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#建築 記事まとめ

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建築系の記事を収集してまとめるマガジン。主にハッシュタグ #建築 のついた記事などをチェックしています。
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記事一覧

建築は世界と接続し、世界を構築するためのひとつの概念体系である(建築批評に関する覚書)

先日映画監督で脚本家のクエンティン・タランティーノによるCinema Speculationという本を読んだ。この本は映画の作り手でもあるタランティーノが、1970-80年代のアメリカン・ニューシネマを代表する映画をいくつか取り上げて、それぞれを独自の目線で批評していくという構成をとる。ホラーやスリラー、刑事物からドラマまで、多様なジャンルから幅広く作品を抜粋しており、タクシードライバー(1976)以外見たことのなかった僕は、基本的に夜に映画を見て、次の日の通勤時間にその批評

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フランク・オー・ゲーリーのマネジメント論

こんにちは。santas代表の宮崎です。 今回は、ハーバード・ビジネス・レビュー2023年7月号に掲載された『建築家フランク・ゲーリーのプロジェクトマネジメント』を拝読して、建築業界に限らず、様々な分野で応用できそうな内容でしたので紹介します。 フランク・オー・ゲーリーとは? フランク・オー・ゲーリーとは、カナダ出身の建築家で、現在はロサンゼルスを拠点にして世界中で活躍する建築家です。彼の作品は波型鉄板や金網、合板などの工業用素材を使って、複雑で独創的な形態を表現すること

【WORKS】M HOUSE-3/増築の設計手法①

【プロジェクト概要】 築55年の壁式鉄筋コンクリート造住宅の増築と改修 用途:一戸建ての住宅 設計:鈴木隆介一級建築士事務所 竣工年:2023年 掲載:新建築住宅特集2023年5月号 01.何を増築するか 第三段目となる今回の記事では、M HOUSEの設計手法についてご説明していきます。 クライアントからの要望を整理すると、住居に必要な面積は約130㎡(約40坪)でした。これに対し既存棟の床面積は約105㎡なので、25㎡分を増築する必要があります。 「何を増築するか」を

【WORKS】M HOUSE-2/増築のハードル

【プロジェクト概要】 築55年の壁式鉄筋コンクリート造住宅の増築と改修 用途:一戸建ての住宅 設計:鈴木隆介一級建築士事務所 竣工年:2023年 掲載:新建築住宅特集2023年5月号 1.既存について 既存は昭和44年に竣工した「壁式鉄筋コンクリート造2階建て、床面積106㎡」の住宅でした。 今回25m2分の木造棟を増築しており、10m2以上の増築には確認申請が必要(防火・準防火地域では面積に関わらず必要)となるため、増築の確認申請をしています。 昭和44年の竣工から現

【WORKS】M HOUSE-1/増築という選択

【プロジェクト概要】 築55年の壁式鉄筋コンクリート造住宅の増築と改修 用途:一戸建ての住宅 設計:鈴木隆介一級建築士事務所 竣工年:2023年 掲載:新建築住宅特集2023年5月号 01.はじめに 築55年の壁式鉄筋コンクリート(以下、壁式RC)の住宅の増築と改修の設計をしました。(2023年3月竣工) プロジェクトの内容について、4回に分けて書いていきます。 戸建て住宅の規模で、壁式RCに対して増築をするという選択は、あまり多くない事例ではありますが、このプロジェクト

新しい発注方式 ECI(Early contractor involvement)方式 「施工者が設計者に技術提案する」

Written by 病院建築note(医療機器出身のゼネコン社員) 「公共事業の品質確保の促進に関する法律」が2014年に改訂され、DB(デザインビルド)方式明記されました。 同じく記載された発注方式にECI(Early contractor involvement)があります。 近年公共事業や病院建築においても増えている発注方式です。 2022年11月に名古屋に開業した「ジブリパーク」はECI方式で発注されました。このような建築工事にECI方式を適用した日本初の事

篠原一男の海外受容について

 海外における篠原の受容を調べてみたいと思っている。  スイスを中心にヴァレリオ・オルジアティやクリスチャン・ケレツといった大物に影響与えてるし、新進気鋭のfalaまでも明らかに影響受けてるという、海外に対する幅広い世代への影響力を誇っている。世界的に流行っているようにも感じるが、スイスが特にはしゃいでいるように見える。  日本では篠原一男あたりまでの閉じた建築から伊東豊雄あたりを起点として開いた、軽い建築が特徴的に展開されている。現在までそれが続いていると考えると、篠原は

「地域社会圏」は”パリピ”の集い?

「パリピの考え方だね」 山本理顕+仲俊治『脱住宅』を読み、夫(建築とは関係ない仕事をしているが、同じ藝大出身)にその概要を話した。 ちょっと端折りすぎかもしれないが、こんなふうに説明した。すると返ってきたのは、 という反応だった。 「パリピ」。言い得て妙である。 ずっと建築の設計をしている私でも、この本に書かれている暮らし方に若干の気恥ずかしさやためらいを覚えてしまう。確かに自分はできる、でも、誰もができる暮らしなのだろうか。そう疑ってしまう。 夫は、話を聞いて瞬

ガラス張りの図書館がある「まちなかリビング北千里」について、蔵書の紫外線対策などを吹田市に質問しました

昨年11月12日、私の故郷でもある大阪府吹田市にあたらしく出来た「まちなかリビング北千里」ついてTwitterで投稿したところ、さまざまな声が届きました。 その際に投稿した写真がこちらです(一部)。 これらの写真や「場所によって飲食OK」と書いていたツイートの文言などを受けて、「ガラス張りの図書館は、紫外線によって蔵書が退色してしまうのではないか」「高い場所に飾ってある本を手に取ることが出来ないのではないか」「飲食OKの図書館では、本に虫害が発生するのではないか」ほか、多

026.八戸市美術館の感想文

八戸市美術館(以降、八美)の感想文書きます。 ただしこれは一個人の感想なので、あくまで参考程度としていただき、ぜひ現地に足を運んで、ご自身の目でご覧になることを推奨します。

¥1,000

連載/デザインの根っこVol.10_原田 真宏(前編)

 建築家やインテリアデザイナーにインタビューを行い、衝撃を受けた作品などのインプットについて語っていただく連載「デザインの根っこ 」。今回は「商店建築」2019年3月号掲載、原田真宏さんの回(前編)を公開します。 発売中の最新号の「商店建築」2022年6月号はこちらから! 形の裏にある抽象化のプロセスを見る 僕は普段ものを見る時に、デザインの為のインプットとしようとか、アウトプットにつなげようといったことは考えません。言い換えると、あるでき合いのスタイルを探したり、それが

名建築の横顔~丹下健三「ゆかり文化幼稚園」~

ひとつとして同じ風景のない「こどもの城」 「こどもの城をつくる、それが園舎を設計するときのテーマだったんです」 そう語ってくれたのは教務主任の須藤友紀さん。一を聞けば十答えてくれる応対から、須藤さんのこの建築への愛が伝わってくる。 今回取材したのは丹下健三設計の「ゆかり文化幼稚園」。建築家として乗りに乗っていた1967年の竣工だ。 「『園舎に色は必要ない。こどもたち一人ひとりに色があるから』丹下さんはそう考えたそうです。一般的な幼稚園の園舎には、いろんな色やキャラクター

【家具の話|Yチェア(CH24)】北欧チェアの名品、Yチェア(CH24)を選んだ理由

こんにちは、シカマルです。 今日は一級建築士の話はお休みして、私の好きな家具の話をしていこうと思います! 年末に建築士合格の自分へのご褒美として購入したYチェアについてです。 納期がかかるため、まだ手元に来ていないですが届くのが非常に楽しみなイスです。 なぜイスなのかイスというと多くの人が生活のための道具と認識している方が多いのではないでしょうか。 最近でこそコロナ禍の影響で家の中にいる時間が増え、イスにお金をかける人も増えてきたかなと思います。 イスがあることで、そこが自

【建築】神聖さと親しみやすさを併せ持つ聖ベネディクト教会(ピーター・ズントー)

宗教の聖地巡礼があるように、建築にも巡礼がある。対象となるケンチクや建築家、テーマは人それぞれだが、分かり易い例を挙げると、ル・コルビュジエの建築を巡る旅などがあるだろう。 スイスの建築家ピーター・ズントーも巡礼対象の一人といえる。しかもズントー建築の多くは交通の便が良いとは言えない場所にあるので、巡礼と呼ぶにはピッタリなのである。(以前、ノルウェーの2つのズントー建築を紹介させてもらったが、あの旅も巡礼と言えたかもしれない) その中でも多くの人が訪れる建築が、スイス中央