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小説|晩産のたしなみ。

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いわゆる晩婚、もしかしたら「晩産」に至れるかもしれない40代のリアルデイズ……。いちコピーライターとして初めて書き残したくなった自分ごとは、苦節9年、不妊治療の行末でした。普通の…
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DAY15.  昼下がりの虚実 

DAY15.  昼下がりの虚実 

 17キロ弱。今度年中さんになるらしい姪っ子と同じくらいの重みを湛えた彼女は、長い毛並みに包まれたふかふかの体を揺らして、これ見よがしにぶんぶんとしっぽを振っている。

 その黒目がちな瞳には、一切の迷いや疑う心も影を潜めない。まっすぐにこちらを見上げる誇らしげな顔が、2階へついてこいと言っていた。

「んんん? どしたー??」

 目的はわかっている。私は彼女の視線に屈してようやく重い腰を上げ、

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DAY13. たぶん、残念な家事分担

DAY13. たぶん、残念な家事分担

 心も体も健康でエネルギーに満ちあふれているときじゃないと、悲劇なんて書けないものだ。ある人にそう言われたことがある。

 逆に、人はつらいときにこそ喜劇を書くんじゃないか。そのとき彼女はそう続けたけれど、わかったような、わからないような。でも最近になって、ようやくその意味がわかった気もしている。

 表層に出てくる言動とその奥底にくすぶっているもの、それが時々まったく違って、ちぐはぐなのも、どこ

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DAY12.  犬猫のぬくもり

DAY12.  犬猫のぬくもり

 わが家には、猫と犬がいる。男女を女男とは言わないみたいに、犬猫を猫犬と言うと変な気がするのは、やっぱり犬のほうが人間界に根づいた相棒として第一党的なイメージがあるからだろうか。うちの場合は、猫が先住民だ。犬はあとからやってきた。

「犬が飼えるような大人になりたいって、昔から思ってたんだ」

 夫は私の夫になる前、よくそんなことを言っていた。

「自分の子どもは、双子なんじゃないかって気がする」

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