部屋で潮風を味わう:サマセット・モーム『雨・赤毛 モーム短編集Ⅰ』
こんにちは。裏花火(うらはなび)です。
私は読書が趣味ですが、長編・短編のどちらが好きかといわれると、短編が好みです。特に、今回紹介するようなエキゾチックな話だったり、読んでいて五感が刺激されるような短編が好みです。
さて、今回紹介するのはサマセット・モーム短編集Ⅰ『雨・赤毛』です。
モームと言えば、『月と六ペンス』なのでしょうが、実は私読んだことがありません。。モームで読んだことがあるのは、今回紹介するこの『雨・赤毛』だけです。それでも是非紹介したいと思えるぐらいに魅力的な短編集でした。ネタバレなしです。
私が好きな短編にはいくつか傾向があると思ってまして
・エキゾチックな話(異国の雰囲気が感じられる話)
・胡散臭い話
・都市伝説のような話
・暑いとか寒いとか、主人公の体感が想像できる話
・オカルトめいた話
・呪術的な話
・熱に浮かされたような話
・いつのまにか異界に入り込んでいるような話
・気の利いたラストで終わる話
だと思ってます。
暑いとか寒いとか、と書きましたが、読む分には暑さを感じる作品が特に好きです。東南アジアや南米を舞台にした話が特に好みです。
で、この『雨・赤毛』は南洋モノ、南海モノと言われるらしく、照りつける太陽や、うだるような暑さ、自堕落な地方の人々や生活、が背景になっているので、まさに私の好みそのものでした。
今回の投稿のタイトルの通り、潮風を感じる作品だったのです。
雨、赤毛、ホノルルの三短編が収録されていますが、いずれも海のある土地でのお話です。
表題作はタイトルの通り、雨である島に足止めを食らっている医学博士と伝道師のそれぞれの夫婦のはなし。
もうね、ずっと後ろに雨音が聞こえているようで、じっとりと、湿気たっぷりの世界観が最高。シャツが体に張り付いているんだろうなあ! 湿ったシーツなんだろうなあ! と厭さが掻き立てられます。
一方で、時折海風が吹いたりして、一瞬の爽やかさもあるんだろうなあ、とか、色々な風景を想像しちゃいます。往来を行き交う現地の人々の活気、とか。
おそらく三作品とも人間の弱さとかエゴとか、そういったテーマなんでしょうが、それもいいけど、私個人としてはこの舞台設定がとても好みでした。部屋に居ながらにして、熱帯を旅行した気分になれました。
ちなみに私が読んだ新潮社文庫版、字が大きくて読みやすいのもGOODでした。