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  • チェケラッチョ・マイ・ティンティン

    これを読めば人生が好転します。

  • 放談

    これを読めば現代社会の何たるかを深く理解することができるでしょう。

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【極私的メディア論】書物の「つまみ読み」について

◎導入 商売敵がなにやら不穏な動きをしてると聞いたので、探偵に奴のメールボックスを漁らせた。 そしてこのメールを見つけた日の晩、ワイフとシャンペンを開けた。 「シャンパン」じゃない。「シャンペン」だ。 「シャンパン」と言ってる奴らは正直終わってると思う。 それにつけても、「つまみ読み」って「ななめ読み」のことじゃないのか? いや違うか。 いや同じだ。 いや違うか。 まぁどっちでもいいか。 ◎メイン 【調査報告】案件ID:S000712 橋本様 株式会社

    • 【エピローグ】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『地上でいちばん寒い場所』

      くだらない。 機関銃から無数の鉛玉を吐き出しながら、内心優子はそう思っていた。彼女の視界で身をよじらせながらまっさらな雪景色に鮮血のコントラストを挿入しているのは世界的な文学者、ジェフリー・クックなのだが、そんなこと知る由もなかった。お決まりのルーティーンとして左眼の眼帯を触り牛革の硬さを確かめると、死体は略奪者への「見せしめ」としてそのまま、彼女は自ら経営する「南極レストラン」へと踵を返した。  まさかとは思うが、王 長嶋によって全人類が滅ぼし尽くされたとでも?万が一そ

      • 【第十一回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『グランド・フィナーレ』

        「・・・そう考えるとやっぱり合点がいきますよね。あぁこれが最先端のユースカルチュアなんだって。確実に感性が変わってきてますよ。下の世代は」  都内某所。スウィートルームでゲロルシュタイナー片手に高城康は、「男のライフスタイル・マガジン」web版担当にエンタメ業界の「地殻変動」を喧伝していた。  とはいえ、喧伝しながらも脳内では別の思索をくゆらす。それがこの男の真骨頂といえば、ピンとくる読者もいるのではなかろうか。そう、概して成功者というものはそういった習性とともにこの混迷

        • 【第十回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『KOJOSEN』

          精神病院を脱走した後藤敦子と、元マネージャーのメリー乃木坂が再会を果たしたのは都内某所の集合団地だったと言われている。 あの一件で監督者責任を追及され退職を余儀なくされるまでメリーは港区のタワーマンションでアレクサとルンバに身の回りの世話をさせていた。にも関わらず、事件以降は駅前のサミットで閉店間際まで粘り半額シールが貼り付けられた惣菜を買い物カゴに放り込むような生活をしていたのである。その日も持参したトートバッグに詰めたトータル二円引きの商品を揺らしながら帰宅した。そして

        【極私的メディア論】書物の「つまみ読み」について

        • 【エピローグ】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『地上でいちばん寒い場所』

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        • 【第十回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『KOJOSEN』

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        • チェケラッチョ・マイ・ティンティン
          12本
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          【第九回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『北沢死す』

          「ねぇ、うどん粉って知ってる?」  うどん粉はパスタとは違い、非合法だ。あの有名なミュージシャンもこれで捕まった。 「そっか、意外にやってんだね。AYAMEちゃんは「かけ」派?それとも「もり」派?俺は両方!笑。。。の前にちょっとトイレ行って来るわ」  それをいつ誰が発明したのか未だ明らかにされていない。いつのまにか出回っていた。パスタよりも幻覚作用が強く、ホームセンターに行けば材料のほとんどを入手できるため、貧困富裕の区別なしにあらゆる層へと爆発的に広まっていった。

          【第九回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『北沢死す』

          【第八回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『北沢語る』

          「、、、全ては同時期に起こっているんです。そして全てはゆるやかに繋がっている。でも残念ながら大衆はそれに無自覚で、すぐに忘れてっちゃう。そう、SNSのタイムラインみたいにね。ぶっちゃけちゃうとこの国はもう終わりだと思ってますよ。もう立ち直ることはできない。残念ながら、ね。だから僕は一抜けた。若い人は早く国外に脱出する準備をしたほうがいい。そう、本日、この学び舎から旅立たれるみなさんのような方々は、今のうちに逃げる準備をしておいた方がいいのだと、私は強く思ってます。  さっき

          【第八回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『北沢語る』

          【第七回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『狂騒のパスタセックス・ブーム』

          「、、、現在、死者は五名、重軽傷者十一名となっており、現場は混乱しています。続報が入り次第お伝えします」  アナウンサーは神妙な顔をカメラに突きつけると、何事もなかったかのように口角を上げ、声のトーンを高めた。 「続いてはこちらのコーナーです」  画面が切り替わりお決まりのオープニングVTRが流される。ナレーションは、耳にすれば皆聞き覚えのある、だが誰も顔を知らない声優だ。 「街中に芽吹きつつある様々なムーブメントを調査!報告!これさえ観ればあなたも情報通!」  ナ

          【第七回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『狂騒のパスタセックス・ブーム』

          【第六回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『ある博愛主義者の回想と実験 』

          「まもなく、一番線に、電車が参ります。危ないですので、黄色い線の内側に、、、」  昨日は誰かが外側に行ったせいで、上司に遅刻のメールを送らねばならなかった。吊り革につかまりながら脱毛サロン、写真週刊誌、自己啓発本と広告を眺め回していた。電車は停車したまま。 『誰とでも打ち解けられる!50の方法』  そばで白い鼻毛を出した男が通話をしていた。眉毛をへの字にしてお辞儀をしながら、本当に申し訳ありませんと繰り返している。  携帯をポケットにしまうと、聞き取れない程の声量でぶ

          【第六回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『ある博愛主義者の回想と実験 』

          【第五回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『The 会合』

          「最初はほんの小さな居酒屋で行われる、ほんの小さな集まりだった。  個人経営の自宅兼店舗。その二階部分にて、男たちはなけなしの金で購入した酒瓶を持ち寄っては「この先」を話し合い、少しずつ、だが確実に前進していった。  いかなる偉人も最初は無力な赤ん坊であるように、この「会合」も始まりはこんな程度だった――」  スクリーンに映し出される大仰なVTRを眺めながら、北沢は退屈そうに熱燗を口中で転がしていた。このナレーションはあの大御所俳優の誰かに頼んでいるのだと、松宝(映画配

          【第五回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『The 会合』

          【感動】日本の出馬BEST3【泣ける!】

          能書きはナシや。 しょっぱなからぶちかます。悪いけどそれが選挙やねん。 第3位は小泉純一郎の出馬や。さすがにこれははずされへん。 いまでも鮮明に覚えとるわ、小泉はんがディープインパクトにまたがって大井競馬場のゲートをくぐりはったんや。 実況の古館はんがえらい興奮してはったから、正確な音声がテレビで流れることはなかったんやけど、 口の動きからして絶対、「感動した」ってつぶやきながら馬に鞭打ってたと思うねん。 実際そうだったかはわからんよ?わからんけど、そのほうが素敵

          【感動】日本の出馬BEST3【泣ける!】

          【苦言】日本音楽産業のダメなトコ【え!?】

          いやはや。オリ、パラが終わったいま、ワシらが注目できるんはニコるんとみちょぱの関係性だけになってしもうたな。 あの間柄は日本芸能史上でもかなりのレアケースで、年間通して風物詩とするべきや。 あれこそ平成以降の日本が失ってきた、「粋」、「乙」を令和によみがえらせとんねん。 それに比べてというべきか、それにつけてもというべきか、音楽産業はどないなっとんねん。 別にフェスがどうこう、ファーストテークがどうこう、言いたいわけちゃうねん。それ以前の話や。 これはいい機会やから

          【苦言】日本音楽産業のダメなトコ【え!?】

          【都市伝説】「上白石」の真実を語ります【驚愕】

          こんなこと、今さら言わんでもわかるやろうけど、ワシのチョリソーは、レッドホットチリペッパーズなんよ。 略して、レッチリや。 ほんま、光栄なことやと思う。最近じゃ、殿堂入りもさせてもろたしな。 これもひとえに、上白石モネがモカして、モカがモネしたおかげや。 二人には足向けてよう寝れん、寝れんのや。 この機会やから言わしてもらうと、これは二人にも了承得てるんやけど。 ワシらにも想像できん、ものごっついオーディションをくぐり抜けたほんの一握りのエリートだけが、上白石になれるん

          【都市伝説】「上白石」の真実を語ります【驚愕】

          【第四回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『格付け王の憂鬱』

          「独占スクープ おワンコサークルの11PMは乱行サークル!?」  そんな見出しを眺めるマネージャーを横目に彼は楽屋で動画を観ていた。マイケルジャクソン・ライブ・イン・ブカレスト。まだ本人がステージ上に現れていないにもかかわらず、会場はパニック状態だ。そういうわけだから本人がポンと出現した瞬間に彼の歌声を聴くことなく失神退場するファンがいても不思議じゃない。イヤフォンを外しスマフォの電源を切ると彼はため息をつく。これはお決まりのルーティーン。  失礼しまーす。それではお時間

          【第四回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『格付け王の憂鬱』

          【第三回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『大阪決戦』

           それは突然の手紙だった。  受け取った優子は、オーガニック地中海料理の仕事にて一週間程の有給休暇取得を決意した。実家を離れ寮生活を送っている弟が大会に出るのだ。封筒の中には入場券と、ボールペンで素っ気なく楽しみにしててよと書かれた便箋とが入っていた。別にメールでもいいのに、わざわざこんな伝達法を選んだ事実から優子は弟の並々ならぬ覚悟を感じとった。彼は三年生。これが高校生活最後の大会となるはずだ。優子は即座に大阪行き新幹線の乗車券を購入した。  会場は熱気に包まれていた。

          【第三回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『大阪決戦』

          【第二回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『ジェフリー・クックが描き出す「安全で幸福なディストピア」』

           九十七年に『さらば愛しき我々よ』を発表し、米国の、ひいては世界の文学界に強烈な衝撃を与えたこの作家は、以降もコンスタントに作品を発表し続け、ポスト消費社会を生きる我々の孤独と、ほんのちょっぴりの希望とを浮き彫りにしてきた。  昨年に上梓された新作『アヴェリア通りの交響曲』でもその魅力は遺憾無く発揮されているどころか、さらに勢いを増している。加えて本作では恋愛、サスペンス、時代劇、果てはSFと、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような多ジャンル性を保ちつつも、最後には綺麗にま

          【第二回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『ジェフリー・クックが描き出す「安全で幸福なディストピア」』

          【第一回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『北沢庄司の奇妙な習慣』

          「・・・なんで、ここはシナジー生み出して・・・でさ、我々がベンチマークにしてるのはあそこなわけでしょ?だったらさ・・・まぁだからさ。一旦ゼロベースで考えてみようよ・・・うん、それはいい質問だね・・・結局さ、どれだけ誰もやってないソリューションをギブできるかってことじゃない・・・」  ガラス張りの会議室で若きIT社長は熱弁をふるっていた。男の名前は北沢庄司。ジーパンにTシャツで髪の毛はツーブロック。スニーカーはイージーブーストを履いている。 会議室には五人いて、それで満席だ

          【第一回】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『北沢庄司の奇妙な習慣』