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映画鑑賞

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2022年9月の記事一覧

生と死と「時間」~映画『川っぺりムコリッタ』~

そういえば「お彼岸」だ。
恥ずかしながら、そう気づいたのは、映画『川っぺりムコリッタ』(荻上直子監督、2022年。以下、本作)を観た日の床の中だった。

主人公の山田(松山ケンイチ)を始め、島田(ムロツヨシ)、南(満島ひかり)、溝口(吉岡秀隆)ら住人たちが各々の迷いや煩悩を抱いて日々を暮している、川っぺりにある「ハイツムコリッタ」は、きっと「彼岸」なのだ。
仏教に詳しくないのでWikipediaの

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2022年9月24日土曜日 酒。読書。観劇。それだけ ~お米とすき焼き~

私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。

たとえば、2022年9月24日……

12:10 映画『川っぺりムコリッタ』@渋谷・ユーロスペース3連休の真ん中。
台風が接近しているらしいのだが、雨の中の渋谷は人は多い。昼前だからかマークシティーの飲食店も行列が出来ている。
そこを抜け、円山町のユーロスペースに

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想いを"共有"する~映画『よだかの片想い』~

映画『よだかの片想い』(安川有果監督、2022年。以下、本作)は、人物や物語に"共感"ではなく、その中にある「想い」を"共有"する作品で、誠実に丁寧に撮られている。

それは原作である島本理生の同名小説(集英社文庫)に惚れ込んで企画段階から参加したという主演の松井玲奈の想いとともに、安川監督・城定秀夫(脚本)という2人の実力派映画人の誠実な想いがフィルムに焼き付けられている、ということである。

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おすすめ青春"キュン"映画~映画『神田川のふたり』~

映画『神田川のふたり』(いまおかしんじ監督、2022年公開。以下、本作)は全く「普通」じゃない。
おかしなことだらけなのに、高校生の「恋愛"キュン"映画」として完成度が高く、最後には"おかしなこと"の辻褄が合って、作品自体の完成度も高い!という、奇跡の映画である。

とても平凡な設定に反し、本作は冒頭に書いたとおり、おかしなことだらけなのである。

本作は、カメラの視点が定まらない状態で始まる。浮

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