狩野さんの回復 part7

初めてちゃんとした会話が出来てから、すぐ社長に報告した。
「そんなことってあるんだろうか」とびっくりしている社長。
「本当なんです!ちゃんと私の目を見てしっかりお話しされたんですよ」と嬉しい報告をした。

そして一番嬉しそうなのは息子さん二人だった。
「おかあちゃん、これ飲む?」
「相撲見る?」と積極的に声をかけられるようになった。
不安定な気持ちの時は表情険しく大声で叫ぶこともあったが
それ以上に笑顔で「いつもすみませんな。ありがとうございます」と話してくれる日のほうが多くなった。排泄介助のあとに、座位でよくお話ししてくれるようになった。私だけではなく、ほかのヘルパーさんにも話をされてみんなで喜んだ。

狩野さんは、排泄介助の時にすっと腰を浮かせてくれたり、横にしっかり向いてくれるのでとっても介助がしやすい。
特に痛みの訴えもなく排泄介助はやりやすい。
介助中に、息子さんがたくさん話しかけてこられる。
きっといつも3人だから、ヘルパーと話をするのが新鮮で嬉しいのだろう。
息子さんも気さくで話しやすくて、とても優しい。
やっぱり狩野さんの息子さんだなっていつも思う。

長男さんが、みそ汁の作り方を聞いてこられたので、簡単に作り方を伝えた。ほかのヘルパーさんからも作り方を聞いて、
「みて、今日は豆腐の味噌汁作った」と声かけてこられた。
「すごいじゃない」というと
「お母さんにも食べてもらったよ」と長男さんが嬉しそうに話された。
「狩野さんよかったね」と声かけると
「息子が、私に食べさせようと思って作ってくれるのよ。嫌な顔せずに作ってくれるから私は嬉しいんです」とにっこり笑顔で話された。
次男さん、長男さんで交代しながらゆっくり家で過ごしておられる。
この日常がもっともっと長く続けばいいな。



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