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絶望の時代に『ベルリン・天使の詩』をみる
『都会のアリス』や『まわり道』『さすらい』などで、すでに僕たち若きシネアストの憧れの的だったヴェンダースは、ハリウッド進出第1作である『ハメット』ですったもんだがあり、興行的には失敗作を生み出してしまう。その後、『ことの次第』で、おそらくその時の心情を詰めんで映画作りがうまくいかないと状況をそのまま映画にした。
そして、我らがヴェンダースは『パリ、テキサス』で大復活を遂げる。この作品で、ヴェンダ
『ミッシング』をみて思ったこと
レビューとかではなく、この映画を見てぼんやりと思ったことだけを書く。
人は人をすぐに信じるし、すぐに疑うし、すぐに裏切る。結局、自分の中にある言葉と経験だけで判断して、誰もが平気で他人を陥れるけれど、自分だけが安全なら、とりあえずは笑っていられる。自己肯定感のない人たちが、それより酷い人間を探しあぐねて、まるで正義のヒーローのように振る舞い、また誰かを陥れていく。いくら真実を言葉にしたって薄ら笑
映画『関心領域』をみて
第二次大戦中、アウシュビッツ収容所の壁を隔てた隣で、裕福に暮らしていたナチスドイツの高官家族の暮らしぶりを描いた作品。
関心空間というタイトルは、塀の向こうに関心を持たず、自分たちの暮らしだけに関心を持っている人々といったところだろうか。
でも、収容所の塀一枚隔てた暮らしでそんなことはあり得ない。日々聞こえてくる銃声や叫び声。虐殺された死体を焼く煙が窓の向こうに立ち昇る。そんな一つ一つの情報が
『ニュー・シネマ・パラダイス』を斜に構えてみてしまう理由
なんか、すごいタイトルを付けて書いてみたものの、なんかちょいとズレた気がしたので、書き直す気満々なのだけれど、またちょっと考える。
小津のDNAが日本に育たない理由
2023年の年末から2024年の1月にかけて、映画好きとしてはとても幸せな時間を過ごした。ヴェンダースの新作『PERFECT DAYS』が公開され、アキ・カウリスマキが引退を撤回して『枯れ葉』を公開してくれた。その上、『枯れ葉』なかにはジム・ジャームッシュの『デッド・ドント・ダイ』を主人公たちが観ているという場面まであった。なんだか嬉しくなってしまったのだけれど、思い返せばヴェンダースもカウリスマ
もっとみる『コット、はじまりの夏』でテーブルの上に置かれたもの
1980年代、アイルランドの田舎町。9歳のコットは父母と3人の姉と一緒にして暮らしている。稼業は酪農らしいがうまく行っているようには見えない。特に父親は子供たちに興味を示さず、ギャンブルと酒のために出掛けてばかりいる。
そんな中、母親はコットの弟か妹を身ごもる。出産を控えた母親は、末娘のコットを従兄弟夫婦の家に預けることを決める。
さりげなく描かれるコットの実家での暮らしは、育児放棄の一歩手前
『PERFECT DAYS』に描かれていないもの
2023年の終わりに、映画『PERFECT DAYS』を観てからもう数ヶ月が過ぎた。これまでに映画館に足を運んで5回以上観た。いくら映画が好きでもこんなに短期間に複数回映画を観たのは初めてかもしれない。
なぜ、こんなに僕は繰り返し『PERFECT DAYS』を観たのか、観ることができたのか。それは何回観てもなにかを発見することができる余白がこの映画にあったからだと思う。
この映画にはあまり詳し