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【エピローグ】チェケラッチョ・マイ・ティンティン『地上でいちばん寒い場所』

くだらない。


機関銃から無数の鉛玉を吐き出しながら、内心優子はそう思っていた。彼女の視界で身をよじらせながらまっさらな雪景色に鮮血のコントラストを挿入しているのは世界的な文学者、ジェフリー・クックなのだが、そんなこと知る由もなかった。お決まりのルーティーンとして左眼の眼帯を触り牛革の硬さを確かめると、死体は略奪者への「見せしめ」としてそのまま、彼女は自ら経営する「南極レストラン」へと踵を返した。


 まさかとは思うが、王 長嶋によって全人類が滅ぼし尽くされたとでも?万が一そんなことを考える向きがいたとして、筆者にできることはといえばせめて哀れみの情を投げかけてやることぐらいか。ライムスターが2010年に発表したアルバム、『マニフェスト』(傑作)の収録曲『K.U.F.U.』に記されている「万物の長人間ナメんな」というパンチラインが自明性を帯びるほど、南極の地は安定していた。なんせ今晩は優子の弟もファンだったあの有名なミュージシャンがこの地でライブを敢行するのだから。店のVIPルームを楽屋として使わせてくれないかとマネージャーから打診され、それを快諾したため、闖入者を殺害した直後も素知らぬ顔をしてオーダーを伺う必要に迫られた。だが、ミュージシャンはオーダーを取るまでもなくパスタに食らいついていたのだった。傍ではマネージャーが鳴り止まぬスマホの通知に高速で対応し続けている。


「店長さんもやりますか?haha、冗談ですよ。今日は協力してくれて本当にありがとうございます。マネージャーから聴きましたよ。今日は弟さんのためにも精一杯の音を届けたいと思います。料理はこれとこれをお願いします。もうすぐパスタが「くる」と思うので、勝手に入ってこのテーブルに置いて帰っちゃって大丈夫ですから。それでは、ちょっとお手洗いに行ってきますね」






補足
#CMT Challenge

リル・ビッチィ、CMTチャレンジに参戦
大手ポルノサイトに動画を公開

アトランタの若手ラッパー、リル・ビッチィが19日の金曜日、インスタグラムを更新し、CMTチャレンジへの参加を表明。ポルノサイト大手へ動画を投稿した。
己のイチモツをカメラにおさめ、そのサイズや美しさを競うCMTチャレンジは、日本の@theword1sm1ne氏が個人的に画像をアップロードしていたことがきっかけとなり、今や世界中で流行している(@theword1sm1ne氏のアカウントは現在停止中)。
アメリカのアーティストとしてはヤング・アス、ブラット・ディカプリオ(ロックバンド・ソーシャル・セクシャル・ハラスメンツのヴォーカル)に続き今回で三人目。
昨年『サック・マイ・エヴェレスト』がスマッシュヒットを飛ばしただけに、チャレンジへの参戦が期待されていたリル・ビッチィであるが、動画を視聴したファンからの評価はおおむね好意的なもので占められている。
「ワオ! 最高にクールだね!庭にあったら物干し竿と間違えそうだよ!」
「ハイキングなんかこれっぽっちも興味ないけど、このセクシーな山には登りたいわ」
一方、USAトゥデイのキャスター、ケイティ・レターマンは「恥を知りなさい」と彼を痛烈に非難。若者達が率先してデジタルタトゥーを残していく風潮に警鐘を鳴らした。

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