綾那。廻る文章

詩的な文章、感覚的な文章を描いています。 詩.エッセイ.短編小説。地球的note

綾那。廻る文章

詩的な文章、感覚的な文章を描いています。 詩.エッセイ.短編小説。地球的note

最近の記事

いつか、いつでも真夏日【✉️】

この台風が過ぎれば夏は終わるから、今日が今年いちばんの真夏日だっていい。でもこのままずーっと、この夏のなかで、この夏延長したっていいよね。ラブホみたいに世界を施錠して。 夏は白が似合う季節。なんもない白、死、詩。わたしたち、死を描きながらもうすぐ夏を超えられそうだよ。すごいね、私達生きている。  春夏秋冬の中、真夏日はいつか絶対にくるよ。その日がいつなのか、教えたくなったらおしえてね。いつか、いつでも真夏日しようね。🤍❤️‍🔥❤️‍🔥                  あや

    • 真夏雨【短編小説】

       煙草の香りが鼻の先に霞む、カフェコロラドの、窓際の円卓の席で外を眺めながら注文を待つ。座ってすぐ置かれたおしぼりとお冷。店のライトと窓からの少しの自然光で透明にちいさくキラつくグラスのその水面がとてもきれいで、卓に頰杖をついているその肘をトンとグラスに当ててみた。冷たい。私の無機質な丸く小さい骨の肘が冷たくてきもちいい。 そしてもう一度、今度は少しの力を、助走をつけて肘をグラスにトンッッと当ててみた。するとキラつきを孕む小さな水面はおおきく波打ち、水はピャッと一秒円く卓に溢

      • 君がつぎに持つ線香花火になりたい。【短編小説、詩】

         夏に、線香花火の玉を落とした弟が「あっ」と漏らしたその声を聞いても、どうしてもどうしても頭に血が登って降りないことなんてアイツの事しかなくて、それから秋冬春を越して、また次の夏がきてもどうしても頭から離れず、すわった目で虎視眈々と敵の姿を探していた。蚊取り線香の匂いが夏の風物詩としてよいものとされていることが気に食わなくて、どう考えても臭いだろ、と思った。   私は去年の夏、君の血を自然にもしゅるると吸い上げやがった蚊がゆるせなかった。どうしても。蚊は殆どが秋冬を越せず一

        • 私ってこのままでいいんですか?たぶん良くないけど、いっか。【独り言】

          同級生の友達がもう、血の繋がらない赤の他人だった人との愛や永遠を信じ、確信し始めているというのに私ときたら、正攻法じゃ自分さえ愛せないからって、試しに色んな方法で歪に愛したり憎んだり、どーでもよくなったりを繰り返している。ぐるぐるとひとりっきりで。永遠なんていわれても、わたしには今日1日の自分の調子さえわからず、1秒先の自分さえいつもすぐそこでゆらゆらちいさく揺れている。未来はいつも、どこまでも果てなく真っ白なキャンバスが前方でドカンッと死んだように横たわっていて、わたしはそ

        いつか、いつでも真夏日【✉️】

          ポニーテール【詩】

           この世界に在る物、その粒子のなかでいちばんに健やかでしなやかな成長を遂げたのは、君のひとつに結んだその髪。だれひとり届かない高いたかい位置に在るそれは、跳ねるように柔軟に、ぼくの眼に飛びこむ。  いつも君が立つ方向が前でぼくが立つ方向が後ろなのは、北極と南極のどっちがどっちか決定するよりもひとつ以前に決まっていた事実。ぼくは君に追いつけないこの切なさと情けなさに慣れてしまって、逆に味を占めてしまって、君の後ろ姿をだれよりも味わう特権を得た。まるで徒競走で前を走る君が疲れて

          ポニーテール【詩】

          循環の奴隷【詩】

           世界の秘密を知ったのはきみだけにこっそり耳打ちするためだったのに、気付けば毎日秘密を電子の海にぶちまけてるよ。秘すれば花なのにね、嗚呼はずかしいはずかしい。 わたしは世界に賄賂を渡さずとも、たっくさんの秘密を特許経路で入手していて、でもそのひとつひとつがわたしの退屈な日常の奥底に施錠されている、とっても大切なものなの。なのに、世界の根底を揺るがすような、まだ出廻っていない情報を、わたしは毎日ぽいぽい電子の海に漏えいしちゃってる。ほんとバカだよね、きっと電子に取り憑かれてると

          循環の奴隷【詩】

          夏の新緑はクローバー【詩】

          夏には100年前から飽きてる。夏は夏を想い夏に焦がれる季節のための季節。夏は待つためのもの。待つ女なんていうものはなにをやらせても駄目だ、いつの時代も。 ひと夏の恋の相手はいつも、低俗で最悪な世界一の王子様だ。暑い夜で沸かせた頭で人間が思い付くことなんて、人類が今まで100億回は繰り返してきたおんなじ過ちだ。歴史を学んで知ることは、人は学ばないということ。成長しないということ。愚かだということ。だからこんなしょうもない世界でも人は絶滅せずに次の世代へと子孫を残す。次の時代を知

          夏の新緑はクローバー【詩】

          なんか、なんかなんかなんか壊したい。壊してみたい。【詩】

          退屈な体育祭。スクールバッグの底の誰にも見せない小説。蒸れたローファー。顔を上げればそこには、青春を有限なものであると先回りに俯瞰して、青春に勤しむひとたちがいる。なんだ、終わりばかり見つめてるのはきみじゃん。終わりに怯えているのは、わたしよりもきみじゃん。  きみが好きだ。きみが好きだ。間違えて舌を噛んだ時の、あの雲ひとつない痛みのように、きみがすきだ。新鮮な血の味がするあの痛みが、どうしょうもなくたまらない。  そしてわたしは鋭い棘の茨に吸い寄せられる。自身の美しさを守る

          なんか、なんかなんかなんか壊したい。壊してみたい。【詩】

          カフェオレに溺れる【詩】

           わたしは毎日、ここからあそこまでの等距離を自転車で移動する。毎日は当然おなじサイクルで廻り、わたしはおなじサイクリングで毎日を廻し続ける。くるくるくるくる、ふたつの車輪を乱れなくおなじリズムで廻してゆく。ペダルを踏み込む足裏は無駄な熱をもたず、ただ機械的に冷静に、おなじ繰り返しを好む。鼓動に心地良い速さで廻すペダルはいつだって安全で、信頼できるのに、いつも何処かがすこし足りない気がする。うしろのタイヤの空気、ちゃんと入ってたかな。なにかあればチリンチリンって高い警告音、すぐ

          カフェオレに溺れる【詩】

          1人の部屋に飾った花が萎み、茎が老婆の背骨のようになっているのをゴミ袋に捨てる時、すこしの罪悪感が湧く。私にだけその優美さを振りまいて居てくれたのに、美がかたちを変えた途端に捨ててしまうなんて。自分がいちばんされたくないことを、花にしている。 ほんとうは食べたい、食べるべきだ。

          1人の部屋に飾った花が萎み、茎が老婆の背骨のようになっているのをゴミ袋に捨てる時、すこしの罪悪感が湧く。私にだけその優美さを振りまいて居てくれたのに、美がかたちを変えた途端に捨ててしまうなんて。自分がいちばんされたくないことを、花にしている。 ほんとうは食べたい、食べるべきだ。

          こんな色 流行ってないって 知っている

          こんな色 流行ってないって 知っている

          真朱色の真珠【詩,短編小説】

           瞬時に水滴を弾くような頑く蒼い若さを誇りながらも、真朱の熟し切った色をしている果実をみつけた。真珠のかたちをした小さな果実。隙なくぎゅうぎゅうに灼熱が押し込まれている、終わりのない砂漠で出逢った奇跡の真珠の湖は、見渡しのよい砂漠に出づる朝陽よりも、沈む夕陽よりも、鮮烈に目を引く色で存在している。それは、真夏の重みを担う赤。甘く酸い暁。若く弾けそうな真珠。  私の乾き続けた喉は既に理性を喪失し、張りのある小さな湖を、その真朱色を、瞬時に噛み潰して食道へ通したいと切望している

          真朱色の真珠【詩,短編小説】

          いきるりずむ じかんかんかく【詩】

          きみがつぎにかくめいをおこすまであとなんびょう?このじかんをこわすまであとなんびょう?そんなんじゃだめだよ、あのこのまねっこしてるだけじゃ。まねっこ、できてないしね。ひとりでじぶんのこいしなきゃ、ひとりでじぶんのぜつぼうしなきゃ、それからまたひとりでじぶんのすきなものみつけなきゃ。なんどだってね。しんぱいしょうのきみのみゃくはくははやいけど、いちにちはながいしじんせいはすごくながい。そういうことだよ?こどうのびーとはこどくのびーと、えいえんにきざまれつづけるてんぽ120。この

          いきるりずむ じかんかんかく【詩】

          どうしてあなたは1人しかいないの?【詩】

          私は地球の輪郭を、この地球儀の輪郭をぐるぐると何廻も人差し指で辿ってなぞる様に今まで生きてきた。そしてそれと丸で同じような工程で、貴方の輪郭もなぞってみたいと思った。生まれてただ一度も乱れたことの無いたった一本の独立した線、世界と貴方との孤立した境界線は、果てなく美しい抑揚の旋律を奏でている。直線と曲線のバランス、凹凸のリズムの乱れさえ完璧に滑らかで愛おしい、貴方の輪郭。貴方の身体。肉体と世界は隣接しながらも、お互いに凛と背筋を伸ばして真逆の密度を保ち続ける。貴方が己の力で創

          どうしてあなたは1人しかいないの?【詩】

          秘蜜【詩】

           わたしはそっとピンクのブラジャーを付けた。外からも鏡からも、どこからも視られないように気を付けながら。ブラジャーのピンクは母親の胎盤の色。お母さんから溢れる無償のホスピタリティーの色。本当はこのままの姿で玄関をでて、なに食わぬ顔で背筋を伸ばして雑踏を踏みたい気もしたけれど、とりあえずその気持ちには気づいていないフリをしておいた。 それからわたしは、だれも読まない、私も読まない日記を書いた。色の薄いペンを歩かせた、改行だらけの余白ばかりのページができあがる。いつの日かノートを

          夢と現実の境い目、【詩】

           どこまでも続くあの学校の階段によく似た白いブラインドを締めて、ほっと息をつく。それは、昔よくみた夢のこと。どこかの深夜の学校で、どこまでもどこまでも続く幅の狭い階段を、背後に迫る得体の知れない漆黒に追われるように、一寸先の暗闇へと不安と恐怖に急かされながら降りる私。足音を速くさせるほどに上手くバランスがとれなくなり、不安定は不安定を増殖させ、もつれる脚はどんどん私ではなくなっていく。白い鍵盤を上手く叩けなくなった足裏。ジェットコースターの最高頂からの垂直落下。私は先に拡がる

          夢と現実の境い目、【詩】