ウェブの時代に建築家が発信することの意味

こんにちは、ロンロ・ボナペティです。

noteをはじめてから、早半年が経過しました。
はじめる前は想像もしていなかった良いことがたくさんあったのですが、ひとつ釈然としないことがあります。

それは……

なんでもっと建築系の書き手が増えないんだろう!?

ということです。
これまでの建築とメディアの関わり方の歴史を考えていくと、いまnoteで発信していくことは建築に携わる人にとってすごいチャンスが広がっているんじゃないかと思っていて。

Twitterでこんなつぶやきをしたら、結構反応をもらえたこともあり、その辺のお話を今日は書いてみたいと思います。

建築を発信するとは?

建築家が自分のつくった建築や考えを広めるために、発信するのが一般的になったのはおそらく20世紀のはじめのこと。
ル・コルビュジエが『L’Esprit Nouveau』という雑誌を創刊(1920年)し、また展覧会などを通じて自身が考案した理想的な都市や建築の姿を発表していきます。

そうした活動が資産家の目に止まり、建築の設計を依頼する。
ル・コルビュジエはひとつひとつの作品で彼の思想を凝縮した建築を設計し、それをまた発表していくことで、パトロンやクライアントを獲得していくわけです。
そのテキストは世界中で読まれ、彼の思想に影響された各地の建築家が近代建築や都市の建設を担う。
メディアで発信することで、仕事に結びつくと同時に自分で手を下さずともその思想を反映した建築が建てられていくという状況につながっていきました。

自身の建築にどのような意義があるか、社会的・建築史的に位置づけることで、建築界の内外で影響力を付けていく。
また同時代に活躍する建築家が同じ問題意識をもって建築に取り組むとき、メディアを活用してムーブメントを生み出していくこともありました。
このように自身の作品をメディアで発表することは、スタンダードな建築家のあり方になっていきます。

ニーズの多様化とメディアの変遷

ル・コルビュジエの活躍した時代、社会も建築も「こうあるべき」という規範に向かって変革を推し進めていました。
それを周知させるためにメディアも発展していったわけですが。

では現代の状況はどうでしょうか?

近代社会が生んださまざまな弊害に対する反省もあり、いま一言で「こうあるべき」という社会や建築の姿は描けなくなっています。
人びとの暮らしも多様化し、それに応じて求められる建築も変わってきています。
住宅だけを考えてみても、旧来の核家族のほか、二世帯住宅、単身世帯、シェアハウスなど家族の単位もさまざまです。

とにかくいろんなニーズ、価値観が共存することになった結果、建築の表現や建築的思考が動員される場面も多様化していった。
結果的にひとつの建築メディアですべてを網羅することができなくなり、建築のメディアも多様化への道を辿ります。

これは建築に限らず、あらゆる文化に共通して言えることかもしれません。
例えばマンガを例に取ってみても、かつてはマンガ誌と言えばジャンプ、マガジンだった時代から、少女漫画誌や青年誌、さらに高年齢向けの雑誌など、さまざまなジャンルが生まれています。
そして近年では、Pixiv やTwitter、instagram といったSNSや、コミケ等のリアルイベントを通じてプロではない人も作品の発表を楽しむようになっています。

そうした作品が出版社の目に止まり、商業誌で発行されるといった動きも生まれていますが、それでは建築とメディアの関係は今後どうなっていくのでしょうか?

ウェブの時代に建築家が発信することの意味

こうした動きは、これまで商業誌では扱えなかったニーズをSNSの発達によって結びつけることができるようになったために生まれたものと考えることができます。
紙の出版物では売上が求められるため、「売れそうな」作品しか掲載されることはありませんでした。
したがってその基準から漏れてしまう人は、個人で頑張って作品をつくっても、発表する場がなかったから仲間内で見せ合うだけで終わってしまったり、誰にも見られることなく静かに捨てられていった作品も無限にあったことでしょう。
しかしマニアックな作品であっても、ウェブで公開することで少人数でも熱烈なファンが付けば、商業出版よりも利益を上げる日が来るかもしれません。

建築のメディアにおいても、万人に伝えるべき作品を出版社側が厳選して掲載してきました。
したがって社会全体が抱えている問題に対峙している建築であったり、これから建築が向かう先を展望するような作品であったり、ある程度の普遍性・一般性が求められます。

かつては社会全体の問題が個々のクライアントが抱える問題と合致しており、建築もそれに対応するものだったため、市場で日々行われている建築活動のトップレベルの作品がメディアに掲載されているものでした。

けれどもこれだけ社会のニーズも建築のあり方も多様化してきた時代においては、既存のメディアにはそぐわなくても、日本のどこかにはあなたにしかもっていない知見を必要としている人がいる、そんな状況が生まれているのではないか。
建築においてだれかのニーズに応えられるということは、すなわち仕事に直結する可能性があるということですね。

世の中のどんな建築であっても、どこかの誰かは必要としている情報が眠っているはずです。
そして建築家や建築をつくることに関わる人に限らず、建築を使う、見るといったさまざまな立場で建築と関わっている人たちにも、各々が考えていることがあるはずです。
それをどんどんnoteで発信していって欲しいな、というのが僕の願いのひとつです。

じゃあ具体的にどんな視点でなにを発信したら良いんだ、というのは建築系WEBメディアのアーキテクチャー・フォト編集長の後藤連平さんによる著書に詳しいので、こちらをお読みください!


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