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萌芽のソフトクリーム

君と出会い
初めて髪を染め
耳たぶに光を揺らし
香水の瓶に触れた。

尊敬が憧れに
憧れが恋心に色を変えた頃

君は卒業して都会へ行ってしまった。
だから私 久しぶりの連絡が嬉しくて
旅行鞄をパンパンに詰めてここまで来たの。


神奈川県横浜市
みなとみらい線 元町・中華街駅を降りる。

すれ違う人達が皆幸せそうなカップルに見える。二人ならシェアして食べ歩くことが出来る。ひとりで小籠包をつつく私は浮いているだろうか。
慎重に齧った皮から激しい熱を感じ、一気に涙目になる。

あの頃と同じ服を着て
同じ笑顔を浮かべて
左手に指輪をつけてきた君に怒っているのか、気づかず浮かれていた自分に怒っているのか分からない。

ただ、そのまま置いてきた自分のことは誇らしいと思う。八年分の恋心も。

火傷を癒すように杏仁ソフトクリームを舐める。冷たくて、甘い。

大丈夫、ちゃんと、甘い。

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