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入江正之(建築家 / DFIフォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授)

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入江正之(建築家 / DFIフォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授)

マガジン

  • #建築 記事まとめ

    • 570本

    建築系の記事を収集してまとめるマガジン。主にハッシュタグ #建築 のついた記事などをチェックしています。

  • 思想ノート

    入江正之の「思索ノート」を随時更新予定

  • 萩・空き家PJ.

    萩の人々が当然として見ている、当然であるゆえに見落としているものを引き摺り出す、それを介して街の肌触りのような、街の手触りできる表面を拾い出していく作業を行って、既存住宅の一部取り壊し、改修・再生作業を、住空間の表面に連関させて刷り込んでいく。 建築家が「空き家再生」を自らのデザイン手法で提示することは建築デザイン分野では当然のことの様に見えてきたが、萩の市民には異界の事の様で、結局空き家にして他に移り住むか、取り壊して住宅産業の家になってしまう。 萩の空き家は公称5~6000軒、街並みが無くなりつつあります。松下村塾のような象徴的な場所は残っても、街並み自身がなくなってしまう。 「人間生活遺構」という新たな視点で萩という街を捉えることが緊急である。この点を市と話し合って進めた事業でもあります。

  • 「トリノ通信」

    Gaudi研究者・建築家の入江正之による連載「トリノ通信」 ”都市は個の中に生まれるのであり、 個は都市である”

最近の記事

建築の新しい在りようへ③ - abhi から「月ぬれず、水やぶれず」、そして精神的自動機械へ

序 : 道元『正法眼蔵』におけるシークエンス建築のデザインの根幹に触れる。 こちらの取り扱う道元とスピノザの言辞が開く観念のことである。 道元の主著、『正法眼蔵』のなかで「現成公案(げんじょうこうあん)」の巻は周知のように「白眉」であり、圧巻と言われる。短編である がこれほど著名で、内容について感得されきたった巻はない、という。それは仏道という証(さとり)を求めることからの視点からであろう。こちらの表題から見れば、門外漢が見るこの巻の世界は、

    • 建築の新しい在りようへ② — 標識 signo、 「画餅不充飢」 そして 表現 exprimere から

      序 ; 近代は「標識」の論理に陥ったままである 感染症パンデミックの現況において、世界は政治、経済を主題にして揺動をしている。 日本での「三密」は、久しぶりに空間の問題を浮上させているが、影響は「建築」という事柄にまで及んでいない。 表裏があるように、IR、Expoなどのイベント、またAI やuniverse の科学技術の進展は裏生地かもしれない。 その状況で、「建築の新しい在りようへ」を問うことは、単刀直入に言えば「言葉Logos」への回帰である。 世界は「はじめに言葉あり

      • 建築の新しい在りようへ①  「是什麼物恁麼来」 / 「私が知るためには知っていることを知る必要がない」から

        序 ; 内発的な言葉 ー 道元とスピノザの言辞から 人が生活するなかで滅多に起こらないが、内発的な言葉が生まれてくるときがある。そのときの様相を遡及して考えれば、自分が語る言葉は関係のなかで既に語られていた言葉を自分が重ねて語っていたとも、思惟自身が既になにものかに搦め取られているとも言えるという反省が、「そのとき」生じているのではないか。 内発的な言葉というものは既往の関係から免れて、自分の内から掴み取ることにおいて、発せられているのである、と思

        • 空き家PJとこれからの萩 2, 空き家再生について

          2−1見方を変えること。 ・街を歩きました。見方を変えてみること、これも大切です。 ・恵美須町の焼杉仕上げです。素晴らしい日本画の墨絵とも言えます。 ・今魚店のレリーフです。瓦と土壁のバランスの、これだけのレリーフがあるでしょうか。 ・ 浜崎の木格子、無限のパタンがあるでしょう。 ・ 同じく浜崎の下見板。板張りの年季の味わいと、大工の釘打ちの位置の正確さの神経を感じます。 ・ 東浜崎の奥行きです。街並みに沿って歩きながら、突如その面性を突き破る深さ、奥行きの魅力で

        建築の新しい在りようへ③ - abhi から「月ぬれず、水やぶれず」、そして精神的自動機械へ

        • 建築の新しい在りようへ② — 標識 signo、 「画餅不充飢」 そして 表現 exprimere から

        • 建築の新しい在りようへ①  「是什麼物恁麼来」 / 「私が知るためには知っていることを知る必要がない」から

        • 空き家PJとこれからの萩 2, 空き家再生について

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        記事

          空き家PJとこれからの萩 1−4, 離村集落ファッチエスの改修PJ

          スペインのファッチエス離村集落が廃墟となっていたものを建築のワークショップの場、農民資料館、そして市の交流施設へと改修、再生しました。 既存の建物、そして新しく挿入するもの、その関係をデザインの考え方としました。今魚店町の小池邸の改修計画のコンセプトでもあります。 航空写真を撮り、この写真の真ん中にある施設が対象です。屋根も床も落ちてしまっているが、古い既存の石像の壁が構造的にも問題なく残っている。 そこに新しい鉄のフレームを挿入する。工事中の写真です。 第二期までが

          空き家PJとこれからの萩 1−4, 離村集落ファッチエスの改修PJ

          空き家PJとこれからの萩 1−3, 酒蔵の街-鹿島PJ

          九州・佐賀県の鹿島市にある、江戸時代から続く酒造りの酒蔵通りは重伝建地区の指定を受けていますが、私たちはこの通りの活性化案を提案しました。現在も三、四軒の酒蔵があります。 これは100分の1の模型ですが、長さ500mの長さの通りを作成しています。街並み自身は指定を受けているので、手当てをして街並みをそのまま継承していかなければならない中で、活性化のために私たちが眼をつけたのが通りに直交する隙間、路地です。 そこには豊かな山からの水がいつも流れて浜川に流れ込んでいます。この

          空き家PJとこれからの萩 1−3, 酒蔵の街-鹿島PJ

          空き家PJとこれからの萩 1−2, ガウディ建築とバルセロナ

          こちらの研究テーマであるバルセロナのA.Gaudiですが、19世紀に始まって今尚建設中のサグラダ・ファミリアで有名です。 ガウディが残した聖堂のスケッチです。 内部はこの程度現在仕上がっています。バルセロナにとってガウディのサグラダ・ファミリアは現代の象徴的場所です。 これは19世紀半ばの都市計画図で、バルセロナは古代4世紀の街、そしてそれを包み込む13世紀、そして14世紀の中世の街が、さらに19世紀の拡張地域の近代の街区、そして現在の街がそれを取り巻いている。 象徴

          空き家PJとこれからの萩 1−2, ガウディ建築とバルセロナ

          空き家PJとこれからの萩 1−1, イタリア中世都市及び近世都市トリノ

          イタリア中部にある中世の街、サンジミニャーノは塔の街として知られ、商人たちが己の隆盛を塔に託したもので、その当時は数十本に及んだといいます。 同じく中世都市シェナでは、マンジャの塔の下の広場で中世から地区対抗の競馬が行われることは世界的に有名です。 私たちにとっては「まちづくり」を考える上でのバイブルでもあります。というのは、中世から今日まで受け継がれて来た人々が集まって住まう工夫に満ちているからです。 広場、回廊、ちょっとしたアルコーブや路地が随所にあります。日本

          空き家PJとこれからの萩 1−1, イタリア中世都市及び近世都市トリノ

          空き家PJとこれからの萩  1, 都市の魅力、そして「人間生活遺構」という視点

          (2019年07月05日 於いて 萩市役所第一会議室) 1, 都市の魅力、そして人間生活遺構という視点 日本有数の歴史都市・萩には数多くの名所旧跡、街並み、歴史的な建築遺構が数多く残っております。重伝建地区も1976年制度当初に堀内、平安古、今世紀はじめに浜崎、佐々並市と4つを数えています。 私たち建築デザインに携わるものは、20世紀後半になりましょう、多くの歴史都市、漁村、農村集落、宿場町をデザインサーベイという方法を通して調査し、図面等の記録を残し、そこで得られた知

          空き家PJとこれからの萩  1, 都市の魅力、そして「人間生活遺構」という視点

          設計主意; 萩・空き家PJ

          萩の人々が当然として見ている、当然であるゆえに見落としているものを引き摺り出す、そのことが街の見方を改め、繋がることで視点を変えることの大事さを知る。それを介して街の肌触りのような、街の手触りできる表面を拾い出していく作業を行って、既存の住宅の一部取り壊し改修・再生作業を住空間の表面に連関させて刷り込んでいく。 かってあったものと変わらぬ既存の再生レベルから、改めての壁、天井等の取り壊しから再生まで、修復の方法の「位階 / 様相」自体をテーマにして、デザインする様にしていま

          設計主意; 萩・空き家PJ

          序; 人間生活遺構

          「人間生活遺構」とは、建築の在りようを考える一つの見方としての語彙である。日本の集落や街並みのデザインサーベイが20世紀後半に大学の研究室等を中心に行われ、建築デザイン誌に紹介された。それらの資料は、近代合理主義に基づく住空間のデザインに「間」や「媒介空間」、「共空間」など幅と膨らみを与えた。しかし、時間の経過とともに、対象にされた農村、漁村、街道などの様々な様態の集落自体が経済的な意向の元に根こそぎに消失する事態が一方で起こった。 「歴史的建築遺構」という価値づけのない建

          序; 人間生活遺構

          「トリノ通信5 幻視都市-キリコとトラム」

          入江正之(建築家/DFI フォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授) ;イタリア、近代の画家といえばジョルジョ・キリコ Giorgio Chiriko があがるだろう。時代の新しい運動であるシュールレアリズムの先駆者との評価である。彼は「囘想録」(原書名は “Memorie della mia vita” 邦訳書名『キリコ回想録』である。)を残していて、そのなかで絵画作品の評価は画商と評論家という画家になれなかった者たちが連携して作り上げているに過ぎない。何がシュール

          「トリノ通信5 幻視都市-キリコとトラム」

          「トリノ通信 4 ロッジアート loggiato 、三角形・円形ペディメントの機械」

          入江正之(建築家/DFI フォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授) ;寄宿先 albergo の部屋 camera を出て、EVで下におり、中庭 cortile を通って木製の大扉を開けて外に出る。そこはカステッロ広場 Piazza Castello に近いポー通り Via Po の回廊 loggiato である。 夢の中にいるのではないか? 左右両方向、そして車道を介して前方にも回廊の軸が伸る。 夢ではないのか? 回廊を右側に歩いて行けばヴィットリオ

          「トリノ通信 4 ロッジアート loggiato 、三角形・円形ペディメントの機械」

          「トリノ通信3 サン・ロレンツィオ教会と聖骸布教会」

          入江正之(建築家/DFI フォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授) ;カステッロ広場 Piazza Castello をとりまくマダマ宮 Palazzo Madama や王宮施設を背景として、 その甍越しにサン・ロレンツオ教会 Chiesa di San Rorenzo(1666)と聖骸布(シンドネ sindone)教会 Cappera di Sindone(1668)、そしてトリノ大聖堂 Duomo の鐘塔が立ち上る。大聖堂は中世期の建築であるが、聖骸布教会、内陣

          「トリノ通信3 サン・ロレンツィオ教会と聖骸布教会」

          「トリノ通信2 ピアッツア(広場)と仕種」

          入江正之(建築家/DFI フォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授) 
;カルロ・マロケッティ Carlo Marochetti (1805~1867) の《サヴォイアのエマヌエレ・フィリベルト像》(“青銅の馬“として知られる。1838 年) は、トリノの歴史的中心街区 centro storico di Torino のサン・カルロ広場のデザインの軸上にあって、空間を引き締める役割を担っている。 Piazza San Carlo サン・カルロ広場はトリノの建

          「トリノ通信2 ピアッツア(広場)と仕種」

          「トリノ通信 1  トリノという発端」

          入江正之(建築家/DFI フォルムデザイン一央(株)・早稲田大学名誉教授) ;「個人的な」話から始めよう。括弧付きには意味がある。それは後で、理解されるだろう。大学を辞して、武蔵野に小さな建築デザインのアトリエを構えている。1階の自室から2階の作業場に移動する日々は、大学の研究室での研究・設計・教育活動での 移動時間とは根本的に異なる。そこで、必ず昼に外に出るのを利用 してちょっとした役割も果たす形で、1万歩以上歩くことを課している。 創造する人 三鷹の駅を大回りして

          「トリノ通信 1  トリノという発端」