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【ザ・フラッシュ】はあの人気DC映画の実写化?【よい点わるい点】【ネタバレ感想】

画像も使って、容赦なく #ネタバレ しますので閲覧にはご注意ください。

▼あらすじ(ネタバレ):

第一幕
 バリー(エズラ・ミラー)はジャスティスリーグのメンバーとしてヒーロー活動を頑張る日々。ブルース(ベン・アフレック)やアルフレッド(ジェレミー・アイアンズ)やダイアナ(ガル・ガドット)とは良い関係だ。しかしプライベートでは仕事も友達も恋愛もうまく行かないし、無実の罪で妻殺害の容疑がかけられている父の控訴審が迫るもアリバイとなる食品スーパーの監視カメラ映像でも顔が確認できず絶望的。そんな折にバリーはそもそも母を殺されないようにスピードフォースで過去に戻って対処すれば良いと考えるようになる。
 過去に悲劇があるからこそ今の自分があると考える老練なブルースからは反対されたが、数年ぶりに再会したアイリス(カーシー・クレモンズ)の若者らしい正義感や情熱に触発されて、バリーは18年前に戻り、強盗に殺害された日の朝に買い忘れたトマト缶を母の買い物カゴにこっそり入れる。
 未来に帰る途中でバリーは母が自宅で襲われず生き延びたことを確信するが、スピードフォースに《謎の男》が現れて10年前に押し出される。

第二幕
 10年前を現在だと勘違いしたバリーは自宅で母と父の3人で団欒を過ごすが、18歳のバリーが帰宅して歴史が少しずつ変わっていたことに気づく。バリーはヤングバリーを科捜研に連れて行き化学薬品と落雷を同時に当ててフラッシュの能力を与えるが、この時の落雷で逆に自身の能力を失ってしまう。
 ゾッド将軍(マイケル・シャノン)の宇宙船が地球に飛来してクリプトン人を出頭させるように要求する。この世界線にもバットマンが居ることを知ったバリーはウェイン邸を訪れてブルース(マイケル・キートン)の協力を得る。
 3人はロシアの軍事施設に潜入して地下で監禁されていたカーラ(サッシャ・カジェ)を救出する。カーラは太陽エネルギーを浴びてスーパーガールとして復活する。ゾッドと対面したカーラは、カル=エルは地球に向かう途中でゾッドに捕獲されて死亡しており、当初カル=エルにプリントされたと思われていたクリプトン人のDNAコーデックはカーラの体内にあるとゾッドから説明される。
 バリーはブルースとカーラの助けを借りて薬品と落雷を再現して再びフラッシュの能力を得る。ヤングバリーはバットマンのスーツを改造して自分のスーツを作る。
 4人はゾッド将軍率いるクリプトン人とアメリカ軍が激突している砂漠に行き戦闘開始する。多勢に無勢ながらも善戦するが、カーラはゾッドに殺されてコーデックをゾッドに抽出されて、ブルースは飛行機で特攻自殺してしまう。

第三幕
 ヤングバリーの提案で2人のバリーはスピードフォースに入り時間を数分間だけ巻き戻す。しかし一度は回避してもすぐにまた別の方法でブルースとカーラは死んでしまう。同じことを何回も繰り返す2人だったが結論は変更できず、いつも地球の滅亡エンドに繋がってしまう。バリーは観念して、そもそも全ての元凶である「母の救ったトマト缶」を取り消して歴史を元に戻すべきだと主張する。
 母を殺したくないヤングバリーは抵抗して一人でリトライを繰り返す。そこに再び《謎の男》が現れて、亜空間が歪んでマルチバース同士が衝突して崩壊が始まる。謎の男の正体は何十年間もリトライを続けたヤングバリーだった。年老いたヤングバリーの攻撃を庇う形でヤングバリーが絶命して年老いたヤングバリーの身体が消滅する。
 スピードフォースに1人残されたバリーは再び18年前に戻って、母の買い物カゴからそっとトマト缶を取り除く。
 現在に戻ったバリーは父の公判を傍聴する。スーパーの監視カメラ映像が決め手となり父は逆転無罪を勝ち取る。実はバリーは18年前のスーパーで父が買うトマト缶を棚の一番上に差し替えていたのだ。それで父の顔がビデオに映った。
 しかし法廷から出てアイリスと共に勝訴を喜ぶバリーのもとに現れたブルースはまたしても外見が別人(ジョージ・クルーニー)だった。どうやら世界がほんの少し変わる効果は今回も出てしまったらしい。

エピローグ(ポストクレジット)
 飲み会の帰り道。バリーの肩に支えられるアーサー(ジェイソン・モモア)は泥酔している。アクアマンが酒に弱くなったのも歴史改変のせいだろうか?

▼私の評価:

細かく分けるとこんな感じです。(各5点)
平均3点くらいだから「総合的には良い映画」だったと思います。

俳優:★★★★★
物語:★★★★
脚本:★
衣装:★★
音楽:★★★
VFX:★★★
ギャグ:★★★★
ドラマ:★★★★
アクション:★★★
サプライズ:★

エズラミ:★★★★★
キートン:★★★★
サッシャ:★★★★
ベンアフ:★

私は基本的に2〜4点の範囲でつけるので、こんなに1点と5点が並んでいるのは異常事態です。世間の評価も割れているようですが、私の中でも賛否入り乱れた映画でした。

▼良かったところ:

🔵これは「あの人気作品」の実写化だ

スナイダー支持派の一部には非常に不評な『ザ・フラッシュ』ですが、スナイダーバースの続編だと思って観るからそうなるだけで、全く別の世界線の物語だと思って観れば楽しめる作品でした。どんな意見を持つのも自由ですが、あまりにも激しく批判している人達には「そのくらい予告を見れば判るだろ」と言いたくはなります。なんというか、どう見てもインドカレー屋なのにメニューに白米がないことに猛抗議してるのに近いですかね。(苦笑)

*DC映画ファンをゆるがす命題:どちらから続く世界なのか?

真剣に考えている人のことを腐す意図はありませんが、『ザ・フラッシュ』がスナイダーカットの続編かジョスティスリーグの続編かであれこれ考えるのは無駄だと思います。だって明らかにそのどちらでもないのですから。逆にどちらかであると期待してしまうと、矛盾点が気になって不幸になりますよ。

今やDCファンの中にはスナイダーカルトとスナイダーアンチが強固に形成されており、何かあるたびに宗教論争を始めるようになってしまいました。どちらも全体の中では少数派だと思いますが、SNSは少数派の意見が増幅される装置(エコーチェンバー)です。なのでスタジオは『ザ・フラッシュ』をどちらにも属さない宙ぶらりんのコメディ映画として作るしか道がなかったはずなのです。少なくともビジネスとして考えればこの帰結しかありません。

この状況下で私がお勧めしたいのは、『ザ・フラッシュ』を『レゴバットマンの実写化』だと思って観ることです。ギャグやジョークのノリも、脚本の雑っぷりも、どれもアニメのようなリアリティラインでした。『レゴバットマン・ザ・ムービー』を嫌いな人は居ないと思うんですよねー。そもそも一般的なアメコミヒーロー映画とは、実際の人間が演じているだけで、中身はアニメなんですから。

ザックやノーランは大局的に見れば突然変異に近いですし、独自のコメディセンスで残虐な『JOKER』を描いたトッド・フィリップスも異端だからこそベネチア映画祭で金獅子賞《グランプリ》を獲れたのです。

https://news.abs-cbn.com/entertainment/09/08/19/joker-polanski-win-top-prizes-at-venice-film-festival

🔵エズラの演技とドラマが良かった

この映画をアニメライクな「ただの子供向けドタバタお祭り騒ぎ」じゃなくて、ちゃんとした「映画」にレベルアップさせたのは、間違いなくエズラ・ミラーの卓越した演技でした。もし彼の演技が無かったら私は低評価をつけてたかもしれません。(笑)

観た人には伝わると思いますが、私が『ザ・フラッシュ』で気持ちが一番ブチ上がったのは、サプライズでもアクションでもなく、予告でも出てきたこの2つのシーンでした。

試作スーツでメトロポリスに行った時
再び18年前に戻って歴史改変をアンドゥした時

前者はMoSのコラテラルダメージに制作者がきちんと向き合った意思表明であり、この世界線のバリーが能力を得た直後からすでに正義感に溢れる青年だったことを示すポジティブな感動を呼ぶシーンです。予告では遠くに居る養生テープでぐるぐる巻きのバリーを見逃していたので、これが私にとって一番のサプライズでもありました。

後者は一人二役の演じ分けで2時間ずっと観客を楽しませてくれたエズラが最後に見せる迫真の演技です。このシーンを見れば彼が怪物級のスーパー俳優であることが改めて実感できますし、映画を観る素晴らしさを思い知らせてくれます。脚本がどんな完成度だろうと、VFXの品質がどうだろうと、最後は結局俳優が見せる人間性で決まるんですよ。私もこのシーンでは感涙しました。

いやー良い演技をしているだけに、本当にスキャンダルが痛いですねえ。

🔵サッシャのスーパーガールが良かった

ずっと以前(彼女の名前の日本語表記が定まる前)から、私はこの映画で彼女のことだけは絶賛してましたよ。(マウント)

リークされた写真を見る限りサーシャ・カージェ[ˈsaʃa ˈkaʝe]のスーツ姿はかなり決まっているし、今後には続編で活躍することになるだろうし、そうすれば名前の表記も固まっていくだろう。楽しみである。

2021年6月21日 22:02 新スーパーガールの俳優の名前の読み方が謎な件
https://twitter.com/GothamAdam/status/1406647516381200388

サーシャ・カジェのスーパーガールは普通にかっこいいので、DC全体がこんなグチャグチャな時期の作品でデビューになってしまったのはとても気の毒に思う。まあカヴィルを降ろしてねじ込んだ人の判断ミスだけど。
予告編では隠されてるけど、たぶん映画本編では彼女の牢獄は緑色に光ってると予想する。

午後11:58 · 2023年2月13日

この予想は的中しまして、カーラが監禁されているロシアの軍事施設では緑色のクリプトナイトらしき物体が牢獄に吊るされていました。説明は一切なかったような気がするのでスーパーマンに疎い人には本当に太陽光発電が出来なくて弱ったと誤解されてそうですが。(笑)

どのくらい共感してもらえるか知らんけど、フラッシュ新作映画で私はサッシャ・カジェのスーパーガールだけはコスチュームも顔も10点満点やぞ。彼女の筋肉ブリブリなナイスバディはアメリカのヒーローに相応しい。
もし至高のカヴィルを交代させるしかなかったなら、これ以上ない選択肢だったと思う。

午前0:38 · 2023年4月28日

ビジュアルは文句なしだと私は力説していましが、映画が公開されてTwitter民も大いに盛り上がっているので、こちらは今更説明不要だったでしょうか。

屈強そうに見えて、エズラと並ぶと意外と小柄なのは可愛かったですね。

🔵キートンのバットマンが良かった

申し訳ないですが、私は一貫してキートンバッツだけは批判を続けてきました。

30年来のファンを喜ばせるために当時の俳優を起用したと思っていたのだが、なぜ30年前と同じスーツにしなかったんだろう? ビンテージ自動車やビンテージ楽器のような威厳やロマンを出せるチャンスだったのに。

午後8:31 · 2022年2月16日

キートンバットマンは私が最初に知ったDCヒーローなのでカムバックは嬉しいが、せいぜいゲスト出演とかにしてほしいとは思う。長く出てるとウォッチメンのナイトオウル1世みたいなことになりそうで心配。笑

午前1:50 · 2022年8月16日

すまん、この部分はちょっと笑ってしまった。
>しかしキートンは、『ザ・フラッシュ』でバットマン役に復帰する条件として、将来的な単独映画の製作を視野に入れていたともいわれる。これらの情報が真実なら、状況はいささか複雑そうだ。

午後7:31 · 2022年12月11日

ベンアフバッツは悲しくなるくらい痩せてるのに、一方でキートンバッツはアホみたいに巨大な肩パッド。ジジイならジジイらしく体にあった形のスーツにしようや。それとも80年代意識でわざとやってる?マジでスタイリストは真面目に仕事して結果がこれなの? なで肩の方がずっとカッコイイやろ

午後7:43 · 2023年2月13日

私の中では「バットマン=生身の人間(ただし運動神経はオリンピック選手並み)」という認識なので、あきらかに重力を無視しまくるムーブとか、奇跡レベルで運が良くないと生きて帰れないレベルのスタントを見ると、どうしても違和感を覚えてしまう。ノーランやザックはこの線引きが上手かったと思う。

午後10:23 · 2023年2月13日

…結構強めの批判が多いですね。

でも完成した映画を観れば、この変化は納得できるものでした。最初から『実写版レゴバットマン』だと思わせるド派手アクションが続いて、これはキートンバッツもあのフォルムであのくらい激しく動かないと映画の中で浮いてしまいます。

これがスパイダーバースのようなアニメなら「いつもスパイダーノワールだけ白黒」みたいな違和感を出すことも出来るでしょうけど、実写ですからテイストを変えるのは難しいですねー。

何気に平成4年の『バットマン・リターンズ』からスーツがそのまま黒フラッシュに再利用されたのも大きかったです。私が見たい「あの90年代テイストのプロテクター」はしっかり拝めたので。よく考えればInstagramに監督が写真を載せてたので予想できましたね。

https://www.instagram.com/p/CUA2qB8lo2_/

ところでキートンバッツの復活のために、DCはコミックを利用してメディアミックスで宣伝を仕掛ける徹底ぶりでした。

マイケル・キートン版のバットマンは30年前の映画の続きをコミックで展開。昨年に開始して、全6巻で2022年7月に連載終了。英語版はKindleでも買えるが、日本語訳はまだらしい。フラッシュ公開延期のおかげで日本語訳の出版が映画公開に間に合うという珍事が起きるのか?

午後5:11 · 2022年8月21日

結局アメコミの日本語翻訳は間に合わなかったみたいですね…

🔵長髪キートンとの会話はよく出来てた

これまでのタイムトラベル理論と今作のタイムトラベル理論の違いを2本のパスタで説明するシーンは見事だったと思います。変更点を起点にして過去にも影響が出るって面白いですね。それでどこまで変わればアフレックがキートンになって、ザックがバートンになって、BTTFにマイケルが起用されなくなるんだよ!と野暮なツッコミも入れたくなりますが。(笑)

あとブルースの捨て台詞へのバリーの返しのジョークも良かったです。

Bruce: Pass.「パスだ(協力はしない)」
Barry: Pass… me the salt?「え?今パス・ミー・ザ・ソルト(塩をパスして)って言った?」

日本語字幕では全く別のセリフが当てられていましたが(まあしょうがない解りにくいですから)、個人的には本作で一番素直にクスッと笑えたジョークでした。英語圏の人達はお決まりでよく言うのかしら。

🔵二人のブルースが同じことを言った

この演出は素直に良いと思いました。

心に抱えた傷が今の私達を作っているんだよ
過去の痛みが現在の私の作ったのだ

🔵これはジャスティスリーグじゃない

ファン(の中のカルト過激派とアンチ)が「これはもう事実上のジャスティスリーグだ」「否、こんなものをジャスティスリーグとして認められるか」という論争を起こす前に。

映画の中でバリーが自分から「僕たちはジャスティスリーグを名乗れるようなチームじゃない」と言いました。これは監督はじめ制作サイドの、ザックのジャスティスリーグへの敬意の表れだと私は解釈しました。

このセリフ選びは慎重で、愛があって、同時に分別もあって、良いと思いました。

▼悪かったところ:

さて、お待ちかねの(?)あまり感心しなかったポイントです!

🔴バットフレックの扱いは最悪!

バットフレックの扱いには全く満足できていません。

私はあの下着か網タイツみたいなスーツはクソダサイと思いますし、ジョスティスリーグでアクアマンがやらされたギャグ担当を押し付けられてドチャクソ不快でした。ワンダーウーマンの真実の縄でスケベがバレるのはまだしも、「覆面は心の弱さを隠すためだ」とか、マジで要りません。本作は最初からスナイダーバースじゃないと認識してたから大目に見てやりますが、思い出すだけでイラつくらいには不愉快な描写でした。

そして気になったのは良すぎる運動神経ですよね。ザックの世界線のブルースにあんな動きは不可能です。体操などのオリンピック選手なら出来るかもしれないギリギリのラインを攻めるのがスナイダーバースでした。今作のバッツはどちらかというと90年代のアニメシリーズの動きですし、言うならばこれはバットマンじゃなくて『黒いアイアンスーツを着たスパイダーマン』なんですよねー。そうなると、いくら格好良くてもコレジャナイという感情は生まれてしまいます。

そしてラストにはバリーの父を救う代償として、アフレックからクルーニーに変更されてしまいました。これにより、この世界ではバットフレックは永遠に消滅したことになります。RIPバットフレック。安らかに眠れ。

どうでも良いんですけど、これで『アクアマン2(The Lost Kingdom)』はこのまま乳首おじさんが復活するんですかね。(苦笑)

https://www.movieguide.org/reviews/movies/batman-robin.html

🔴脚本が悪すぎる

そもそも脚本とストーリーについては、試写会で観たという方がTwitterで「私が書いた二次創作のような脚本だ」と、褒める文脈で言ってた(ファン心理を理解してると褒めていた)のですが、私はその感想を読んだ瞬間から「こりゃダメな映画かもしれん」と期待値が爆下がりしていました。ファンが見たいあれもこれもを詰め込んだ映画は締まりがなく散漫とした凡作になりがちですから。

果たして、公開日に劇場で観たら、予想を良い意味で裏切られてストーリーは良いと思いました。何より他の全ての要素を捨ててまでバリーの心境変化に寄り添って、彼の重すぎる決断を描き切ったことに私は好印象を持ちました。

ただ脚本は本当に酷いと思いました。見せたいギャグをあれもこれもと詰め込んで収拾のつかない、矛盾と破綻だらけの脚本でした。おそらく制作過程で何度も路線変更やリライトがかかり結果的にパッチワークのフランケンシュタインみたいなことになってしまったのだと思います。そういう状況で唯一守れたのがバリーと母親のドラマだったんでしょうね…と監督と脚本家に同情します。

なんというか、『ザ・フラッシュ』はムスキエティ監督版の『レディ・プレイヤー・ワン』って感じなんですよね。とにかく小ネタやゲスト出演が多い。そしてスピルバーグがキューブリックに執着して「あの映画」をそっくり脱構築したように、ムスキエティはザックに憧れて『マン・オブ・スティール』をフィーチャーしたのかな、という感じですね。そのモチベーション自体は少年のようで美談なのですが、映画の脚本として洗練されているかは別問題です。

それと『ザ・フラッシュ』が過激派も穏健派も問わずスナイダーカルトから広く嫌われるのは、映画のメッセージが説教臭いからでしょう。「過去の間違いを正そうとしても不可能だ」というエスプリが「過去にザックを捨てたのは間違いだったけど今更スナイダーバースには戻せないんだから諦めろ」という当て擦りに聞こえても仕方ありません。

🟡シュレーディンガーの猫か?

おそらく脚本の二転三転の影響だと思うのですが、バットフレックとフラッシュは2017年版ジョスティスリーグの世界線から来たのか、2021年版スナイダーカットの世界線から来たのか、場面ごと描画されるごとに状態が遷移するというまるで「シュレーディンガーの猫」のような挙動をしていました。

うーん、バリーがもともと量子力学に造詣が深いという描写はスナイダーカットを中心に多くありましたが、本作では微細な振動で壁を通り抜けるだけでなく、映画全体のメタ構造でこのような物理ネタをかましてくるとは?(笑)

私はあらかじめこの量子力学的な挙動(曖昧さ;いい加減さ)に心構えして劇場入りしたので平気でしたが、ソリッドな古典物理学的な解決(スナイダーバースかハマダバースかはっきりしろ)を期待していた人達にはツライ経験になったでしょうね。

🔴無意味なサプライズが多すぎる

本作について強く気になったのはリークされてるサプライズ要素がどれも「どうでもいいオマケ要素」ばかりだったことです。

MCUがフェイズ2の作品群ですっかり定着させた感のあるサプライズ演出ですが、MCUのサプライズが良かったのは物語や次回作に繋がる内容だったからです。次回予告を本編やポストクレジットのゲスト出演で描いてるから意味があるわけで。

そうでなければサプライズはただの余計な逸話に過ぎません。ただでさえ長尺化の傾向あるヒーロー映画では積極的に控えていただきたい要素だったりします。

その瞬間は楽しいんですけどね。

でも、その瞬間だけじゃん。

すごく悪意のある受け取り方をするなら、サフラン&ガンからの決意表明だとも受け取れますよね。「過去のキャストを全部出してマルチバースごとぶつけて全て破壊しちゃうんだから。もうDCUに過去のあの人を出せなんて言わせないぞ!」今作でサプライズとして過去作品を出し切っておけば、新スタートするDCUでは過去のレジェンドを出さない口実にできそうな気もします。

🟡落雷の設定がムチャすぎる

ヤングバリーが落雷に打たれて能力を得る流れは良かったです。

でも交換条件でシニアバリーが能力を失うのは全く理解できません。(笑)

驚くべきは、そこから更にもう一度薬品をぶちまけて雷に打たれて能力を取り戻したことです。いよいよ意味が分かりません。分量とかどうやって計算したんだよ。そんなだからアメリカはBBQやハンバーガーのような大雑把な料理しか出来なくて、日本料理の繊細な味に一生勝てないんだよ。

大体そんなことができるなら世界中の軍隊で採用して「超速の戦士」を大量生産する可能性さえありそうですね。ユニバーサルソルジャーみたいな。

いやー、よかった点として書いたようにこれがレゴバットマンなら全然アリな脚本なので、コミックブックでもありそうだし、物語を進める上で必要なのは解るのですが。

なんか「ザックのようなビジュアル」を撮りたかったムスキエティの願望を実現しただけのような気さえします。(笑)

🔴カーラはなぜ一度帰ったのか

一度の落雷でシニアバリーは能力復活できず、バリーは再試行を要求するも回路がショートして不可能になります。その時バリーは、カーラに抱き抱えられて雲の中まで上昇して、そこで雷に直撃して能力を取り戻します。

ちょっと待って。

カーラ、なぜ君がここに居るんや?

君はついさっき、ウェイン邸の屋上でしっかり日光浴してパワー全開になり、地球人など知るかと啖呵を切ってゾッド将軍と米軍が対峙する砂漠まで行ったじゃない。なんならそこでゾッド将軍と会話してカル=エルの秘密を聞いてたじゃん。

そこで「DNAはお前の中だ」と言われるのも、カル=エルの両親もカーラの両親もどんなレベルのうっかりさんなんだよと気になりますが、まあ今は良しとしましょう。

そこから、なにしれっとウェイン邸まで帰ってるの???

一人じゃ戦えないから戻ってきたという説明ありましたっけ?

もう米軍に犠牲者が大量に出る死闘(昼)が始まってるのに、カーラはゴッサムシティまで帰ってきて、シニアバリーの能力開発(夜)に付き合って、ヤングバリーがバットスーツをカスタマイズするのを待って、それから砂漠(昼)に帰ってきたの?

いくらなんでも、のんびりしすぎじゃない?(苦笑)

こういう昼と夜がコロコロ変わる演出は、同じく脚本がめちゃくちゃにされたデヴィッド・エアー監督の『スーサイド・スクワッド』でも起きた現象でした。あれも時間経過が意味不明すぎて気持ちが乗りませんでした。

🟡キートンの登場で、母の名をさけぶ

Twitterでも「アンパンマン」と聞こえると話題になりましたが…

私が気にしたのはそこではなくて、長髪で髭面のブルース(キートン)が初登場するシーンです。

この場面は2人のバリーがウェイン邸のキッチンに忍び込んだところで、ブルースから問答無用にカンフーで襲われる場面です。

まずブルースに言いたいのは、そんな手荒く対処するなら、最初にゲートを開けて侵入してきた時点でもっと紳士的に対応しろよ、というのが一点。なんでキッチンで食事の支度をしながらのんびり待ってて、部屋に入って来たら慌てて掃除道具に隠れて奇襲をかけるんだよ。(笑)

ブルースがモップを棍棒のように振り回すとシニアバリー(能力なし)は全部まともに食らって悶絶します。一方でヤングバリーは全てスピードフォースを使って避けていきます。途中でブルースが投げるフォークを『ZSJL』での手裏剣と全く同じ動きで避けるショットもありました。

次にバリーの問題行動です。なんと襲われた直後に「マーサ!」と叫びます。これは『BvS』でブルースとクラークが和解するくだりを弄ってるのがファンからすれば直ぐ解る案件です。たぶんブルースやクラークが笑い話にしてあの時の決闘のことを話してたからバリーも知っていたのかな、などと想像して楽める要素です。

しかし実はこの時点でバリーとヤングバリー(と観客)はこの長髪で髭面の男がブルースだとは認知してないのです。

映画公開までキートンのビジュアルは、あくまでバートン版『バットマン』と同じ髪型で白髪になっただけでした。バリーも想定してたのはベン・アフレックの姿だったはずです。そこにとてもブルースには見えない謎の長髪白髪男(キートンとアフレックのどちらにも似てない)、もしかしたらウェイン邸に忍び込んだ泥棒かもしれない男に急に襲われている場面なのです。そこで謎の男に向かって「マーサ!」と叫ぶ意味ってあるんですかね?(苦笑)

だからもうこれは質の悪いオマージュでありパロディなんですよねー。

🟡公開前の宣伝文句で煽りすぎ

公開前には「ヒーロー映画史上最高傑作」という強気なキャッチコピーが話題になった本作。しかし結果的にはTwitter民を中心に、今後ずっと弄られそうなネタをDCフィルムズとワーナーは提供することになってしまいました。

これはただの邪推なんですが…今回『ザ・フラッシュ』の試写会当選者はすごく多かったような気がしていて。なんか公開直後に劇場に来てくれる熱心なファンにSNSで低評価を書かれないための作戦のような気がしています。招待されたら、嘘でも褒めるとまでは行かずとも、少なくとも悪口は書けない気分にはなりますからね。

ただ試写会に行かれた方の感想ツイートを読むと、ラストシーンとエンドクレジットとポストクレジットが丸々カットされていたようで、アフレックとモモアの古参ファンの逆鱗に触れてしまう要素は削られていたのかなあとは思いますね。

さっきフラッシュ映画の感想スペースに入ったら、どうも試写会で見たバージョンにはなかったシーンがよりにもよってオチに追加されていることを知りました。確かに試写会では完全版ではないと聞きましたが、オチのシーンが変わるとは…とりあえず明日見に行きます。まじかよ。マジかよ。びっくりだよ。
フラッシュが公開した。試写会で見て私は高評価な感想をしましたが、それをゼロどころかマイナスにするシーンもあり、ただ試写会で上映されたものはエンドロールもおまけ映像もない未完成なものだったので、否定はしませんでした。ただ、ベンアフのクレジットがないらしく、もしそうだった場合は絶許。
もうやだ、ほんとにベンアフのクレジットがフラッシュのエンドロールにないの?予告で喋っているように、そんな1秒2秒のカメオじゃないんだよ?まじであり得ないんだけど…。そんな扱いされるならレイくん、降板して正解だよ(;▽;)
オチは本編の最後の最後です。車から降りてきた人、試写会では足元しか見えなくてバリーのセリフで終わってたんですよ。 まさかそんな肝心なところがないまま試写会上映があるとは夢にも思いませんでした。 ちなみにエンドロールあとも試写会ではなかったです。エンドロール自体がなかったので。

午後11:55 · 2023年6月16日

🟡お腹はもう減らないのか?

映画の最序盤で、どういう仕組みなのか解りませんがフラッシュのスーツにはロックマンみたいな体力ゲージがあって、ご飯を食べるとリアルタイムに反映されます。そうだよね、お腹減るよね、くらいに楽しんで見ていたのですが…

映画のクライマックスで、ヤングバリーは白髪になって体に付着したゴミが積もり積もるまで推定何十年もスピードフォースを走り続けます。

いつご飯食べたの???(笑)

🟡スピードフォースのデザイン

私が本作への酷評レビューで一つだけ共感できないのが「CGが酷かった」という意見です。どこのことを言ってるのでしょうか?ちゃんとお金かかって高クオリティでしたよ?

おそらく殆どの人達が批判しているのはスピードフォースで見える景色でしょう。でもそこは現実世界じゃないですから、わざと歪めたり、蝋人形みたいな不気味なテクスチャにしたりして、普通じゃない雰囲気を演出していたじゃないですか。そこを攻撃するのは違うと思いますね。

なんというか「デザインが好みじゃない」ことと「作りあがりの品質が低い」ことを混同したコメントが多いような気は少しします。本作はVFXの作業工数はかかってそうな気がしたので。ちゃんとデザインが嫌いだと言ってあげてほしいです。でなければ監督の指示通りに作業したスタッフの皆さんが気の毒で。

直射日光でヒーローのコスチュームがダサく見えるのはCGのせいじゃなくて、そもそもコスチュームデザインの限界でしょう。『アベンジャーズ1』だってキャプテンアメリカの派手スーツをネタにしていたのを皆さん忘れましたか?(まあ本作でもバットフレックの網タイツみたいなスーツだけはマジで死ぬほどダサイと思いましたが、他はノーコメントでw)

とはいえ今作のスピードフォースは歪め方が中途半端で、狙ってやっているのが判りにくかったのは否めませんね。

特にクライマックスでマルチバース同士が接近して衝突するシーンは、もっとメタ的なデザインでも良かったと思うなあ。一瞬だけ声が聞こえるアダム・ウエストが走っている姿が少しだけ映る瞬間は、球体の表面に走るフィルム見たいなデザインになってて良いと思いました。そういうアートに振り切った演出が欲しかったですね。同時期に『アクロス・ザ・スパイダーバース』が上映中なだけに、余計に本作の中途半端なリアル路線が感じられやすくなっていました。

🟡謎のLGBT匂わせ

エズラ・ミラー本人がクィアなのは有名ですが、バリー・アレンもそうでしたっけ?

今作では、幼少期のバリーもどこか中性的でした。最近日本でスマッシュヒットをかましているあの作品の少年とも雰囲気が似ていますよね。(笑)

そして、何よりも変だったのが、バリーが母に会う前に道端の老夫婦から服を強奪する場面がありまして(てゆうかヒーローがそんなことしていいのかよ;でもレゴだったら許せるw)、そこで何故かバリーはおばあさんのカーディガンを奪うんですよね。

あれ、何なの???

別に良いけど、なんか変だぞ。(困惑)

▼まとめ:

とまあ、いろいろ不満点も書きましたけど。

最初に言ったとおりに、私は実写版レゴバットマンとして気楽に観覧していたので、全体的には楽しめました。(今更こんなこと書いても信用してもらえないかなw)

特に、最近のマンネリ傾向のあるヒーロー映画の中においては、主人公一人(二人?)のパーソナルとドラマにとことんフォーカスした本作は、強く印象に残る良作として私の胸に刻まれたと思います。

了。

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