ソムリエによる紹興酒ペアリングの会に参加して学んだこと・痛感したこと。
干杯!donです。
さて昨日の昼、「紹興酒を楽しむ会」に参加してきました。
主催は紹興酒最大手メーカー「古越龍山」東京支部の方々。
オープンな会ではなかったのですが来賓の方々が豪華!発酵の大先生である小泉武夫さんや、世界的にも著名な建築家である隈研吾さん、ソムリエ協会副会長の君嶋さんなどなど。紹興酒テキスト制作に絡ませて頂いてるご縁もあって、お知らせ頂きました。
こうした著名な方々が紹興酒を後押してくださることは非常に大きな力になるなぁと、末席におりながら染み染みしつつ、紹興酒をちびちび。
個人的に一番楽しみだったのが、ソムリエさんによる紹興酒ペアリング。僕自身、お店でペアリングは毎日のように考えてお出ししていますが、他の方の紹興酒ペアリングで食事するのは初めて。しかも、ワインのプロであるソムリエさんがどのような考えをもってお酒選びをするのか、興味津々!
紹興酒のラインナップは、主催が古越龍山だけあって同銘柄のものが中心。日本でも身近な古越龍山8年・10年、去年発売されたノンカラメル紹興酒「純龍」や甕の上澄みだけを抽出してブレンドされた「澄龍」など。
個人的に楽しみだったのが、「国醸」。こちらは日本未流通酒で、同メーカーの中央倉庫に保管された極上の原酒を厳選し、ブレンドして造られた一級品です。年数は20年物。
あとは、紹興産の上質な糯米を原料として、ノンカラメル・ノンブレンドの「夏之酒」をどのようにペアリングするのか。ワクワク!
前菜の盛り合わせっていろいろな食材や味付けの料理が盛られているのでペアリングが非常に難しいです。僕もお店で一つの酒で全ての料理に合わせるって無理なんじゃないの!って放り投げたくなる。
・・・と書いていて思ったのですが、ペアリングは酒に料理を合わせるから、可能なのか。思えば「最初の紹興酒純龍はレモンのような軽やかな酸味、貝の風味を感じたのでそれに合わせて料理の食材や味付けをチョイスしました」みたいな話をされていました。僕もまだまだ未熟です。
古越龍山の純龍はノンカラメルの紹興酒で、味はかなりドライですっきり。白菜の甘酢漬けなどは、ドライな風味に酸味が溶け込むようないい混じり合い。美味しくいただきました!
(早速紹興酒の写真を撮っていない・・・。)
と、こんな感じでひとつひとつ感想が書けたらいいのですが、非常に残念なことに末席にいたせいかソムリエさんの声がよく聞き取れず・・・周りの席の方とも「これってなんだっけ?」「このソース、何に使うの?」など話しながら楽しむ結果に・・・。
なので、全体を通して感じたことをまとめます。
ソムリエによる紹興酒ペアリングの感想
全体を通して面白いなと思ったのは、紹興酒の酸味と柑橘系の酸味を合わせるという試みです。
紹興酒の酸味って独特で、成分としては主に乳酸がメイン(これはまた後ほど触れたい)。ワインはクエン酸やリンゴ酸なので全く異なります。酸を柑橘系の酸味と結びつけようというのはワインらしいアプローチで面白いなと思いました。実際、料理にゆずやオレンジピールなど柑橘系の風味を持たせているものがちらほらありました。
ここからさらにさらに楽しむためには、紹興酒の乳酸系な酸味とワインの柑橘系な風味を結びつける工夫があったらもっと面白くなりそう。例えば、紹興酒はレモンのスライスを入れて飲んだりしますが、このようにクエン酸などフルーツ系の果汁を1滴2滴、紹興酒に垂らす、など。料理を味付けするように、お酒も味付けすることによってお互いがより手を取り合うかもしれません。
というのはまた次の段階で、今は紹興酒自体の味わいでペアリングしていくっていうこと自体が先進的だし固めていくべき土台の部分でもあります。非常に勉強になりましたし、いい機会となりました。謝謝!
紹興酒における酸味の正体とザラメの話
ご来賓の方々の挨拶もある中で、小泉先生のお話もお聞きすることができました。なんという貴重な場!小泉さんの本は、白酒のことを調べているときに知って、日本でこんなにも白酒について詳しい方がいるのか!ととても嬉しくなったのを覚えています。
話の中で、2つ印象に残っているものがあります。
一つは、紹興酒の酸味の話。
僕は今まで読んできたいろいろな文献の中で、紹興酒の酸味成分は主に「乳酸」だと学んでいました。でも、小泉先生の話だと「紹興酒の酸味はフマル酸」だということ。
フマル酸って、なんだ!?
僕は化学に詳しいわけではないので、また新たな成分が飛び出してきたぞ、と嬉しいような悲しいような(笑)
ググるとこのような回答が。
コハク酸の酸化。確かに紹興酒はコハク酸も強い。日本酒のスクールでコハク酸の香りを嗅いだときは「紹興酒だ!」と即座に思ったほど。
またひとつ、紹興酒の謎が生まれて、これが紹興酒への理解を深めることに繋がります。すぐにこの謎について答えを明確にするというよりは、今紹興酒テキストを制作しているのでその中で調査・模索して結論づけていければいいなと思っています。これも貴重な学び、きっかけ。
もう一つは、ザラメ紹興酒について。
紹興酒を燗にしてザラメを入れる飲み方は、日本に根付いています。僕も自分のWEBにまとめています。
いつからどうやってこの飲み方が生まれたのか?謎でしたが、それが小泉先生の口から明確に語られていました。
始まりは大正8年。当時、ザラメ(塊の砂糖)は高価なもので、食せることがひとつのステータスとなるような時代があったそうです。
そんな中、紹興酒のあの独特な酸味を感じた方(どなたかお話されていたのですが忘れてしまったゴメンナサイ)が、「ザラメを入れて」と言ったのが始まりとのこと。
聞いたことのある説ではありますが、年数が明確なのと、ザラメを使うのが一種の社会的なステータスになる、というあたりが新しい情報です。
なるほどー!と思いながら聞いていましたが、小泉先生はさらに「紹興酒の酸味こそが魅力なのにザラメを入れるなんて間違っている!」と強くおっしゃられておりました。
僕は自分では入れないのですが「好きなら入れてもいいんじゃない?」派なので「ええ!ごめんなさい!!!」と肩身を狭くしながら聞いていました・・・。
まぁこのあたりはいろいろな意見があっていいんじゃないでしょうか。紹興酒が他の酒に比べてさまざまな飲み方で楽しまれているっていうこと自体が個性だと僕は思っています。
紹興酒ペアリング会に参加して改めて感じたこと
とっても楽しく有意義な会でした。満足。そして、改めて強く感じたことがあります。
ペアリング面白いなぁと思いながら、自分ならどうするかなぁということも考えていました。
この料理、即墨老酒清爽型も合いそうだなぁ。
朱鷺黒米酒もいいぞきっと!
最後は客家黒姜、かなぁ。
そう、僕はやはり黄酒全体で見てしまう。バリエーション豊富な香りと味わい、色も含めてよりダイナミックに楽しめるんじゃないかなと思いながら。
そしてこんな上品でフォーマルな場所は僕には作れないなと(笑)
ワイワイガヤガヤ!
干杯!
おいしー!
たのしー!
そういう雰囲気が自分に合ってるなと。前からわかっていましたが、より明確に浮き彫りになりました。もちろん、こういった場を作れる方を僕は尊敬します。自分にはできないことだから。
自分なりにできることをやっていこう、と改めて痛感した次第です。そんな思いを胸に、お店の営業へと向かったのでした。
主に中国酒にまつわる活動に充てさせていただきます。具体的には中国酒関連のイベント開催費や中国酒の研究費、現地への旅費、YouTubeの制作費用などです。お力添えを頂けたら嬉しいです!干杯!