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誰がムーブメントを起こすのか #2019年のベストnote 5選【表】

noteのアクティブユーザーが飛躍的に増加した2019年。書き手のエネルギーを集める「うねり」が、少しづつ《公式》の手を離れ、ユーザーたちの中から湧き上がってきた。

誰もがムーブメントを起こせるわけではない。たくさんの書き手を巻き込み、継続する「うねり」が生まれたのは、なぜなのか。

この記事では、僕的 #2019年のベストnote 5本を紹介しながら、その理由を考察してみたい。

(1) みんな、出ておいでよ。

まつしまようこさんが最初にオオゼキへの偏愛を叫んだ4月10日は、「偏愛を叫ぶ同志」が声を上げ、ゆるやかな集合体を形成しだす契機のひとつだった。

「#スーパーマーケットまとめ」マガジンを軸に、日本全国ならず海外からも「スーパーのことなら私にも言わせろ」という人が、noteで存在感を出し始める。

地元自慢が始まり、勢力間のバトルが始まる。いまだに「オオゼキに行ってみた」noteが書かれる。オオゼキを舞台にした小説書かれる。その経過の一部は、まつしまさん自身による記事『オオゼキnoteの奇跡と軌跡〜明日、今日よりももっとオオゼキが好きになる〜』に詳しいが、この8/14段階でもまだ、うねりは始まったばかりだった。

その流れは「熱いスーパーマーケット議論を勝手に繰り広げる」リアルイベントに派生し、そのリアルイベントから《クレイジータンク》なる謎の偏愛活動集団(?)が生まれていく。巻き込まれる人の数、主体的に動き出す人の数は、どんどん増えていく。


スーパーという切り口は、半径数百メートルの「日常」の中に、書くテーマがいくらでもある事実をくっきりと浮かび上がらせた。これに気づいたたくさんの書き手が、noteに続々と姿を現す。まつしまようこさんは、その人々を丁寧に拾い、煽り、巻き込みながら、うねりを大きくしていった。

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(2) リミッターを、解除する。

マリナ油森さんが旗を振る『#呑みながら書きました』は、特定の期間に文字通り一斉に「呑みながら書く」という企画だ。先日第2回が開催され、参加作品は複数のメンバーがピックするマガジンにまとめられている。

この企画はとにかく最初の投げ込み方のインパクト(上に貼った記事のぶっ飛び具合)がすごかった。完全に酔っぱらいの裸踊りだ。誤字、冗長、意味不明。それでもいい/それでこそ、というスタンスが、このnoteで明快に提示される。

「お酒飲んだ=酔ってる」という前提を共有するだけで、普段と違うことを書ける……というのは、なかなか面白い現象だ。

第1回の作例を見ると、誤字/とめどない話/恋バナ/etc.。さまざまなスタイルで参加している。酔わずにノンアルで参加している人もいる。「酔い方」は人それぞれ、酔って何をするかも人それぞれだ。その多様性こそが、たくさんの参加者を呼び込む。よっぽど他人に迷惑をかけない限り、note上の酔い語りに面倒なトラブルは起きない。

リミッターを解除して書き、公開ボタンを押す体験は、酔いが覚めてもクセになる。#呑み書きは、呑んだ日・呑んで書いた記事だけでなく、書き手自身や書き手同士の間にあるも、少しずつ溶かしていくようだ。

マリナ油森さんは、強くて、寛容で、やわらかい人だ。彼女のリードによって、書き手たちは新たな「書く楽しさ」を見出していった。

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(3) 全部、受け止める覚悟で。


『教養のエチュード賞』は、一個人が発信する、たった一ヶ月間のコンテスト企画でありながら、第1回の有効応募数が155作品という驚くべき存在感を示した。第1回の受賞5作品入選20作品の紹介を経て、12月にはすぐに「第2回」の募集が始まっている(現在も募集期間内だ)。

嶋津さんは第1回の結果発表時点で、『「第二回を開催すべきだ」という確信を抱いていた』という。僕はその時、正直2回目は難しいと思っていた。でもそれは完全に杞憂どころか、逆にどんどん進化している。投げ銭方式の賞金金額はどんどん上がっていき、副賞に千原徹也さん・ワタナベアニさんの賞も加わった

ハッシュタグや応募作品マガジンを追っている僕が見る限り、第2回に応募している人の顔ぶれが、第1回とは大きく違うことに驚いている。第1回に出さなかった人、出せなかった人。第1回に触発されて、新たに認知した人。応募期間はまだまだあるから、経験者も新顔も、これからどんどん輪に加わってくるだろう。

『教養のエチュード賞を終えて』という嶋津さん本人の振り返り記事を読めば明白なように、嶋津さんは極端にストイックな「読み手」なのだけれど、その真摯さ・誠実さこそが、書き手にとってこの賞に応募する重要な動機になっている。第1回の感想マガジンをまとめてみたら、やはり「嶋津さんに読んでもらいたい」という思いが、たくさんの書き手を動かしていることが明白になった。

しかし今、教養のエチュード賞は、嶋津さん個人が最初に描いていた姿を大きく逸脱し、個人の手を離れて、変わっていっている。第2回がどんな結果になるのか、その先に何が待ち構えているのか、本当に楽しみだ。

来年は僕も、ひとつ個人賞を掲げてみたいと思っている。

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(4) ひと目、会うことから。

10月6日、第2回note酒場。300人定員の二部制。昨年12月に開催された第1回note酒場から、ぐんとパワーアップしての開催だ。このイベントについては、93本ものイベントレポートを確認している。僕も長いレポート記事を書いたが、ここでは中でも僕が一番好きな、いちとせしをりさんの濃厚な1万字を選びたい。


note酒場に参加して感じたのは、「一度顔を合わせたことがある」というのは、ユーザー同士のコミュニケーションに相当の影響があること。もちろん、noteのコメント欄やtwitterで会話したり、日常的にスキをつけ合うような関係の中で、一定の関係は生まれていく。ただやはり、リアルで会うことが「信頼関係」を大きく前に進める

いちとせしをりさんは、ちゃこさん&満島エリオさんの合同文芸誌『36.5度の夜』参加メンバーの一人でもある。こうした、note起点の制作活動が発展する動きは、noteというプラットフォームが目指す理想的な姿のひとつだろう。

巷では数多くのオフ会が開かれる。noteクリエイター同士のつながりが、noteを越えてどんどん広がっていくことも、今年は多く見られたと思う。

そう考える時、やはり第1回・第2回note酒場が、相当の規模で開催されたことには、かけがえのない価値があったと思う。鬼のようなキッチンやドリンクのオペレーション、膨大な仕込みも含め、関わった方々に心から敬意を表したい。

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(5) あなたが書くなら、私も。

応募総数4,137件もの大激戦となった、キリンビールとnoteのコラボレーション企画、「#あの夏に乾杯」受賞作の一つである『8分間のサマー・トレイン』(略称:サマトレ)を最後に紹介する。

サトウカエデさんはつい先日noteクリエイターファイル登場したが、そのなかでこんな言葉を語っている。

100日続けてみて、思いがけず得たものは、noteを書く「友だち」とのつながりでした。

noteを書くことは、案外「ひとり」の営みではない。

ひょんなことから僕がこの作品に関わったことも記事で言及されているけれど、他にも「お手本」のスイスイさん、同じく受賞した宿木雪樹さんなど、先行する書き手の存在が、サマトレには大きく影響している。同じように、以後サマトレやカエデさんの存在が影響を与えた作品/書き手も、少なくないはずだ。


同じキリンチームがポプラ社と共催したコンテスト『#夜更けのおつまみ』も先日結果発表があった。受賞した3人:奥村まほさん、マリナ油森さん、ぽこねんさんは、僕も日頃からtwitterでよく交流している面々だ。

noteと連携するtwitterのタイムラインが、「部室」のような空間になっている。時に励まし、時に慰め、時にふざけ合いながら切磋琢磨する仲間が、そこにいる。

交流しながら書き続ける仲間たちは総じて、日増しに文章が上手くなっていると思う。フィードバックがあるからだ。書き手がいて、読み手がいる。仲間が書くから、いい作品をつくるから、自分も挑戦したくなる。高みを目指したくなる。

『8分間のサマー・トレイン』は、上昇気流を生み出す「note仲間」の存在を象徴するような作品だと思う。

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【総括】誰がムーブメントを起こすのか

先日『好きって言うだけ』という記事を書いた(第2回「#呑みながら書きました」&第2回「#教養のエチュード賞」参加作品)。この記事では、とにかく「好き」を表明することがまず大事、という提言をした。

さらに「ムーブメント」を狙っていくなら、もうひとひねり、工夫と努力が必要なのかもしれない。

キーワードのひとつは、継続だ。

発信の継続。コミュニケーションの継続。続けることは、言うほど簡単ではない。note毎日更新だって簡単に止まってしまう。まして、何十本のnoteに目を通し続けたり、山のようなコメントを書いたり、ひとつひとつの反応を拾っていったりすることは並大抵の大変さではないだろう。イベントを開催し、終了まで責任をもつことも。うねりの中心には、相応の負担がかかる。

ただ、それを乗り越えたとき、行動する人だけが得られる価値を手にする。

ことし、僕の観測範囲だけでも、このnoteに書ききれなかった数多くの企画や、集まりや、ムーブメントが起きている。2020年は、その数がもっと増えるだろう。


続けること。続ける人を支えること。

そうして、より多くのnoteクリエイターが、うねりを起こし、うねりに巻き込まれながら、noteを楽しむ未来が待っていることを、僕は確信している。



(12/31追記:ウラ5選も公開しました!)


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