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#エッセイ

買うしかなかったアサヒカメラ

買うしかなかったアサヒカメラ

アサヒカメラが休刊した。

ご存知の方は多いと思うが、90年以上も発行されてきた老舗カメラ雑誌で、誰が言ったか「写真界の芥川賞」とも呼ばれることもある木村伊兵衛写真賞を発表する媒体でもあった。

写真に興味があった私にとっても、定番の参考書のようなものだった。本誌の月例コンテストに応募して入賞したこともあったが、その結果が1位でなかったことに失望し、「見る目ないな、オッサン雑誌め」などといきがって

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本屋とりわけ古本屋、それはメモ帳でも

本屋とりわけ古本屋、それはメモ帳でも

 本屋に行くことが好きだ。いや、本の周辺に触れていることが好きなだけかもしれない。いやいや、活字に関することなら何でもいいのかもしれない。いやいやいや、紙が好きなだけかもしれない。本屋、古本屋、なんなら、コンビニの本・雑誌コーナーでもいい。しまいには文房具店まで。長い時間物色して買ったものは、読みきらないことのほうが多い。

 だから、やっぱり、読書好きというわけではないのだと思うし、たとえ読みき

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父に胸ぐらをつかまれた日

父に胸ぐらをつかまれた日

 あまりにも気乗りしない、修学旅行の出発日だった。

 一九九七年十月。嫌味にも快晴のその朝。いつもとは少し遅い時間の路線バスで、なんとなくの特別感が漂っていた。
 北海道とはいえ、さすがにまだ雪には至っていなかったが、外気はすでに冬のような独特の凍てついた色を帯びはじめていた。いっそ早く冬が来て、凍鶴のようになれれば、様々な言い訳ができるだろうに。などと考えながら。
 いつものように、友人と他の

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