ロンロ・ボナペティ|建築×編集

建築ライター・編集者。建築の魅力をたくさんの人に知ってもらいたくて活動する黄色い鉛筆で…

ロンロ・ボナペティ|建築×編集

建築ライター・編集者。建築の魅力をたくさんの人に知ってもらいたくて活動する黄色い鉛筆です。建築の面白さを広く伝える翻訳家になりたい。https://ronro-bonapetit.github.io ←名刺サイトはこちら

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ウェブの時代に建築家が発信することの意味

こんにちは、ロンロ・ボナペティです。 noteをはじめてから、早半年が経過しました。 はじめる前は想像もしていなかった良いことがたくさんあったのですが、ひとつ釈然としないことがあります。 それは…… なんでもっと建築系の書き手が増えないんだろう!? ということです。 これまでの建築とメディアの関わり方の歴史を考えていくと、いまnoteで発信していくことは建築に携わる人にとってすごいチャンスが広がっているんじゃないかと思っていて。 Twitterでこんなつぶやきをした

    • 建築家と家をつくった2023年

      こんにちは、建築ライターのロンロ・ボナペティです。 2023年にやったことを振り返ってみようと思います。noteでの発信は全くしなかったのですが、思い返すと色々と動きがありました。 まずなんといっても、 建築家と自邸をつくりました。 仕事で建築と、そして建築家と関わる身でありながら、自分が住む家については無頓着で賃貸の方が身軽で良いかなーと思っていましたが、家を買うことに。 数年前からズルズルと検討を続けていましたが、中古マンションを購入し、建築家にリノベーションの設計

      • 建築を見に行く、そこに社会性を加えてみる

        こんにちは、建築ライターのロンロ・ボナペティです。 ずいぶんと更新が空いてしまいました。 noteを書けていなかった理由の大部分は、お仕事としていただく原稿を書くなかで、書きたい欲のようなものが解消されてしまっているからです。 それだけ自分が書きたいと思ったことを自由に書かせてもらえる機会をいただいていて、ありがたいことなんですが、それでもやはりこうして「自分さえよければ良い」場所で書くのとは決定的に違う点があります。 ロンロさんは、ラジオが好きです。 特にTBSラジオの

        • 名建築の横顔~人と建築と〜武蔵野プレイス【転載】

          ※初出「建設の匠(現・建設HR)」より転載 あの名建築は、いまどのように使われているのだろうか? 竣工当時高く評価された建築のその後を取材する本シリーズでは、建築とそれに関わる人びととの関係を探っていく。 2016年の日本建築学会作品賞を受賞した、東京都武蔵野市にある図書館複合施設、武蔵野プレイス。 受賞理由にも集客施設としての成功があげられている本施設は、日々多くの人でにぎわっている。 その背景にはどのような工夫が隠されているのだろうか。実際に訪れてみた。 つい長居してし

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        • 建築編集者ロンロが行く
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        • あの名建築に会いに行こう!
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        • 教科書に載せたい建築の名文
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        • 僕らはこうして建築をスキになった
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        • いすみ通信
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        • わかると楽しい! 建築の見方
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          名建築の横顔~丹下健三「ゆかり文化幼稚園」~

          ひとつとして同じ風景のない「こどもの城」 「こどもの城をつくる、それが園舎を設計するときのテーマだったんです」 そう語ってくれたのは教務主任の須藤友紀さん。一を聞けば十答えてくれる応対から、須藤さんのこの建築への愛が伝わってくる。 今回取材したのは丹下健三設計の「ゆかり文化幼稚園」。建築家として乗りに乗っていた1967年の竣工だ。 「『園舎に色は必要ない。こどもたち一人ひとりに色があるから』丹下さんはそう考えたそうです。一般的な幼稚園の園舎には、いろんな色やキャラクター

          名建築の横顔~丹下健三「ゆかり文化幼稚園」~

          名建築の横顔~人と建築と~「駿府の教会」編

          聖書の言葉に集中するための「完璧な空間」※初出「建設の匠(現・建設HR)」より転載 天井から降り注ぐ幻想的な光。 余計な要素が排除され禁欲的でありながらも、木の温かみのある空間。 壁面と天井に並べられた木材の密度を調整することによってのみ、光をコントロールし、季節や時間帯によって多様な表情が生み出されている。 西沢大良氏設計の「駿府の教会」といえば、現代の教会建築の名作として、竣工後11年(2019年当時)が経ったいまでもファンの多い建築だ。 「この教会堂はプロテスタントの

          名建築の横顔~人と建築と~「駿府の教会」編

          文化を乗せて未来へ運ぶ方舟──内藤廣設計「海の博物館」

          船に乗って、大海原へと漕ぎ出す。 目の前を遮るものはなにもなく、ただただ水平線に至るまで、広大な海面がきらめいている──。 そんなイメージを頭に思い浮かべると、不思議と未来へと思考が伸びていきます。 幼少期から繰り返し刷り込まれた、冒険の象徴としての海のイメージもさることながら、地理的な制約から密集度の高い日本の国土利用と開けた海の対比もまたその理由となっているのかもしれません。 いずれにせよ、海にまつわるイメージや文化は、実態としても象徴としても、陸地のそれとはまったく異

          文化を乗せて未来へ運ぶ方舟──内藤廣設計「海の博物館」

          「分解」は建築の生産システム改革の狼煙になるか──能作文徳著『野生のエディフィス』

          「サステイナブル」という考え方には注意が必要である。建設業の関心はいかに持続可能な方法で「建てる」かにあり、建設すること自体に疑問を投げかけるものではない。 能作文徳著『野生のエディフィス』の巻頭テキストは、従来の「環境に優しい」建設のあり方への痛烈な批評からはじまります。 産業革命以来、その負の影響を発展途上国に「外部化」してきた資本主義社会が、ついに真正面から立ち向かわざるを得なくなっている昨今、SDGsをはじめ地球規模での環境問題への取り組みが喫緊の課題となっています

          「分解」は建築の生産システム改革の狼煙になるか──能作文徳著『野生のエディフィス』

          「泊まれる出版社」を立ち上げた夫婦が、建築家との協働の先に見つけた価値と自信

          神奈川県真鶴町──。神奈川県で唯一の過疎化地域とされるその町に、出版事務所を併設したユニークな宿がある。 宿泊とセットで提供されているまち歩きツアーで真鶴の魅力に触れ、それをきっかけに移住した人も40名を超えるそうだ。 若手建築家ユニット、トミトアーキテクチャ(以下、トミト)が設計した「真鶴出版2号店」の建築は、若手建築家の登竜門ともされるコンテスト、SDレビュー2017に入選し建築界でも注目を集めた。 地域の暮らしに新たな影響を生み出すプロジェクトを讃えるROCAL RE

          「泊まれる出版社」を立ち上げた夫婦が、建築家との協働の先に見つけた価値と自信

          地方でのリアルな暮らしを知りたい──メディアを立ち上げた夫婦がたどり着いた地方との関わり方

          さまざまな地域に住む人びとの暮らしを紹介するウェブメディアがある。 ”暮らし”の”視点”で「くらしてん」 ご夫婦で運営されているこのメディア、取材方法が興味深い。 ある地域に住む人に、27枚撮りの「写ルンです」を渡して日々の暮らしの中で撮りきってもらう。後日撮影された画像を見ながらオンラインでインタビューを行い、その人の視点で自らの暮らしを語ってもらい記事にする、という方法だ。 記事は、写真と撮影時の状況を簡潔に説明するテキストで構成されていて、1つの記事を読むとある地域に住

          地方でのリアルな暮らしを知りたい──メディアを立ち上げた夫婦がたどり着いた地方との関わり方

          モチベーションを維持する会社内倒産?──建築界の異端児、創造系不動産のチームマネジメント

          「あなたが応援している会社を教えて」 LINE証券とnoteとのコラボ企画を知り、建築を専門に活動するライターの僕は、真っ先にある不動産会社のことを思い浮かべました。 建築業界と不動産業界は、一見近いようでいて実はかなり考え方が異なります。 たとえば著名な建築家がデザインし、建築的には高く評価されている住宅であっても、不動産業界では「駅からの距離、築年数、広さ」といった画一的な指標で価値を判断されてしまいます。 また不動産的には価値が低い土地であっても、建築家が本領を発揮

          モチベーションを維持する会社内倒産?──建築界の異端児、創造系不動産のチームマネジメント

          建築好きなら読み返したい、2019年のベストnote5選

          令和元年の最終日、いかがお過ごしでしょうか。 今年話題になった建築系のnoteを振り返りたいけど、どんなnoteがあったか忘れちゃったよ~、というあなたのために、この1年間に発表された個人的におすすめなnote5選をまとめました!! といってもやはり面白いnoteほどたくさんシェアされて、すでに読んだという方も多いと思います。 そこで何度読んでも繰り返し発見のあるものを厳選しようと、僕自身ももう一度読み直してみて、改めて面白いと思ったものを取り上げてみました。 寒くてなかな

          建築好きなら読み返したい、2019年のベストnote5選

          建築のバックボーンに想いを馳せる旅~自由学園明日館~

          こんにちは、ロンロ・ボナペティです。 建築の世界では、よく「コンテクスト」という言葉を耳にします。 コンテクストとは、日本語では文脈と訳され、ある事象の前後関係や背景などを指す言葉です。 建築においては「コンテクストを読み解く」などといわれ、たとえばある建築を設計する際に、敷地の周辺環境や景観、地形、その土地の歴史などといった前提に目を向け、そこからデザインの手がかりとなる要素を抽出していく作業を表しています。 こうした考え方は、建築を設計する段階では非常に有用、というよ

          建築のバックボーンに想いを馳せる旅~自由学園明日館~

          「生きた建築」その意味を問い直してみる~ #イケフェス大阪2019 後日譚~

          こんにちは、ロンロ・ボナペティです。 「生きた建築」 と聞いて、なにを思い浮かべますか? ハウルの動く城、のように動力をもって動く建築のことでしょうか。 あるいは自然と一体となって生態系を育む、半自然的な建築のことでしょうか。 実はこの言葉、大阪で年に1度行われている建築イベント、「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)」が定義した言葉なのです。 今年で6回目を迎え、イベントの時期には例年SNSでも数多くの投稿が見られるので、ご存知の方も多いかもしれ

          「生きた建築」その意味を問い直してみる~ #イケフェス大阪2019 後日譚~

          #教科書に載せたい建築の名文 ──建築意匠講義|香山壽夫

          「ロンロさん、おすすめの建築本教えて下さい」 編集者という立場で建築に関わるコンテンツ制作に携わっていると、このような質問をよく受けます。 それに対する回答に正解はなく、その人がどの程度建築について知っているのか、いままでどんな本を読んできたのか、そして次なる好奇心として何を求めているのかによって、答えは変わってきます。 またトンチンカンな回答をして信頼を損なうのも嫌ですし、いきなり難解な本を紹介したことでせっかく建築に興味をもちつつあったその人を建築嫌いにさせてしまうのも

          #教科書に載せたい建築の名文 ──建築意匠講義|香山壽夫

          奇跡の建築、伊豆の長八美術館を生んだ必然の連鎖

          名作と呼ばれる建築が生まれるとき、そこに至る背景には決してひとりの建築家の才能では説明しきれないドラマがある。 偶然の連鎖としか言いようのない奇跡的なストーリーが生んだ結晶のような建築であっても、そこにある必然性を読み解いてみる試みは、建築を見る僕たちの眼を養ってくれる。 今回はそのケーススタディのひとつとして、奇才・石山修武が手がけた静岡県松崎町にある「伊豆の長八美術館」について掘り下げてみたい。 伊豆の長八美術館外観 美術館外観 足元を見る 内観 伊豆の長八(本

          奇跡の建築、伊豆の長八美術館を生んだ必然の連鎖