篠原一男の海外受容について
海外における篠原の受容を調べてみたいと思っている。
スイスを中心にヴァレリオ・オルジアティやクリスチャン・ケレツといった大物に影響与えてるし、新進気鋭のfalaまでも明らかに影響受けてるという、海外に対する幅広い世代への影響力を誇っている。世界的に流行っているようにも感じるが、スイスが特にはしゃいでいるように見える。
日本では篠原一男あたりまでの閉じた建築から伊東豊雄あたりを起点として開いた、軽い建築が特徴的に展開されている。現在までそれが続いていると考えると、篠原は克服されたと考えてもよいかもしれない。
スイス・ミニマリズムの潮流と篠原の形式性が相性が良くて受け入れられたのか、はたまた別の理由があるのか。
スイスの出版社から篠原の本が出版されてたのは知ってるけど関係あるのか気になり、海外で出版された篠原一男に関する本を一通り調べてみた。
※第二版以降の年を書いている可能性があります。
1982.11 (U.S.)
"Kazuo Shinohara: 32 Houses"
1990.12 (U.S.?)
"Kazuo Shinohara: A Bibliography (Architecture Series: Bibliography)"
1995.01 (German)
"Kazuo Shinohara: Works and Projects"
1998.03 (German)
"Architekten. Kazuo Shinohara"
2011.09 (Spain)
"2G Kazuo Shinohara: Casas / Houses"
2018.03 (Swiss)
"Kazuo Shinohara: On the Threshold of Space-Making"
2019.11 (Swiss)
"Kazuo Shinohara: 3 Houses"
2019 (Swiss) 2022.02 New Edition
”Kazuo Shinohara: View from this Side”
2020.10 (Swiss)
"Shinoharistics: An Essay About a House"
2023.02 (Swiss)
"Kazuo Shinohara: The Umbrella House Project"
2018年にはETHで篠原一男の展覧会が行われ、
"Kazuo Shinohara: On the Threshold of Space-Making"という図録(?)が出版されている。2019年にはスイスの出版社から
”Kazuo Shinohara: View from this Side”という本が出版されている(今年New Editionが出版された)。この2つは確かGA Galleryにあった。さらに、2010年にはヴェネツィア・ビエンナーレの金獅子賞を獲得している。
から傘の家がヴィトラキャンパスに移設されたことがこの間話題になっていたが、展覧会(?)が開催され、来年の2月には傘の家の特集がヴィトラ社から出版されるらしい。そういえばヴィトラ社もスイスだ。
年表を見ると、最近になるまではスイスは特に篠原一男の出版はしていなかったが、ここ数年狂ったように出版し続けている。よく見ると90年代後半にドイツで2回特集が組まれている。そこでどう注目されていたかはわからないが、よく考えればチューリッヒはドイツ語圏だ。ドイツからスイスへと流れ込んだと考えることもできる。1995年の時点でオルジアティは37歳、ケレツは32歳である。まだ若手の頃で、この辺りで篠原一男に触れ、影響を受けた可能性はある。そこから随分と期間が空いて、最近になってスイスで再び注目を集めている。これは大御所となったオルジアティやケレツが篠原に関する発言をしたことによって篠原が注目されるようになったのかもしれない。実際、ケレツは学生時代だった1980年代にオランダで篠原の講演会を聴講して以来、虜になっているらしい。
一方日本では、篠原が亡くなって多木浩二による本、図面集が出版された。少し経ってJAで特集が組まれ、それっきりである。
1975年2月
四人のデザイナーとの対話
1978年12月
SD スペースデザイン 1979年1月号 篠原一男
1999年1月
篠原一男 建築会議 (建築技術9月号別冊, 4)
2004年3月
アフォリズム・篠原一男の空間言説
2007年6月
建築家・篠原一男―幾何学的想像力
2008年1月
篠原一男住宅図面
2014年3月
JA NO.93 篠原一男
2022年11月
精選建築文集1 谷口吉郎・清家清・篠原一男
さらに本人の著作は、
『住宅建築』(1964年)
『住宅論』(1970年)
『続住宅論』(1975年)
『篠原一男』(1996年)
『超大数集合都市へ』(2001年)
『篠原一男経由 東京発東京論』(2001年)
個人的に日本でも篠原一男が再注目されているように感じていたけど、ただの自分の興味だったのかもしれない。ただ、スイスの建築が世界を席巻している現在を起点に世界的に篠原一男が注目され、日本でも再び大きく扱われる可能性はある。というか祈っている。