミヤサキみたいにフリーランスの振付師が結構リアルかも。後は解散後もWACKのもとでソロ活動し続けるパターンかなぁ。う〜ん、旧BiSで感じたけど、WACKのアイドルは、解散とか卒業のときに進路が見えない感じが強い

乃「その点、坂は最高じゃね? きちんとメンバーごとに進路相談できてる感じある」

私「坂は初動で既に強いから、過度にバズ狙う必要ないしね。デビューと同時にバナナマンMCで冠あるってヤバいよね」

乃「それもそうだけど、やっぱちゃんと1on1してる感じ伝わるもん。在籍中から番組に出るたびにキャラクターが構築されて、モデル、役者、歌、バラエティみたいに得意分野に合わせて仕事して、卒業後もそのままソフトランディングしてメジャーで活躍できてる。やっぱ秋元も今野もすげぇんだわ。チキン食おうや」

編「(チキンの箱パカー)BiSHの解散後はでんぱに近い感じになると思うんよな〜。もがちゃんはモデルとかお芝居やってる。ねむきゅんは本屋やったり、プロデューサーしたりしてるじゃん。2人ともどメジャーな人かといわれると微妙だけど、楽しそうに仕事してる」

私「そう! 実際、それがいいよね。ねむきゅんが理想系なんだわ。売れる売れないじゃなくて好きなことを気ままに……みたいな。すんごいオシャレ」

元「ホントそれね。アイドルが卒業とか解散するときって『今後も売れるためには』みたいな話になりがちだし、今この場がまさにだったけど、幸福はそこじゃないもんね。自力で好きなことやれたらいいよね。乃木でも桃子ちゃんみたいに、芸能界辞めてアパレルやったりね。ひめたんみたいにカウンセラーやったり……。桃ちゃんとこで服買ったもんわたし」

乃「アレ、速攻で売り切れたよね。あぁ、やばいやばいやばいやばいあぁあぁー! 桃子ロス……ロスの波がまた来た(彼女は現役時代、大園桃子のために合計数百万円捧げた三島由紀夫ばりの過激派なのである)」

編「ファンとしては、その後も応援できる何かがあったらやっぱ嬉しいけど、結局は幸せに生きて〜って感じだもんね。まぁ露出はしてほしいだろうけど」

私「いやファンとしては卒業とか解散後の露出大事よ? 乃木ヲタさん、大園桃子の活躍見られてほんと幸福だから。オサカナ(sora tob sakana)ロスはどこに持っていけばいいのよマジで。照井さんのTwitterに張り付くしかないんですけど(筆者は生粋のオサカナヲタ)」

元「……いや、アイドル側からいうと『知らんがな』よ。そこはもう、元地下アイドルのリアル出すけど『なんでファンのために人生捧げなあかんねん』の精神よ。あんたはもうテアトルアカデミーの子役でも推しとけや」

私「いや現場どこだよ。撮影スタジオにサイリウム持っていったらええんかいそれは。あぁもうわかった。そういうこと言うならわかった。『sora tob sakanaはじめます』(デンモクぽちー)」

乃「じゃあ私、次『リフレインが叫んでる』歌うわ」

編「いやだから『恋人がサンタクロース』だろ」

どこかで何らかの好きなことができる時代だから安心して

修羅の時間

その後はダウナー入っちゃった私と乃木ヲタがオサカナと『逃げ水(大園桃子センター曲)』を歌いまくるという修羅の時間に入ったわけです。なんだかんだもう2人も一緒にユニゾンしてくれるのが泣けた。すんごい変拍子なのに、ちゃんと歌ってくれた。当初の暗黒街の住人モードはどこへやら。最後はみんな優しさに溢れている、いいクリスマスだったわけだ。

こう、文字起こしすると卒業とか解散後のアイドルを心配するファン心理って、結構やばいっすよね。お前ら親かよっていう……。しかもプロデューサーに対して、めちゃんこモンスターペアレンツっぷりを発揮しちゃうんですよ。

ただ、元地下アイドルライターが言うみたいに、本人からしたら「卒業後の人生は私の好きにするわ。知らねぇよ」って感じですからねコレ。なんなら「お前より稼いでっから安心しろ」っていう。好きなことさせてもらうわ! みたいに颯爽とやめるタイプは、やっぱり推せますよね。芸能界に呪われてないというか。飄々としてるのがたまらんのよ。

だから私はマジで「これから」というときに辞めたオサカナちゃん大好きですし、乃木ヲタさんは大園桃子のブランドで服を買い続けるでしょう。

メジャー云々じゃなく「好きなことやる」っていう爽快なメンタル

「7割の人は1日8時間ゆるやかに自殺している」出典:Sirabee

今回のテーマのオチとしては「そもそもメジャーで芸能生活することが正として話すのが不毛」ってこと。幸福に暮らすのがゴールだとして、たとえ地下でも「好きなことをしてお金を稼ぐ」ってのは幸福なんだから。そんなファンのエゴ議論はもうマジで、カレイかヒラメかくらいどうだっていいわけですね。

しかしWACKはここ10年くらいずっとゲリラ部隊としてヘルメット被ってジャングルの奥地に潜み、急に全裸で手榴弾投げているわけです。秋元康やつんくが前線で戦っているのを茂みの中から見ながら、たまに手榴弾投げる。それはやっぱりすごいですよ。超賢いですよ。まさに「戦を略す」と書いて戦略なわけですから、こりゃもう大成功です。

そんなゲリラっぷりが評価されて、ついに前線で戦うやうになった突然変異がBiSHなわけで。だから解散後が気になっちゃうんでしょう。肩書きやマネジメントが変わったとき、あの下ネタ満載の奇天烈な感じはどう変化するのか。

「……そこに注目だ」とか、書くと思ったでしょ! そんなクソみたいな話は書きませんよ。結論としては、いまBiSHを応援してる人は解散したらスパッと頭切り替えよってことです。大丈夫。今の時代は誰しも好きなことでお金稼げます。

そしてもうコレはタイムカプセル的なメッセージですが、解散と同時に新しい推しを見つけて同じ過ちを繰り返そうぜ、2023年の同志たちよ。

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