【デデデデ前章・後章】あらすじを三幕構成で読み解く
デッドデッド
デーモンズ
デデデデ
デストラクション
前章一幕
一場:状況説明(謎の円盤襲来)
8.31の始まり
二場:目的の設定(日常生活)
キホが小比類巻に告白して交際開始。
門出の母は8.31以降おかしくなってる。
凰蘭は墜落した小型船を野次馬する。
門出は渡良瀬に恋人が居ると知る。
凰蘭の兄は門出に好意を抱いている。
前章二幕
三場:一番低い障害(小比類巻の闇落ち)
政府は兵器を開発して小型船を撃墜する。
小比類巻がネットに毒されてキホと別れる。
大葉はタケコプターを使って雪だるまを作る。
門出はいつもの5人でクリスマスを過ごす。
四場:二番目に低い障害(吉祥寺に円盤が落ちる)
政府が撃墜した中型船が起こした事故でキホが命を死亡する。
双葉は石川県からの上京を決意する。
門出はいつもの4人で高校卒業を祝う。
五場:状況の再整備(過去の日常)
凰蘭が大葉と会って過去(?)を回想する。
門出と凰蘭が小学生の時にUFOを目撃する。
門出と凰蘭が侵略者を自宅に連れて帰る。
六場:一番高い障害(門出の闇落ち)
門出の善意が暴走して連続殺人を起こす。
門出の善意が暴走して世田谷区車両脱線事故を起こす。
門出が精神を病んで自殺する。
凰蘭の意識が現代に戻るが、大葉は去った後だった。
大葉「あの子は、たぶんシフター」
前章三幕
七場:真のクライマックス(羽田沖で円盤が落ちる)
双葉は飛行機内でマコトと出会い意気投合する。
政府の新型兵器が中型船を撃墜する。
双葉は無数の侵略者が落ちていくのを目撃する。
八場:すべての結末(人類滅亡まで半年)
門出はいつもの4人で街頭ビジョンでその事故を目撃する。
小比類巻は武装して何処かに向かう。
それが8.32の始まりでした。
人類終了まであと六ヶ月。でででデストラークショーーーン!
前章は長い回想シーンがあるのがトリッキーだとはいえ、構造としてはハリウッドの教科書通りの王道な構成で見やすかったです。
しかし後章では、少し型を崩していて、さらに物語が門出・凰蘭・双葉・小比類巻・政府の5軸で並行して語られるので、三幕八場では説明しにくい構成でした。言い方を変えれば、物語が精確に記憶されにくい構成でした。
私らしくザック・スナイダー監督作品で例えるならば、前章はジャスティスリーグスナイダーカット風で、後章はバットマンVSスーパーマン風でした。(昔からの読者にしか通じなさそうな例えですみません)
後章一幕(状況説明)
小比類巻は侵略者狩りをしていた。キホの写真をスマホ待受にして。
門出はいつもの4人で駿米大学に入学する。サークルは凰蘭のせいでオカルト研究会に入部する。双葉と友人になる。双葉の誘いを受けてSHIP(侵略者友好派)のデモに参加する。双葉の紹介でマコトと友人になる。
政府は新国立競技場として『箱舟』を建設中らしい。
後章二幕(前半:大学生の恋)
門出は渡良瀬とデートする。初めてのことなので上手くできない。
凰蘭は先輩の家で大葉と出会う。凰蘭は大葉を匿う大義名分で門出の家に住み込む。
大葉は過去に侵略者が移植された存在だった。
大学で侵略者が見つかり、野次馬の目前で自衛隊に射殺される。
政府は侵略者のテクノロジーとして新元素を発見したと公表する。
門出は凰蘭と大葉の関係が深くなりつつあるのを察する。
大葉は母艦から出る煙が異常事態だと見抜く。
政府は侵略者を民間人が殺せる法案を成立させる。
大葉が凰蘭の記憶を覗いて過去の経緯を知る。大葉の凰蘭への認識が変わり始める。ちょうど訪問してきた凰蘭の兄に、門出は大葉は凰蘭の彼氏だと咄嗟の嘘をつく。
大葉が凰蘭に人類も侵略者ももうすぐみんな死ぬと教えるが、門出も聞いてしまう。
門出は渡良瀬と2回目のデートで、自暴自棄で大胆になる。
凰蘭は大葉に優しすぎると言われて恋心を抱く。
門出は渡良瀬に正式に振られる。が、そのまま一度だけセックスはする。
侵略者が国会に乱入する騒ぎを起こす。
小比類巻が侵略者を襲い、大葉がそれを救う。大葉は透明マントを小比類巻に奪われる。侵略者は母艦から逃げてきた技術者で、大葉にタイムリミットまで1ヶ月だと告げる。
大葉は凰蘭の兄の優しさに触れる。
凰蘭は大葉と勢いでセックスしそうになる。大葉は守ると決意する。
双葉はSHIPの指導者からテロ要員にスカウトされる。
政府は新国立競技場の地下で新元素を使った箱舟を完成させる。
後章二幕(後半:合宿にて)
門出たちは合宿に行く。現地のギャルと海で遊びながら過去の宇宙人目撃証言を聞く。大葉はマコトに正体を明かす。
マコトの計らいで大葉と凰蘭は散歩する。大葉は自身のアイデンティティに悩む。凰蘭は大葉にキスするが大葉は理解できない。大葉は凰蘭に過去に戻って侵略者が来ないようにしたいか聞く。凰蘭は侵略者が来ないようにはしないと言う。凰蘭は大葉に好きだと言う。大葉も凰蘭に好きだと言う。凰蘭は好きならば急に消えないでくれと大葉に頼む。門出は二人を見つけて冷やかす。
SES社がプランクトンAIが完成する。
双葉は凰蘭に銃を預けて東京に戻る。凰蘭が翌日の明け方に民宿を抜け出す。大葉は凰蘭が記憶を取り戻したと思って後をつけて、道中にマコトに凰蘭と門出の過去を見せてやる。
凰蘭は小学校5年生の時に門出と塾の夏期講習合宿で侵略者の調査員を発見して、それが原因で門出は精神を病んで自殺した。その一連の経緯を調査員が本国に報告することで侵略者は地球進出を諦めた。しかし凰蘭は門出を救うために、別の時間軸に意識を上書きして門出を夏期講習に行かせなかった。しかしこのために4年後に侵略者が来て8.31が起きた。それが今登場人物たちが生きている世界。合宿で伊豆に来たことで凰蘭は記憶を取り戻したのかもしれない。
大葉とマコトは海岸で遊んでいた凰蘭を発見して安堵する。凰蘭のどこにも行かない宣言を聞いて、大葉は凰蘭にキスする。
政府は人工衛星のレーザーを使用した侵略者コロニーへの駆除攻撃の開始を決定する。小比類巻がプランクトンAIの停止権限を持つ須丸を拉致する。
大葉はさらに凰蘭の記憶を辿って、侵略者の調査員が念のために残した言葉から、母艦のシステムを停止するパスワード『トモダチ』を得る。
侵略者は防護服の爆散技術を使って人類へのテロ攻撃を決定する。しかしそこに政府のレーザー攻撃が始まる。侵略者コロニーは壊滅して、事後に侵入した小比類巻は侵略者の道具と情報を手に入れる。
合宿先では東京へ帰るべきか検討する。通信障害のせいで情報が入らない。唯一の生きている通信手段であるテレビ放送では、真実を話そうとした総理が政府から追放される。以降はAI作成のフェイク動画で国民にテレビで嘘を流し続ける。政府は箱舟への搭乗を開始する。
政府が新国立競技場の完成説明会に参加する。隣で箱舟が浮く。ライター三浦が小比類巻の組織に拉致される。
大葉が黙って東京に戻ろうとする。凰蘭は勘づいて止めようとするが、大葉は力ずくで脱走し、残された凰蘭は号泣するしかできない。
後章三幕(人類終了の始まり)
小比類巻のメッセンジャーになった三浦はテレビで、日本政府がすでに逃亡したことと、本日中にも母艦は爆発するので、東京都民は避難しろと宣言する。絶望した三浦はそのままピストルで自殺する。東京は大混乱して、下り方面は道路も鉄道も大渋滞になる。
館山方面にあった浮遊物体の上空にワームホールが開いて、何か指の形をしたものが現れて、ピンク色の光線が四方に広がる。
政府はAI総理のテレビ放送で新国立競技場の浮遊は開発会社のミスで現在は問題解消に向かっていると虚偽を放送する。凰蘭の兄は異常事態を察知するも、凰蘭の父は仕事があるから避難してる場合ではないとまともに取り合わない。
門出と凰蘭たちは民宿を出て東京に向かう。マコトは来宮駅で別れて鉄道で石川に向かう。
大葉はタケコプターで母艦に近づくか、地上から歩仁で照射されて負傷する。さらに小比類巻も現れて大葉を妨害するが、侵略者の一人が自爆攻撃を仕掛けて小比類巻を追い払うことに成功する。
凰蘭の兄は車で東京脱出を図るが渋滞で一向に進まない。兄は凰蘭の携帯電話の留守番サービスにメッセージを残す。
大葉はパスワードを使って母艦の停止プロセスを起動するが、時すでに遅く、母艦の自爆シーケンスが始まる。
アイは高速道路のサービスエリアから自宅に電話を掛けるが、直後に狂四郎がピンクの泡に触れて腕が吹き飛ぶ。世界中の都市で同様の被害が起き始める。
門出と凰蘭は呑気に土産を選ぶ。他愛のない話をしながら凰蘭はもし自分が世界を滅ぼしたらどう思うか聞いて、門出はずっと味方になってやると答える。凰蘭は門出にキスする。その直後に母艦が爆発して、東京方面に巨大な緑色の火柱が立つ。
挿入歌:でんぱ組.inc『あした地球がこなごなになっても』
門出「東京方面に光を見ました」
凰蘭「悲しみと恐れを感じる一方で、どこか安堵する気持ちもありました」
小比類巻は爆発が早まったことでピンクの泡が蒸発したことに気づく。大葉の行動が人類終了を防いだのである。大葉は母艦からの逃亡中に行方不明になる。
16日後。伊豆の民宿まで戻って避難生活をしていた門出たちオカルト研究会の面々だったが、ここも政府から危険地域に指定されたので移動を余儀なくされる。砂浜で遊んでいた凰蘭と門出は、空から降ってきた大葉と再開する。
凰蘭「大葉、遅いぞ」
大葉「ただいま」
FIN
▼解説:
●詰め込みすぎ?
なるべくシンプルに短くまとめたかったのですが、かなり長くなってしまいました。そのくらい削るのが難しい重要な事項が多いということです。…いや、まだ2回観ただけだから、もう少し時間が経てば自分の中で消化できてシンプルにまとめられるかしら。(笑)
ただ、後章はちょっとお話が複雑すぎますねー。詰め込みすぎです。(苦笑)
これは賛否両論になっても仕方ないでしょう。ここまで盛り沢山だと、ディティールは忘却されて、というか正確には観客が考察を放棄して、「なんだいつものセカイ系か」と乱暴すぎる理解に着地してしまうリスクも高まります。
●後章は傑作ではない?
観た人達を全力でざわつかせた前章に比べて、後章の評価は賛否混合のような煮え切らないものが多いです。
各人物のエピソードを細切れに出すばかりで、前章のようなケレン味のあるメカ描写や侵略者をめぐるホラー要素も減ってしまったので、後章の方が評価が低くなってしまうのは避けられないでしょう。
でも制作チームはそうなることは覚悟の上で、前章にクライマックスをめいいっぱい詰め込んだようにも思えます。前章・後章二つ合わせて一つの映画と考えれば、変わらず傑作だと言い切れると思います。
●後章で気に入ったオマージュ
人工衛星から飛んでくるビームはAKIRAですね。(笑)
左腕だけ撃たれて変色する大葉もAKIRAの鉄雄でした。(笑)
母艦爆発のシーンでポップスが流れるのは新劇エヴァですよね。
大葉に逃げられて号泣する凰蘭が、前章の門出に絶縁されて号泣する凰蘭と全く同じで、素晴らしい構成力だと思いました。過去パートを前章に持ってきたのが大きく活きた瞬間でした。
●原作との比較
私は原作12巻の漫画のうち4巻まで既読です。アマゾンで期間限定無料でしたので。ただ結末が漫画と映画で異なるらしいので、面白い漫画ですし最後まで読んでみようかと思います。本格的な比較を語れるのはその後ですね。
●残った疑問
いくつか未解決な問題があります。原作未読の私としては…
・8.31で失踪した門出の父の行方
・浮遊した箱舟の行方
正直、この2つは気になります。ミステリーの提示だけされて、そのまま回収せずに終わってしまった感じです。
ただし未解決のまま終わるのも、世の中の全てが見えるとは限らない〜興味ないことは知らないままで済ませる〜というリアルさを表している、と好意的に解釈することも可能なので今作では目を瞑りましょう、という感じです。
・結局あの指は何だったのか
・小比類巻が見たのは誰の記憶だったのか
・つまり他にも世界線があるということなのか
・凰蘭は門出が自殺した世界線ではどう暮らしているのか
などなど、映画の中であまり問題にされないことで気になることは山ほどありますね。
これについては門出の部屋で寝てる時の大葉と凰蘭の会話で、凰蘭のセリフが観客の心情を代弁しているのではないかと、ややメタ的に解釈することもできます。
総じてもっと知りたくなる映画でした。これは原作を買いたくなる!私はまんまと小学館と浅野いにおの術中にハマったのかもしれません。(笑)
(了)
最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!