【小説】二度あるダジャレは三度ある(470字ショートショート)
「イクラっていくら?」
意図せずダジャレっぽくなって、俺は恥ずかしくなって下を向いた。
「二百円」
しかし姫野は気づかなかったようで、平然と教えてくれる。
「じゃあ頼もうかな」
俺は注文用のタブレット端末を手に取った。
「イカってうまいか?」
まただ。またダジャレっぽくなってしまった。
「旨いよ」
またしても姫野は気づかなかったようで、真顔で答える。
「じゃあ頼もうかな」
俺は注文用のタブレット端末を手に取った。
もう一回いけそうだ、と俺は思った。
二度あるダジャレは三度あるだ。
バレずに会話に忍び込ませたい。
これは、特になんの意味も持たないが、俺の小さな挑戦だ。
上手くいけば、明日はいい一日になる。
最高に根拠のない運試しである。
「タイってめでたいよな」
言った瞬間、しまった、と思った。
ちょっと狙い過ぎたかもしれない。
メニュー表を眺めていたが、ちょうどいいネタが見つからなかったのだ。
二回目までと違い、なんの脈絡もないセリフになってしまった。
どうなるか。
姫野が顔を上げた。
「タイ食べたいな」
まさかのカウンターアタックである。
《終》
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