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深山 有煎 ミヤマ ウセン
2023年12月31日 10:13
父が亡くなってから五年ほどになる。ある日の夕方、おじいちゃんというものの存在を知らない、もうすぐ二歳になろうという息子が、「お化け。でた。お化け。でた」と、ニコニコしながらかけ寄ってきた。「どこにでたの? こっちの部屋?」ミエはやさしさのつまった声でそう尋ねると、息子は仏壇の置いてある薄暗い部屋の方を指差しながら黙ってうなずいた。仏壇の置いてある部屋は、家の中でも一際涼しく日差しが直接入り
2023年9月20日 18:36
意味不明な夢を見た。いなりさんの油あげと白い酢飯が、昭和のアニメのように空中で合体するというものだ。 昨日の夜に家族で食べに行った回転寿司でこんな事があったからだろうか?大好きなおいなりさんを注文しようと備え付けの端末を手に取った。「あ。おいなりさんが売り切れてるなんて、珍しいよねえ?」「そうだなあ。それは、あまりないかもな。オレはトロな」と、父はめったに注文しないトロを注文した。 他
2023年9月24日 16:55
その日も地下鉄に揺られていた。つり革をつかみながら、珍しいタイトルのポスターを見かけた。最新ダイエット!「仮面で登山でダイエット!」芸能人の〇〇さんも、オススメ!小さな字で(かも)。と、書かれていた。そりゃあ、誰もそんなイベント企画しないわなあ……。珍しいわけだ。と、呆れてながめていた。色々な推測が頭に浮かんだ。仮面をつけて、登山するのだろうか?なんのひねりもないが?とか、それって危なくない
2023年9月30日 19:48
パティシエになった彼女がキノコとクッキーを組み合わせた新製品を開発していると聞いた。「一般的に考えてさぁ。キノコ+クッキーはありえないよ?なんで、そもそもキノコなの?しかも、なめこ?」「いいじゃない。なめこクッキーくらい。時代はもう昆虫クッキーよ?」「確かに、それはそうなのだけど。女性にうけなきゃ。男性だって食べないよ?」「何よ、否定ばかりじゃない!私の発案を台無しにする気なの?」「え。
2023年10月11日 22:19
擬態する能力をもった悪魔と戦っていた。勇者はとっさに思いついた。勇者は悪魔にこう言った。「お前、プライド高そうだからさ、ここにあるサツマイモそっくりには、なれるわけないよな?」と、隣にあったサツマイモをつつきながら悪魔にそう言った。 「そんな、簡単なことやってみせるぞ! まぁ、見てろ」そう言うと、すぐにサツマイモに擬態して見せた。その瞬間。上から降ってきたフォークの先端が見事にサツマイモにな
2023年11月3日 15:08
両親もこの家も随分と歳をとった。古くなった自宅を今後どうしてゆくか、家族で話し合っていた。 皆で思いつくことを書き出していった。 無理して立て直す。経費を抑えてリフォームする。 思い切って売りに出す。色々な意見が出てくる。「売りに出しだってこんな田舎町の家なんて売れないわよ?」「だろうなあ」「田舎町を売り文句に、シェアハウスとかは?」と、妹が家のリサイクルをすればいいんじゃないのかと
2023年11月4日 20:55
塾の帰り道の雷雨の中、目にいっぱいの涙をためている迷い犬がいた。首輪がついていたので、飼い犬だとわかる。なんだか、汚なそうで僕は犬の前をさっと素通りした。後ろに何か動物的なものの気配を感じる……。何かが僕の後ろをついてくる。ずっとついてくる……。さっきの犬だ……。きっとママに怒られる……。まだ、ついてくる……。あの角を曲がると、もうすぐ家だ。さっと振り返ると、まだついてくる……。