やりたくないことはやらなくていい

やりたくないことはやらなくていい

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音楽

いつだって、自分の抱えている感情を素直に吐き出させてくれるのは音楽だ。 酔っ払っている時も、仕事で辛いことがあった時も、失恋した時も。ずっと側に居てくれるのは音楽だ。 歌詞に込められた意味も、ライブで聴くMCも生音も、全部が全部、自分の心の中にスーっと入ってきて自分のパーツとなって身体の中に昇華されていく。 ライブ中に感極まって涙を流してしまうことがよくある。というかほとんどのライブがそうなっている。何回何十回聴いてきた曲ですら、毎回毎回泣いてしまう。そんな自分を時に嫌いに

    • ふたり

      思い描いていた今日じゃなくてもいい あなたがいてくれるだけでいい きっと未来の僕はそうやって言ってくれるだろう 何気ない会話から始まる 昔話も未来のことも 二人で飲むコーヒーですらも 愛おしく感じたりする たまに口うるさくなったり 食い違いもあるだろうけど そんな時は朝まで 納得がいくまで お互いをぶつけ合ってみよう 思い描いていた今日じゃなくてもいい あなたがいてくれるだけでいい それだけで幸せだから いつも言っているけど 隣にいてくれてありがとう これからも苦労を

      • 父みたいな先輩の話

        「この仕事も来年からは純平がやらなくちゃいけないからな、ちゃんと教えとくわ」 そんな言葉はなるべく聞きたくなかったんだけどな。 10月末に、先輩が退職する事を聞かされた。 先輩とは言っても、48歳だし、奥さんと子供だっている、ごく普通の、普通であれば上司くらいの人だ。 社会人1年目に今の職場に配属されてから4年間、俺はずっとその先輩にお世話になってきた。 配属されて1番に名前を覚えてくれたのも先輩だった。「久しぶりにうちの班に新入社員が入ってきてくれて嬉しいよ、歓迎会しな

        • 孤独について

          人は皆、孤独だ。と思う。孤独の定義は人によって違うとは思うが、日本の人口が1億3千万人だと仮定したら1億3千万通りの孤独があると思うのだ。 会社の上司、同僚、学校の友達、先生、そしてもちろんあなたにだって。人には人の乳酸菌みたいに人には人の孤独がある。 私もそうだ。友達と遊んでいても、仕事をしていても、孤独だと感じることが多い。 「そんなの孤独じゃない」と言われようが、私は孤独だ。独りなんだ。と言い聞かせている。自分にも、伝わるはずのない他人にさえも。 昔から強がっていた

          浮気

          聞こえないように、耳を塞いだ。 「あの子にどんな顔すればいいと思ってるのよ」 階段下で響く怒声と、やけにこもった小さい声が、階段を昇って2階の部屋まで聞こえてくる。 この手の話は初めてじゃなかった。 まだ小さかった頃、アパートに住んでいた時にも襖越しに聞いたことがあった。その時は何が起こってるか理解できなかったのに、今になっては また『アレ』か。 で片付けてしまうくらいには歳をとった。 起こってるのは母親で怒られているのは父親、つまりそういうこと。 なんで同じ過ちを2回

          浮気

          喫煙所

          ガタンゴトン、ガタンゴトン 終電間近の駅で吸うタバコは、なんともいえない気持ちにさせられる。 一瞬記憶が飛んで、自分が何故今ここにいるのか理解するのに少し時間がかかった。 そうだ、地元に帰ってるんだっけ。 昨日から埼玉の友達の家に遊びに行って、酒をしこたま飲んで、たわいもない話をして、ほろ酔いのまま電車に揺られて、乗り換えの待ち時間でタバコを吸いに改札を出たんだった。 喫煙所にはいろんな人がいる。 イヤフォンをしてスマホを見ている若い男、仕事終わりであろう疲れた表情をしてい

          喫煙所

          綺麗事だけで片付く世界じゃない 人に優しくしろ、それでいて見返りを求めるな、なんて優しい人が損をするじゃないか。 当たり前のことなのに、人は皆、無償の何かを求めて、それを簡単に捨てる。欲しいものを手に入れたいのに、いざ手に入れると大事にしようともせずにすぐにゴミ箱に捨ててまた新しいものを探しに行く。 一途な人が欲しいと言った人がいた。 望み通りに一途な人を与えたら、「飽きた、物足りない」と言ってその人を捨てた。 退屈しない人がいい、と言った人がいた。 望み通りに、好奇心旺

          長い髪

          伸びた。 短めのマッシュヘアーだった髪の毛は、全体的に伸びて、前髪は口に付くし、襟足はクルーネックのTシャツの首元に付くし、耳は全て隠れる。 「純くんは短めのマッシュが似合うなぁ、私はそれが一番好き。」 一番好きだった人が言っていた言葉が、鮮明な景色と共に思い出される。 1Kの狭いマンションの一室だった。 「髪伸ばそうかなぁ」「結えるくらいの長さにしたいんだよね」 そう言った俺の願望を、「嫌だ!」と一蹴した人。 その人と別れてから、もう3ヶ月が経った。 あの頃から髪はほ

          長い髪

          考え事と缶酎ハイ

          9%のアルコールを流し込んだ。 明日の事を考えたくなかったから。 記憶を飛ばすまで飲んだ事は何回かあるが、飛ばしたいと思って飲んだ事は一度もなかった。 なかった。 過去形、つまり今日は記憶を飛ばしたかった。 22年間生きてきて辛かった事は何度もある。 祖父母の死。最愛の彼女との別れ。仕事。数えたらキリがない。 では今日は何故。 答えは明確だった。 仕事。 日々の業務に加えて今日からまた新しい業務が始まり、自分の中のキャパシティが限界を超えてしまった。 仕事を

          考え事と缶酎ハイ

          一番好きだった2人の話

          一番が2人もいるのはおかしいだろって事は少しだけ置いといてもらって、元カノの話をさせてほしい。 度々何かに紐づけてnoteに書いていた元カノの話を、今夜は一本にしてみたくなったので。 まず初めに、1年9ヶ月付き合った人の話。 この人は現時点で一番長く付き合った彼女だった。 高校3年の夏に出会って20才の夏に別れたんだけど、本当に大好きだった。 顔も可愛くて、スタイルも良かった。 たくさん初めてを経験したし、ライブもフェスも一緒に行った。 お互い実家暮らしだったけど頻繁に会

          一番好きだった2人の話

          何があったって

          「ねぇ、笑っていてよ」 少しだけ寂しそうな瞳で、夢の中の女性は言った 誰だったんだろう。あのひとは。 肩まである髪が揺れていた。 目が覚めてスマホを確認する。 4時30分、ただまだ起きるには少し早いくらいの時間。 涙が頬で乾いていた。 ああ、あいつがいたのか。

          何があったって

          香り

          9月14日。夜21時。1人だけの部屋。真っ暗、網戸。 どこからか聞こえる、お風呂の音。下の階からは両親の笑い声。それと対極な気持ちの自分、22歳。 光が消えた端末から流れる、金木犀の夜 またこの季節が来た。一番好きな香りがするこの季節。 下に降りてサンダルを履いて、暗闇に身を乗り出す。 昼夜問わず香る、金木犀の香り。 落ち着くから好きだ。それ以外はない。 ただ、少しだけ切なくなる。 いつかの日に君が言った 「その香り、いいね」 でしょ?僕もそう思う。

          香り

          雲の切れ目から煌々と光る月が顔を出す 少し靄がかかって霞んで見えて、それが少しだけ切なさを感じさせる 夜風が気持ちいい8月の夜 煙草に火をつけて、少しだけ秋を感じているみたいだ 名前の知らない虫の鳴き声だけがりんりんと響く夜も悪くない 仕事や人間関係で疲弊しきった心を癒してくれる気がする 「純くんなら大丈夫だよ」「ばあちゃんが見守ってるからね」 ふと思い出したのは、5年前の夏に他界した祖母の言葉だった もう5年も経つのに、未だに涙することも少なくない。 元気にやってい

          マッチングアプリ

          いつの間にか、辛くなっていた ずっとずっと分かっていた もうここに君の気持ちは無いことも もう少しで終わることも 終わりが来るのは突然のようで必然だった 薄々勘づいてはいた スマホに入っていたマッチングアプリ 偶然見つけてしまった 寝る前に2人で見ていたYouTubeの内容は 一瞬にして頭の中から消えた タスクを切ってから電源を切るまでの君の仕草が いつもより速くなった あぁ、やっぱりね 分かってたよ、こうなるって それから1ヶ月後、隣に君はいなかった 君の隣には

          マッチングアプリ

          紙とペン

          白い紙に書き殴った夢は何処に行ってしまったのか ペンはあるはずなのに、持つ手はいつの間にか消えた 紙なんかいくらでもある、書かないのは何故だ 現実に希望を見出せなくなったからか 希望を持つ事に不安を覚えたからか 不安を感じる事に恐れているからか 『夢はでっかく持て』 いつかの教師は言った あの時はその言葉を信じて馬鹿正直に何でも取り組んだ 不安や葛藤なんか何一つ無かった ただひたすらペンを動かして、未来を描いていた ただ、年齢を重ねれば重ねるほど、ペンを持つ回数は

          紙とペン

          8ミリのメンソール

          鼻を抜ける煙がすぐ白から無色へと変わる。 入道雲が高くなった夏の空の下で、煙を吸って深呼吸をした。独特のスースーした空気が、暑さに似合わない。 何の変哲もない土日。やる事も無く、ただ座って煙を吸っては吐いてを繰り返していた。 「何すりゃいいんだろ」 独り言を呟き、暑さに耐えられず玄関を開けて家に入る。クーラーの効いた部屋の中には妹と母と猫しかいない。テレビでは夏の高校野球がやっていて、白球を追いかける球児達が眩しく映っていた。 最近、退屈を感じる事が日に日に増えていく。 毎

          8ミリのメンソール