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2024年2月の記事一覧

映画好きのための参考書~北村匡平・児玉美月著『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』~

北村匡平・児玉美月著『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』(フィルムアート社、2023年。以下、本書)は、こう書き出される。
映画監督だけではない、世の中の多くの職業-特に「専門職」において-、残念ながら枕詞に「女性」と付けられることが、未だ多い。
そしてさらに残念ながら、そういった職業において「女性ならではの」を求められることも、未だ多いのも事実だ。
と、未だ残念なことが多い世の中だが、ただ

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【2024年2月24日 オンライン上映決定】映画『ブルーを笑えるその日まで』

以前、『今、孤独で苦しい日々を送っている少年少女たちへ』と題した、映画『ブルーを笑えるその日まで』(武田かりん監督)の拙稿で、こう書いた。

その待ちわびた特別オンライン上映&オンライン監督トークイベント(Zoom)が、2024年2月24日20時に行われるとのこと。
受け付けは、2月22日(木) 12:00に開始されるとのこと。

詳しくは、こちら↓

映画『雨降って、ジ・エンド。』

映画『雨降って、ジ・エンド。』(髙橋泉監督、2020年。2024年劇場公開。以下、本作)を観ながら、時々溜息が出た。

溜息が出たのは、どこにも行けず、もっと言えば、他の世界を希求しながらも「自分の力では、他の世界になんか行けない」という諦観(「親ガチャ」などは、その象徴)によって、各々がジレンマの自家中毒を起こしている世界に対してで、つまり、それが我々が生きている「現在」そのものだからだ。

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映画『このハンバーガー、ピクルス忘れてる。』(映画『違う惑星の変な恋人』公開記念1週間限定特別上映)

もぉ、本当にメンドーーーーーーーーーーックサイ!!!!!!!

映画『このハンバーガー、ピクルス忘れてる。』(木村聡志監督、2023年。以下、本作)、冒頭から終幕まで、この言葉が頭から離れない。

という謳い文句の本作、要は、その2作品の登場人物たちが、そのまま登場しているのである。とはいえ、「スピンオフ」といったものではない。

2024年2月公開の『違う惑星の変な恋人』は2023年の東京国際映

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映画『コットンテール』(特別先行上映 舞台挨拶あり)

映画『コットンテール』(パトリック・ディキンソン監督、2024年3月1日公開予定。以下、本作)のことを書くのに、やっぱり、ここから始めようと思う。

舞台挨拶でパトリック監督自身が言及したとおり、本作は映画『ぐるりのこと。』(橋口亮輔監督、2008年)のオマージュでもある。
2023年末にCSの衛星劇場にて放送された『「ぐるりのこと。」製作15周年記念 特別座談会』という番組でリリー・フランキーが

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映画『一月の声に歓びを刻め』

『三島有紀子という映画作家は捉えどころがない』
北村匡平・児玉美月著『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』(フィルムアート社、2023年)の中で、北村はこう評している(彼はパンフレットにも寄稿している)。

『一貫した作家性が見出せない』ということであるが確かにそのとおりで、しかし、2020年代に入り、少しずつ様相が変わってきたと感じ、そして2024年、いきなり『一月の声に歓びを刻め』(以下、

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「共助」の物語~映画『夜明けのすべて』~

コロナ禍にあって時の政権が「自助・共助・公助(の順)」と言って批判を浴びたのは、自らが発した「緊急事態」の意味がわかっていなかったからで、もちろん(民主主義社会において)平時は「自助・共助・公助」であるべきだ。

映画『夜明けのすべて』(瀬尾まいこ原作、三宅唱共同脚本・監督、2024年。以下、本作)を観て元気が出るのは、そこが基本的に「共助」の世界だからだが、元気が出るのは逆説的に「共助」が難しい

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「何でも」を真正面から受け止めること~映画『その鼓動に耳をあてよ』~

何でも診る

「医者なんだから当たり前じゃないか」
そう思うかもしれない。でも「現実」はそうじゃない。
激務やそれに伴う人不足、成り手不足……「現実」の理由はいくらでも挙げられる。
しかし、本当の「現実」とは、「何でも」が実は何も意味しない曖昧で空虚な言葉だ、ということではないか?

映画『その鼓動に耳をあてよ』(足立拓朗監督、2024年。以下、本作)を観て、「何でも」の広さと深さに驚愕した。

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映画『螺旋銀河』(『王国(あるいはその家について)』アンコール記念 限定公開)

映画『螺旋銀河』(草野なつか監督、2014年。以下、本作)上映後、家路についている間、ずっとモヤモヤした気持ちを言葉に出来ず、もがいていた。
徹底的に「言葉」にこだわった映画を観たにも拘わらず、それを言葉にできないのである。

本作は2014年の草野監督初長編作であり、今回の上映は、2023年末に公開された同監督の新作『王国(あるいはその家について)』が、翌年1月にポレポレ東中野でアンコール公開さ

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