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将棋:「敵兵を説得して、味方の軍へ」ー”コペルニクス的転回”ならぬ”将棋的転回”が作る人類のサステナビリティ。(CASE: 99/100)

▲「将棋」とサステナビリティ

私は将棋が趣味で、中学、高校とクラブ活動で熱心に活動したため、アマチュア三段の腕前になりました。40枚の駒と81マスの限られた盤面の中で、相互に駒を動かしながら、相手の王様の捕獲をめざすというゲームですが、意外とその駒の運用の仕方には、その人の個性がにじみ出ており、対戦をしながら、時に、その人と盤面を通じて対話をしているように感じることが多くあります。

あるとき将棋の歴史を調べていて面白いことに気が付きました。将棋のルーツは、紀元前2000年ごろの古代インドのゲーム「チャトランガ」で、そこから世界各地に伝わったといわれています。インドから西洋に伝播して「チェス」となり、中国の「シャンチー」、朝鮮半島の「チャンギ」、タイの「マークルック」とそれぞれの地で少しずつルールや形を変えながら、日本に来て「将棋」となっています。
世界各地での将棋では、ルールが少しずつ変化していて、チェスには、クイーンや僧侶といった駒が特徴的で、インドでは象、中国では砲や炮といった駒があり、それぞれの地域での文化や戦闘の仕方を反映しているのは興味深いところです。

それでは、日本の将棋が他の地域と大きく違っている点をご存知でしょうか?将棋のルールを知っている方はご存知かと思いますが、相手の駒をとった後、これを自分の駒として使うことができるところです。このため、他の将棋では、チェスの白と黒のように、敵と味方の駒を明確に色分けしているのに対して、将棋は駒に敵味方の区別はなく、五角形の駒の方向によって敵か味方かを示しています。将棋が戦争を模したゲームだとするならば、日本の将棋においては、捕虜とした敵兵を説得して味方の軍に組み入れるということを、他の将棋においては、捕虜を皆殺しにするということを暗示しています。私は、将棋のこの決定的なルール変更を生み出した日本の文化を大変誇らしく、また普遍性をもっていると思います。

歴史をひもとくと、世界での戦争は、国同士はもとより、人種、言語、民族、宗教といった差異を忌避して、双方が文字通り白黒決着を付けようとするときに、どちらもが勝者となれない戦争へと発展する悲劇をくりかえしてきました。現在進行中のウクライナにおける戦争は、まさしくその象徴と言えます。人類のサステナビリティを考えたときには、さまざまな差異を乗り越えて、すすむべき方向性の一致を目指して、相手を説得する、折り合いをつけるという“コペルニクスの転回”ならぬ“将棋的転回”が、これからの私たち人類には重要になっているのではないでしょうか?

▲参照資料

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2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.labシニアビジネスデザイナー 丸本 正彦

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