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日記じゃないやつ

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気が向いたときに書くちょっと長い文章
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拝啓 限りなく遠い弟へ

拝啓 限りなく遠い弟へ

小川洋子さんの「シュガータイム」という小説に、主人公が家に弟を招待してお食事会を開くエピソードがある。
2人は特別何かを語り合うわけではないが、言葉を介さずとも姉弟の間には確かな絆があることが伝わってくる、穏やかで優しい話。

兄弟ってつくづく不思議な関係だと思う。
友情でもなければ恋でもないし、愛情と呼ぶほど大層なものでもないような気がする。ただ一緒に育ち、それぞれ大人になっていくだけ。

私は

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あだ名って何だっけ?

あだ名って何だっけ?

あだ名で呼ばれることが多い。

高校時代に吹奏楽部に入っていたんだけど、入部したときにパートの先輩から一人一つ「あだ名」を授けられるという風習があった。
このことを職場の人に話したら、その場にいた吹奏楽部出身の人全員が、同じ風習によりあだ名を得ていたことが発覚した。てっきりオリジナル儀式だと思っていたからびっくりだ。

私はその儀式によって授けられたあだ名が浸透しすぎてしまい、部員全員はもちろん、

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爪色オンザドリーム

爪色オンザドリーム

爪に色をつけるのが好き。

まどろっこしい言い回しをしたけど、要はただの“ネイル”。
どうでもいいけど、“ネイルする”ってのも随分変な言い方だ。その道理でいくなら髪を切ることは“ヘアーする”だし、鼻毛を抜くことも“ノーズヘアーする”でいいんじゃないか。

別に誰に見せるわけでもなく、ただ自分の気が向いた時だけ爪をカラフルにしている。

以前はマニキュアを使っていたけど、最近ジェルに変えた。
どっち

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スーパー・スーパーマーケット

スーパー・スーパーマーケット

仕事帰りに、駅前のスーパーマーケットに寄って帰る。
毎週水曜日は野菜が安い。金曜日は鶏胸肉が安い。不定期で辻利の抹茶アイスが驚くほど値下げされるので、冷凍コーナーも欠かさずチェックする。最近ようやくパターンが身についてきた。

レジに並んでいる間、左右の棚に陳列された商品に目が眩む。
やっぱり袋のじゃがいも買えばよかったかなと後悔する。
一番空いているレジに並んだはずが、あとから隣の列に並んだ人に

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私はサンタさんになれない

私はサンタさんになれない

気づいたら12月下旬になっていた。どうりで街中からシャンシャンシャンシャンした洋楽が聴こえてくるわけだ。

「えっ明日クリスマス!?」
と、さもクリスマスなんて興味ないですよ風に振る舞うのが恒例だったが、実は毎年め〜〜〜っちゃワクワクしている。なんなら、12月に入った瞬間から頭のどこかで鈴の音が鳴っている気すらする。12月前半は𝓜𝓮𝓻𝓻𝔂 𝓒𝓱𝓻𝓲𝓼𝓽𝓶𝓪𝓼 🎄🎅�

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眠れない朝は歩けばいい

眠れない朝は歩けばいい

上手く眠れない日だった。職場の人から愚痴っぽい話をたくさん聞かされて、まだ見ぬ未来のことを考えてしまい胃がキリキリしていた。ストレスで本当に胃を痛めがち。比喩ではなく。

一応寝て起きたけど寝た気がしなくて、でも二度寝はできそうにないから諦めて起床。朝4時半だった。外はまだ暗いし、ビジネスホテルは隙間風が吹き込んでいて寒い。

この日は出張で遠くの地に来ていた。
どうせなら散策でもしてみるかと思い

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母の愚痴

母の愚痴

1. 

 最近、母親が職場の愚痴を家でよく溢している。
 母は小さい個人病院の受付で働いていて、癖が強すぎる医者(私もかかったことがあるが、たしかに圧が強すぎて萎縮してしまった)や事務長、パートさんの間で毎日わちゃわちゃと揉めているらしい。

 ここ数日は、今年入ったばかりの若いパートの子についての話題が多い。仕事の覚えが早くて可愛い子だと言ってはいるが、体が弱くてすぐに欠勤してしまうそうだ。勤

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古本市の神を探しに|京都旅行記

古本市の神を探しに|京都旅行記

 月曜日の朝8時、最低限の荷物しか入れていない身軽なスーツケースを片手に、新幹線に乗車。行き先は京都。

 新幹線の座席は、人を寛がせる気を全く感じさせないほど直角である。私は後ろの人に「タオシテモイイデスカ……?」と声をかけることができないタイプの人間なので、直角のまま2時間を過ごした。日常でこういう小さな損ばかりしている。

 Googleマップで位置情報を見ながら「新幹線速すぎワロタw」と

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