苺タル子

美味しい朝ごはんを食べる為に生きています。書くことがすき✏️

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最近の記事

周りの人達への思いやりとして、私は我慢をやめてみた。

「君は、あまりにも自分より他人のことに心を傾けすぎている。 それは君の美学かもしれないけれど、僕にとっては残酷なことなんだよ」 もう10年ほど昔だろうか 会社から社宅までの帰り道、職場の人間関係の悩みに押し潰されて泣きながら歩いていたら、当時付き合っていた彼が社宅の前に立っていた。 とても寒い12月の夜。 帰宅時刻は伝えていない。 一体いつから待っていたのだろう。 [少し心の調子がよくなくて、迷惑をかけてしまいそうなので、しばらく会えません] 私が昨夜送ったメール画

    • [妻]でも[母]でもない[私]のエンジンをかける10分間

      私は毎朝、出勤前の10分間だけ [妻]でも[母]でもない ただひとりの[私]になる。 まだ窓の外が暗い朝5時、(眠いし怠いから後もう少しこうしていたい)なんて心の声は完全無視して無理やり体を引きずり寒い台所へ移動する。 夫のお弁当を準備しつつ娘の朝ごはんを用意してテーブルの下の床に新聞紙を敷き詰める。家中のゴミ袋をまとめ手を洗うついでに洗顔と歯磨きを済ませ、化粧水と日焼け止めを塗りながらすやすや眠る娘のもとへ。 寝かしつけるのに苦労したと思ったらすぐ今度は起こすのに苦

      • キラキラした『泥だらけのスニーカー』

        幼稚園へと歩く道中、なんとなく母の服装が気になった。パーカーにジーパンにスニーカー。大きなリュックを背負って私の手をひく母は、テレビで見る綺麗なお姉さん達とは少し違う。なんとなく、キラキラしていないような… でも、私が転ぶとすぐにパーカーのポケットに入っているハンカチで泥を落としてくれて、おなかが空いたと泣けばすぐにリュックからおやつとお茶が出てきて、猫を見つけて走り出す私を母はすぐに走って草藪の中まで追いかけてくれて、いつでもどこでも私を守ってくれて 母は私のスーパーヒ

        • 母と娘の離乳食戦争

          2020年1月に元気よく大音量の産声を上げた娘は、毎日ごくごく音をたてて大量のミルクを飲み、大砲のようなゲップを出し、プクプクのむっちり体型で生後6ヶ月の離乳食デビュー日を迎えた。 米農家の親戚からとっておきのお米を送ってもらい、丁寧に研いで土鍋に入れ、じっくり弱火でコトコトお粥を炊く。お米の甘い香りが部屋中に広がる頃に重い蓋をそっと開け、慎重に上澄みだけを掬い上げて小さなお皿に注ぐ。 冷めるまでじっと待つ。 果たして食べてくれるだろうか。 おいしいと思ってもらえるだろ

        周りの人達への思いやりとして、私は我慢をやめてみた。

          海のタンデム卒業式

          父が大好きなバイクを売ることにした。 もう歳だし、体力がなくなってきたし、木造の車庫も古くなってきたから、らしい。 わたしは(大丈夫だろうか?)と心配になった。 父は根っからのライダーだ。よく晴れた休日は早朝からバイクを丁寧に磨き上げ、私をタンデムデートに連れ出してくれた。おそろいのライダースジャケットを着て、大きな背中にしがみつき、季節の光と匂いを浴びてきた。 薄紅色の花びらが舞い散る中を颯爽とすり抜けた春も 力強い日射しに負けじと潮風を突き破った夏も 銀杏の香

          海のタンデム卒業式

          ろうそくの火を吹き消さない誕生日パーティー

          東日本大震災が発生したのは、誕生日の前日だった。 春休みで授業も部活動もない昼下がり。親は仕事の為わたしは祖母宅に預けられ、ソファに寝転び携帯小説を読んでいた。 突然、地球がガターしたような大きな違和感を覚えた時にはもう目の前で電子レンジが飛んで食器棚に突き刺さっていた。 家は壊れてもう住めない。水も電気もない。親は仕事で避難所の運営に24時間奔走している。当然わたしの誕生日どころではないと思っていた。 ところが 非常用と書かれた極太ろうそくが灯る中、わたしの目の前に

          ろうそくの火を吹き消さない誕生日パーティー

          ラッキーdayの混ぜこぜ餃子

          我が家の定番晩酌メニューは 【混ぜこぜ餃子】です。 いつも終電ぎりぎりまで仕事をしている夫は、月に1回ぐらい定時で帰ってくる日があります。 そんなラッキーdayは2人でキッチンに並び、お揃いのエプロンの紐を結び合い、窓から注ぐ夕日を浴びながら晩酌スタートです。 とりあえず冷蔵庫からキンキンに冷えた缶ビールを2本取り出し乾杯。 思いっきり喉を鳴らして気分爽快となったら、[餃子の皮・ミックスチーズ・昨晩のおかず]をテーブルに並べます。 そう、【混ぜこぜ餃子】の具は 『昨

          ラッキーdayの混ぜこぜ餃子

          萌芽のソフトクリーム

          君と出会い 初めて髪を染め 耳たぶに光を揺らし 香水の瓶に触れた。 尊敬が憧れに 憧れが恋心に色を変えた頃 君は卒業して都会へ行ってしまった。 だから私 久しぶりの連絡が嬉しくて 旅行鞄をパンパンに詰めてここまで来たの。 神奈川県横浜市 みなとみらい線 元町・中華街駅を降りる。 すれ違う人達が皆幸せそうなカップルに見える。二人ならシェアして食べ歩くことが出来る。ひとりで小籠包をつつく私は浮いているだろうか。 慎重に齧った皮から激しい熱を感じ、一気に涙目になる。 あの

          萌芽のソフトクリーム

          『どうぶつの森』で結婚相手を見つけました

          きっかけ 仕事の人間関係に悩み 不眠症が悪化して 一日の中で偏頭痛と吐き気がない時間のほうが珍しいという状態になっていた頃 当時の彼氏(現在の夫)が 3DSと『とびだせ どうぶつの森』を持って部屋に来た。 「眠れない夜は釣りでもしたら。」 とのこと。 今まで 勉強一筋 仕事一筋 で、ゲームなんてやったことのない私には思いつかない発想だった。 なるほど。釣りのゲームね。 (後にすぐ勘違いが判明) その日から毎晩、私は3DSの中で村長として暮らし始めた。 誰

          『どうぶつの森』で結婚相手を見つけました

          もしかしたら“朝食”かもしれない

          [いつかティファニーで朝食を/マキヒロチ作] この本が、わたしの人生再起動スイッチを押してくれた。 当時のわたしは新しい仕事がうまくいかず、沈鬱の夜に溺れていた。 仕事以外の時間も身体中に仕事の重りがへばりつき、徐々に食事も睡眠もできなくなっていた。 (現状打破の為もっと仕事を頑張らなくては)と(もうこれ以上頑張れない)が交互にわたしを飲み込んでいた。 仕事の帰り道、まっすぐ帰宅する気になれず彷徨いていたら、明かりに誘われる虫のように本屋へ吸い込まれた。 少し幼い

          もしかしたら“朝食”かもしれない

          魔法のシチュー餃子

          わたしの実家には、家族それぞれの部屋がなかった。 基本的に家族全員が茶の間で過ごす。 家の中でひとりになることが出来る空間はお風呂とお手洗いぐらいなので、私はよくお風呂に大量の本を持ち込み、入浴中にじっくり読み進めた。 いま自分の本棚を見渡すと、昔からお気に入りの小説ほど、かつての湯気でシワシワになっている。 当時、自分の部屋がない事についてあまり気にしていなかったが、大学受験の際はさすがに勉強部屋が欲しかった。 母に相談した結果、我が家の近所にある祖父母宅の部屋が

          魔法のシチュー餃子

          已己巳己の眼鏡

          わたしたちは似た者同士。 同じ眼鏡をかけて 同じ仕事をして 同じラーメン屋に通い 同じマンガを読み込んできた。 同じ温泉好きだから、 神奈川県箱根町に来た。 わたしが箱根ガラスの森美術館へ誘ったら、 「どれも同じように見えるね」と言うので 『ひとつひとつに違う命があるんだよ』 と教えてあげた。 あなたに箱根園水族館へ誘われて、 『どれも同じように見えるね』と言ったら 「ひとつひとつに違う命があるんだよ」 と教えてくれた。 目的地の温泉で 眼鏡を

          已己巳己の眼鏡

          サヨウナラ

          私の勝負曲は ドリカムの[世界中からサヨウナラ] __________ am5:00 スマホから大音量で鳴り響くアラーム通知音で現実に引き戻される。 また月曜日だ。 始まってしまった。 考えれば考えるほど動けなくなる。 無心で。なるべく無心で。 黙々と顔を洗い 歯を磨き 5分でメイクと髪を仕上げる。 スーツを着たらヘッドフォンを装着して いざ出陣。 ヘッドフォンからは ドリカムの[世界中からサヨウナラ]が リピート再生で鳴り続けている。 『モノは壊れて 元

          サヨウナラ

          やさしい涙

          私の夫は [ポーカーフェイス] だ。 映画をみても、本を読んでも、音楽を聴いても、炊きたての新米を食べても、タンスの角で足の小指を誤爆しても、無表情。 ひたすら無表情。 交際中、あまりのポーカーフェイスっぷりに(きっとこの人は赤ちゃん時代に表情筋を使いきったんだろう)と思っていた。 だから 結婚式で、父とバージンロードを歩く為の扉が開いた瞬間、顔をぐしゃぐしゃに崩して涙を溢れさせている夫を見て、私は固まってしまった。 隣にいる父の咳払いで我に返る。 ゆっくり歩き

          やさしい涙

          催花雨の沖縄へ行こう

          「催花雨の沖縄へ行こう。」 新しい仕事がうまくいかず 毎晩泣いていたら 食事も睡眠もできなくなった。 病院を検索していると 無口な夫が珍しくデートに誘ってきた。 太陽も海も観光客もない、静かな沖縄。 雨音を聴きながらレンタカーに揺られ、沖縄そばのスープを飲むと、ちょっと沁みた。 ホテルの大きなふかふかベッドに横たわると、数ヵ月ぶりにゆっくりと沈み込む気配がして、気づいたら朝だった。 ひどく空腹を感じる。朝食会場でお粥を口に入れると、こんなにも 甘くて 柔らかくて 温

          催花雨の沖縄へ行こう

          甘くて 温かくて 柔らかい

          もうすぐ冬がくる 指先がじんじん冷えて たくさん着込んだ服はもそもそして 人混みの中をくねくね掻き分けていると 早くあの空間に包まれたいと願う。 わたしは スタバのキャラメルスチーマーがだいすきだ。 甘いキャラメルシロップが溶け込むホットミルクに、煌めくキャラメルソースのリボンを纏うホイップクリームが美しく浮いている。 スタバの柔らかい照明と 心地よい音楽に包まれ、 珈琲豆の香りに癒されながら、 空いている席に滑り込む。 白く ころんとした可愛らしいマグカッ

          甘くて 温かくて 柔らかい