狩野さん 感動の再会 part11

施設に到着し、車いすをお借りして、狩野さんに座っていただいた。
そして、施設の中に入り、お部屋を案内してもらった。
コロナウイルスの関係で、居室ではなく会議室だった。
狩野さん、息子さん二人、私の四人でまい子さんを待った。
しばらくすると、ドアが開いてまい子さんが入ってこられた。
そして、狩野さんに「お母さん、会いたかった」と話しかけられた。
すると、狩野さん 嬉しそうに
「まいちゃん!!長いこと会わなんだなあ」と握手した。
「温かい手をしとるわ」とまい子さんと握手した手を自分のほっぺにあてている。
今日一言も話さなかった狩野さん、まい子さんと再会してからは今まで感じていた気持ちを全部言葉にして伝えていた。
「今までずっと来たかったんだけど、ちょっとえらかったから来れなかった。
今日は連れてきてくれたの、お兄さんやあの人(私)に。
(←息子さんや私を指さしながら紹介してくれた)
まいちゃんに会いたくて来たの。お母さん、まいちゃんの顔が見たかった。まいちゃんの声がずっと頭に残っていた」
とまい子さんの手を握りながら話す狩野さん。
まい子さんが私を指さし「ふくさん」とにっこり笑う。
施設やめてから15年たったのに名前を憶えてくれていた。
「わかる?」を声かけると
「わかるで、優しかった」と。

まい子さんが狩野さんに「歩けないの?」と声をかけると
うんとうなずく狩野さん。
息子さんがハンカチを渡そうとすると狩野さんが気づいて、ハンカチを手渡しで渡された。
とっさに出た行動にびっくりした。本当にあの頃のお母さんそのままだった。今までの介護させてもらった二年半は一体何だったのだろうと思ってしまうくらいだった。
隣で狩野さんの声掛けを聞きながら、泣きそうになるのをこらえながら
私がビデオを撮影した。
そして、それから狩野さんのまい子さんへの言葉に何度も胸を打たれた。

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