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脳性麻痺入院日記

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PVL(脳室周囲白質軟化症)の息子との父子入院と日々のこと。
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P.V.L.日記 父子入院29日目 退院 

P.V.L.日記 父子入院29日目 退院 

5月30日(月)

気が付くと5月が終わっていた。約1ヶ月過ごした病院から今日で退院だ。退院の前後は出会った皆さんが何度も挨拶にきてくれる。同じ時期にリハビリを受けた皆さんとは、同部屋でなくても合宿の一体感のようなものが芽生え「また会おうね」と再会とお互いの成長を願う。息子は、一度でもリハビリを担当していただいたセラピストの顔を記憶しているようで、すれ違うたびにまるで地盤の強固な政治家のように「よ

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P.V.L.日記 父子入院28日目 優先 

P.V.L.日記 父子入院28日目 優先 

5月29日(日)

実に小学4年生の時以来の大阪城である。午後から外出許可をとって家族3人で大阪城まで歩いて行った。病院から約徒歩40分。微妙な距離感ではあるが運動不足になる入院生活の補填になってよい。小学4年生のバス遠足で地元の奈良から来た記憶はあるが、記念写真の他には何ひとつ思い出せないし、35年も前のことなのでほぼ初めての大阪城と言っても過言ではない。

「稼ぐ公園」化された大阪城公園は家族

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P.V.L.日記 父子入院27日目 温水

P.V.L.日記 父子入院27日目 温水

5月28日(土)
朝からご満悦である。親しくさせてもらっている同じPVLの子どもを持つご家族から退院祝いにプラレールの贈り物。息子がサンダーバードと交換して、1週間前からお借りしていた成田エクスプレスを新車で頂いた。嬉しいよね。ありがとうございます。

するとこうなる。炎天下に公園に直行。フリースペースが閉鎖中だから仕方ない。お部屋で音も出せずずっと我慢の連続だったから今日くらいは許そう。ただ、汚

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P.V.L.日記 父子入院26日目 装具

P.V.L.日記 父子入院26日目 装具

5月27日(金)

人が歩くという動作は実に繊細なものである。インソールを入れて踵の接地面を増やしただけで姿勢が安定し、てくてくと進む歩数が増した。息子は歩きやすさを覚えたのか、トイレで全裸になって用を足した後に脱走。ナースセンターの看護師さんに手を振り、お尻も左右に振りながら器用に病室に戻っていった。きっと見て欲しかったのだろう。

歩行装具にはいくつか種類がある。股間から踵までを補助する長下肢

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P.V.L.日記 父子入院25日目 心理

P.V.L.日記 父子入院25日目 心理

5月26日(木)
「おれは、おれや」。発達の段階を評価する心理診の質問項目に「あなたは男の子ですか、女の子ですか」という問いかけがある。その質問の意図とジェンダー的な二択の問題はここでは関係がないようだが、息子の返答が「おれはおれや」である。男の子は青、女の子はピンクに代表される文化的な刷り込みをしないように3歳まで育てて来た。「おれ」という言い回しは最近幼稚園の友達から覚えた流行語で、男という意

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P.V.L.日記 父子入院24日目 評価

P.V.L.日記 父子入院24日目 評価

5月25日(水)
息子の機嫌を損ねてしまったせいで、大事なカンファレンスの会話が全く頭に入ってこない。今後の治療とリハビリの方向性を考えるカンファレンスには医師、OT、PTが複数同席して動画撮影をしながら行う。親も含めてそれぞれがここまでのリハビリ入院での経過と評価を出し合い、これからの息子との向き合い方を検討する。

感染対策のため病棟のフリースペースが閉鎖になり、息子の遊びたい気持ちは連日高ま

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P.V.L.日記 父子入院23日目 明暗

P.V.L.日記 父子入院23日目 明暗

5月24日(火)

朝6時の病室にぶちまけられた牛乳の海。床に漂流する筏のような食パンの残骸。打ち上げられた流木のようなバナナ。午前中のITBトライアルの準備で通常の配膳時間より30分も前に息子の飲食を終わらせる必要があった。まだ寝ている人もいるため、息子と共に別の病室で朝食を摂る。その結果がこれである。牛乳の海は広いな大きいな、行ってみたいなよその部屋。

途中まで機嫌良く食べていたにも関わらず

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P.V.L.日記 父子入院22日目 前夜

P.V.L.日記 父子入院22日目 前夜

5月23日(月)

まるで実家に帰ってきたようだ。1週間ぶりに病室に戻り妻と交代。妻の整理で幾分景色が変わったとはいえ、2週間も過ごした病室はどこか懐かしい。明日はいよいITBトライアル(バクロフェン髄注療法)を受ける。病室は7時が起床時間だが明日は他の方より早く朝食を摂り7時までに食べ終えて水も控える。点滴で麻酔をかけ小一時間眠りについているときに髄注によりバクロフェンを投与。

これにより一時

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P.V.L.日記 父子入院20〜21日目 審査

P.V.L.日記 父子入院20〜21日目 審査

5月21日(土)

再びリハビリ入院である。11時過ぎに妻子は自宅を出て午後には無事再入院。さっそく2回のPTをこなしていたようだ。朝5時に起きてきた息子とホットケーキミックスを焼いて朝ご飯をつくる。昨日の夕方に作るはずが息子が早くに就寝してしまったので保留にしていたのを覚えていたようで、起きてくるなり第一声が「レッツクッキングや」とやる気であった。離れがたいようで自宅を出るのをぐずっていたが、も

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P.V.L.日記 父子入院17〜19日目 自宅

P.V.L.日記 父子入院17〜19日目 自宅

5月18日(水)
病院の臨時対応策により月曜に交代したばかりの妻と息子が夕方に一時帰宅。17日ぶりに3人で食事する。

昨年も5月も入院中だったため、子どもの日は2年連続で病院の中だった。今年は想定外の一時帰宅により島根の義母から頂いた鎧兜を見せてあげることができた。病院ではネットプリントで印刷したものを貼っていたので実物を見せることができてよかったと思う。立派な兜。

連日のリハビリと施術のおか

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P.V.L.日記 父子入院16日目 待機

P.V.L.日記 父子入院16日目 待機

5月17日(火)

私は2週間ぶりに自宅で目覚めた。さすがに疲れていたのかソファで寝落ちしていた。昨晩、何を思ったかAmazon Primeで映画「シャイニング」を観始めて途中で寝てしまい、夜中に悪夢にうなされ叫びながら飛び起きた。劇中でジャック・ニコルソンが悪夢を観て叫びながら目覚めたシーンと全く同じである。こちらのほうが映画の本編よりも怖いし、後味が悪い。観る映画の選択を間違えたようだ。たとえ

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P.V.L.日記 父子入院15日目 手術

P.V.L.日記 父子入院15日目 手術

5月16日(月)

2週間の父子入院期間が終了。お部屋を移動して1週間の母子入院期間に入る。その後再び1週間の父子入院期間で終了である。慣れた自宅を離れて1ヶ月。息子もよく頑張っている。昨日の夕方に両親がそろって足りない物を買い出しに行くと安心したのか食事を取る前にぐっすり寝入っていた。今日からは母子部屋で4家族と相部屋。少し環境が変わるが大丈夫だろうか。約四畳半の自分のスペースの作り込み方も夫婦

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P.V.L日記 父子入院14日目 憩い

P.V.L日記 父子入院14日目 憩い

5月15日(日)

明日で一旦は妻と介助入院を交代する。1週間後にはまた私と交代するのであるが、このような入れ替わりは少なく、ほとんどが母子入院である。お部屋も移動するので自分の分の着替えや荷物などをまとめる。この2週間は太りすぎた体を何とかするために、自分の食事は配膳を注文せずに、おからクッキーとサラダチキンとチーズとブラック珈琲だけを摂る毎日だった。たまに食べるものは息子が残した野菜類。錯覚の

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P.V.L日記 父子入院13日目 再会

P.V.L日記 父子入院13日目 再会

2週間を同室で過ごしたお友達が今日退院した。最初は父子部屋は3組と聞いていたが、キャンセルがあったため2家族となった。偶然にも同じ市内の方で今後も交流できるのは嬉しい。親子入院は集中的にリハビリや心理診、生活の様子、装具や福祉器具の訓練と制作等を総合的にみてもらえ、出来れば毎年お願いしたいが父子入院となると同時期に希望する父子がいないことには調整が難しい。次回はお互いに調整できタイミングが重なれば

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