マガジンのカバー画像

けがれた者達の歌 春雷

409
春の季節に書いた 春の詩と物語の在り処
運営しているクリエイター

#詩

妖と苔生す大樹

妖と苔生す大樹

森の奥深くに行くと
緑の匂いが強くなる

足元は
腐葉土の柔らかな感触と
落ち葉の腐った匂い

眼の前には
大きな樹があって
根や幹が
苔に覆われている

枝先まで巻き付いた
葉の付いた蔓

雨が芽吹かせた
苔の柔らかい新芽

森に浮揚する湿度が
私の髪を湿らせる

花の顔(はなのかんばせ)

花の顔(はなのかんばせ)

互いの持つ
花の花弁を混ぜ混んだら

強い花の
薫りが優るのか

苦い毒が
際立つのか

雨の日

雨の日

雨が降るからって
憂う気になれなくて

歌って
気持ちを上げ

お気に入りの傘を差して
歩いたんだ

傘に当たる
雨音のリズムに
心地よく
なっていても

それでも
気掛かりがあって…

ただ
ひとり想い知るんだ

雨風

雨風

我慢なんて
性に合わない

身の内に
溜め込んだものを
僕は何時か
吐き出してしまう

既に
言葉と共に
僕の風が漏れているんだ

私から物書き達への永久お題

私から物書き達への永久お題

私の書く物に
不快に思う者達が
居るだろう?

だったら
其の不快感を
吹き飛ばせるだけの物を

書いて
魅せれば良い

表現力を
魅せ付けてみなよ

強風

強風

木々が激しく揺れ

枝が折れ

引き摺られる様に崖下へ

緑の葉は千切れ

頭上高くに

舞い上がるんだ

激しく唸り

聞こえて来るのは

風の咆吼だ

悪食

悪食

言葉を

指先で摘んで取っては

柔すぎて

千切れたりする

言葉を舌で舐め取れば

甘味が有る言葉

旨味の有る言葉

苦味が有る言葉

綺麗なだけでは
美味しくは無いな と

思うのだ

鬼の言葉

鬼の言葉

影に潜む
鬼達が言い出す
あからさまに
聞こえる様に

影に潜む
鬼達が嗤い出す
指差して
可笑しそうに

騒々しく
騒めく中に混じる

針で刺す様な言葉

そんなのは
大した痛みでは無い

だけど煩わしくて

鬼達の
針を持つ手ごと切り落とす

そんな私も大鉈を持った

鬼なんだ

鬼

直ぐ近くにも
あらゆる所にも
世界の果ての果てまで
鬼が居て

人間は
鬼を見抜けず

容易に
鬼に揶揄されるだけ

容易に
鬼に圧せられるだけ

人魂

人魂

夜が深くなる程に
闇が深くなる程に

ポツリ ポツリと灯る

生きていた頃の
姿を留める事が出来ず

身体を亡くした

命の灯火

呟く様な声の会話をし

囁く様な唄を歌う

儚い火が

夜闇の中で

消えそうに
揺らめいている

影踏み

影踏み

影と闇を

行き来し

影踏みして歩く

踏まれた者は

言葉に棘を

眼に影を

耳に幻聴を

纏うんだ

蜘蛛

蜘蛛

遠くまで見渡せる

眺めの良い景色

心地よい風が吹く中に

視えぬ糸を飛ばす

絡め取るのは

華か 獲物か

酔芙蓉の華

酔芙蓉の華

眼に視える

醜い心を排除して

其れで

綺麗になるとでも言うの

それ本当に綺麗?

よく見たら

つまらない物しか

残ってないと思わない?

それに

醜さも醜悪さも

持たない人なんて

見た事が無い

そんな神様みたいな存在に

人がなれると

誰も考えていないもの

雨の夜の黒い水溜り

雨の夜の黒い水溜り

📌雨の夜の黒い水溜り

地上から
水を蹴りながら歩く
足音が聞こえる

段々と
此方に近付いて来てるみたいだ

だから
僕は口を開けて待つ

そうすると
足が口に入って
千切って捕れるんだ

今夜は
3本の人の足を手に入れたよ

📌錆びたキッチンカー

森の側近く
雨降りの翌日に現れる

錆びたキッチンカー

香ばしい匂いに
誘われるままに
やって来た物に

「空腹なんだ何でもいいからくれ」

もっとみる