訪問介護士 ふく

私は訪問介護士です。 5年務めて関わった利用者さん全て、私の宝物で私の心にいつもいます…

訪問介護士 ふく

私は訪問介護士です。 5年務めて関わった利用者さん全て、私の宝物で私の心にいつもいます。利用者さんとの関わりで自分が変わりました。少しずつ伝えます。 いつか、まとめて本にしてみたいとゆう夢があります。 登場している名前は仮名ですが全て実話です。

最近の記事

狩野さん 最期の排泄介助part20

朝、社長の電話で目が覚めた。 嫌な予感がして電話をとると狩野さんが亡くなったと悲しいお知らせだった。 これから朝の排泄介助に行くところだったので、とりあえず狩野さんの家に訪問した。 二階から長男さんが泣きながら降りてきた。 「おはようございます。回復するように祈ってたけど・・・」 そう長男さんに伝えると「だめだった」と。 部屋に入ると眠っているように横になっている狩野さん。隣には次男さん。次男さん「一晩中、下あご呼吸していた。苦しそうな呼吸していて朝ゆっくり呼吸して止まった」

    • 狩野さん 危篤 part18

      夕方の支援に後輩と二人で訪問した。 朝に比べて顔色良く、肩呼吸もなくなっていた。 息子さんが、スポンジブラシに水を含ませて口の中に入れると 少し飲んでいるようだった。まだ飲みたそうに口を動かしておられたので 座位にし、エンシュア50CC飲まれた。 息子さんが「スイカ食べれるかな?」と食べさせてあげたいようだったが 「今はやめておいたほうがいいかもしれませんね、もう少し体調が戻ってからのほうがいいと思いますよ」と伝えた。 少し時間をおいてから排泄介助をした。少し左腕の痛みの訴え

      • 狩野さん 急変 part17

        それは足浴の17日から5日たった23日の夕方のことだった。 朝と夕の支援に入ってたヘルパーが、夕方に事務所に来てこう言った。 「狩野さん、朝から血圧が低いの。元気がないんよ。昨日の朝から何も食べてないみたいだし」 「えっ?!」聞いた私は思わず椅子から立ってしまった。 「狩野さん大丈夫なんですか??」と聞くと 「分からない。これから看護師さんがくるみたいだけど」と報告を聞いた。 本日、朝から事務作業をしていたから朝に報告を聞いていれば駆け付けたのに。 私が行っても何もすることは

        • 狩野さんの足浴 part16

          10月になるころから、寒くなるからと家での入浴を拒否されるようになった。全清拭、全更衣し、元気な日は合わせて足浴を介助した。 以前のように楽しく会話することが少なくなってきたような気がするなと思ったけど、また元気になれば戻ってくるかなと思っていた。 12月17日、少し元気な様子だったので全清拭の後に足浴した。 その時、しばらくするとふわーーーって表情が変わった。 言葉は悪いかもしれないけど、天使が降りてきたような うまく言葉に表せないけどとっても柔らかい表情になった。3年半、

        狩野さん 最期の排泄介助part20

          狩野さん 98回目の誕生日part15

          9月に入り、今月狩野さん98回目の誕生日が近づいてきた。 元気がある日もあれば、全く話さない日もあったがそんな大きな変わりもなく元気に過ごしていた。 デイサービスさんから綺麗な花の鉢が届き、大事そうに仏壇に飾っていた。 何かを誕生日にするって取り組みは私の事業所にはない。 だけど、何かをしてあげたいと無性に思って誕生日カードを作った。 誕生日の日は私は休みだったので、後輩に渡しておいてと託した。 後輩から「みんな喜んでましたよ」とメールが届いた。 次の日、訪問し狩野さんにおめ

          狩野さん 98回目の誕生日part15

          狩野さん 母と30年ぶりの再会part14

          社長、息子さんにも確認を取り、母と時間を合わせて狩野さんに会いに行っくことになった。 訪問する前に、狩野さんに何がいいかなと言いながら二人で買い物しプリンとリンゴを買った。 母と訪問した時に 狩野さん今排便が出て事務所に電話したところだという。 てきぱきと排泄介助をし、母と狩野さん30年ぶりの再会となった。 母「わーー!狩野さん久しぶりです!また会えてうれしいです」 狩野さん「すみませんな、私なんにも覚えていなくて」 母「いや、いいんです。30年前で覚えていなくて当然だから。

          狩野さん 母と30年ぶりの再会part14

          狩野さん 話し合い part13

          先日のまい子さんとの再会の話を母に話した。 本人さん、息子さんたちに確認をとり、快くいいよといってくださった。 私の母は、まいこさん、狩野さんのことをいつも心配していた。施設で関わりがあったからこそ、いつも会いたがっており今回、まいこさんと再会した話をしたら私も狩野さんに会いたいと母が言った。 さっそく次の訪問の時にまい子さんに話をした。 私「私のお母さんが狩野さんを見ると喜ぶのよ」 狩野さん「え??」 私「私のお母さんが狩野さんを見ると嬉しがるだ」 狩野さん「嬉しがる??ま

          狩野さん 話し合い part13

          狩野さん 感動の再会 part12

          狩野さんとまい子さん、ずっと握手したままお話をしていた。 狩野さんのまい子さんに対する言葉一つ一つが、とっても愛情いっぱいだった。 狩野さんが、まい子さんにゆっくりと話しかけた。 「どうしようかと思っていたけど、まいちゃんのその笑顔をみて、また元気を出して頑張ってな。風邪ひかんようにな。先生の言うことを聞いて、かわいがってもらいないよ。母ちゃんも祈っとるからね。ええ子してね。 母ちゃんもまいちゃんの顔を見に来たのは一番の嬉しいこと。元気でね。先生やみんなと仲良くしてね、可愛が

          狩野さん 感動の再会 part12

          狩野さん 感動の再会 part11

          施設に到着し、車いすをお借りして、狩野さんに座っていただいた。 そして、施設の中に入り、お部屋を案内してもらった。 コロナウイルスの関係で、居室ではなく会議室だった。 狩野さん、息子さん二人、私の四人でまい子さんを待った。 しばらくすると、ドアが開いてまい子さんが入ってこられた。 そして、狩野さんに「お母さん、会いたかった」と話しかけられた。 すると、狩野さん 嬉しそうに 「まいちゃん!!長いこと会わなんだなあ」と握手した。 「温かい手をしとるわ」とまい子さんと握手した手を自

          狩野さん 感動の再会 part11

          狩野さんの想いをのせて part10

          10月18日、まい子さんに会いに行く当日、私は狩野さんの家に向かった。 狩野さんに挨拶をすると返事がない。 とりあえず、パンツ交換させてねと、排泄介助をした。 そのあと、座位になりお茶を飲んでいただいた。 なんでだろう、本当に話さないな。 「どうしました?体調悪い?」と声をかけても無反応。 次男さんが横で「こたつ出したら話さなくなった」と話す。 「えー!まじか(笑)」と笑った。 とりあえず、途中にトイレに行きたくなるかもしれないからリハビリパンツの代わりだけ準備した。 狩野さ

          狩野さんの想いをのせて part10

          狩野さんの告白 part9

          狩野さんの支援に入り始めて2年半がたった。 本日もいつものように排泄介助を行った。 腰を上手に浮かせて介助しやすい体制を作ってくれる。 本当に気遣いができる方だ。 排泄介助が終わり、座位になってエンシュアを飲まれた。 すると、狩野さんが私の目をしっかり見てこう言った。 「ずっと言わんようにしようと思っていたけど、やっぱり言いたいことがある。あのな、私、まい子に会いたいの。どんなにおいしいご飯よりも・・どんなうまい飯よりもな、まい子に会いたい」 え・・・ちょっと待って。 言

          狩野さんの告白 part9

          狩野さんの入浴part8

          狩野さんの支援を始めて半年が過ぎたころ、自宅で入浴できないだろうかと事務員さんより話があった。 「二人介助でなら大丈夫ではないでしょうか、座位もとれるし、一人が見守って一人が介助したら洗えると思います。ただ、移動は二人介助で抱える形になると思いますが。」と伝えると 社長が「ふくさん、体が大きいからあの通路通れないかもね」と笑う。 いくら大きくても通れるわと心でつぶやく。 私と村田さんの二人で入浴介助することになった。 村田さんは先輩で、身体介護の大先輩。 頼りになる先輩で口

          狩野さんの入浴part8

          狩野さんの回復 part7

          初めてちゃんとした会話が出来てから、すぐ社長に報告した。 「そんなことってあるんだろうか」とびっくりしている社長。 「本当なんです!ちゃんと私の目を見てしっかりお話しされたんですよ」と嬉しい報告をした。 そして一番嬉しそうなのは息子さん二人だった。 「おかあちゃん、これ飲む?」 「相撲見る?」と積極的に声をかけられるようになった。 不安定な気持ちの時は表情険しく大声で叫ぶこともあったが それ以上に笑顔で「いつもすみませんな。ありがとうございます」と話してくれる日のほうが多く

          狩野さんの回復 part7

          狩野さんの拒否 part6

          梅雨の時期になり、狩野さんの訪問に入り始めて4か月がたった。 少しずつ口から食事がとれるようになった。 食事と言っても、ゼリーや果物、飲み物のエンシュアリキッドなど。 ちょうど、北海道の友達でエンシュアリキッド飲んでいる人がいて エンシュアリキッドのメロン味を届けてくれたので、狩野さんに飲んでもらった。 「うまいなあ」と少し笑った。 時々、機嫌が悪い時があり 排泄介助の声掛けに「いや!!やめて!!警察さーん」と大声で叫び、強くズボンを握ることがあった。 隣に聞こえるのではな

          狩野さんの拒否 part6

          狩野さんと会話する part5

          狩野さんの排泄介助にはヘルパー5人で交互に訪問している。 その中でも私が一番多く訪問している。 他のヘルパーさんは家庭があり、予定があって時間が決められているが 私には家族はないので、基本いつでも動くことができる。 家族の兄弟さんともすっかり仲良しになり、長男さんは特によく話しかけてくれる。 きっと、今まで狩野さんとずっと話していたんだろうな。 狩野さんが話が出来なくなって寂しいんだろうなと感じている。 そして狩野さんの排泄介助を行う。 いつも通りに声をかけながら介助し、少

          狩野さんと会話する part5

          狩野さんとの再会 part4

          障がい者施設で働いていたときにまい子さんと出会った。 統合失調症と知的障がいがあるまい子さん。不安定な気持ちになった時は 「お母さーん」と大声で叫びドアを蹴ることがあった。 ちょっとまってね、お母さんに電話してみよう!と声をかけてたびたび電話していた。お母さんの声を聴くと安心するようで電話の後はにっこりいい笑顔をされる。その笑顔が本当に可愛い。 日曜日になるとお母さんがバス、長男さんの送迎付きで面会に来てくれた。 ドアを開けて「きたよー」っていい笑顔で入ってきてくれる。 その

          狩野さんとの再会 part4