記事一覧
魂は人間界での仕事を終えると、あの世で再会する
出張先から帰る折り、ふと聡は夜行列車に乗ってみたくなった。
今時、夜行列車なんかあるわけないのに。
ところが、それがあったのだ。
夜8時、雪の降りしきるホームから走り始めた列車は、10時の消灯を境に、社内アナウンスも乗客たちの話し声も静まって行く。たくさんの人が乗車しているはずなのに、自分一人の為に、この列車が走っているのではないか。そんな孤独感が聡の心に広がった。深夜、何時頃だったのだろう。12
結婚は精神を鍛える最高の道場だ
売れっ子作曲家だったSは、猛烈な勢いでヒット曲を次々生み出して行った。
彼の活躍はめざましく、彼の才能に憧憬の念を抱く音楽家の玉子たちは少なく
なかった。そんなSにあやかりたいと、毎日のように、Sの弟子になりたいと
懇願してくる人が後を絶たなかった。でも、Sは、
「私の弟子になっても、ヒット曲は作れませんよ」
と言って断っていた。そんなSに興味を持ったマスコミ関係者も当然、少なく
なかった。週刊J
地球から戦争を消滅させるだけで、人類は300年進化する。
ある星の宇宙船ターミナルでは、初老の夫婦が娘リカの旅立ちを見送りに来て
いた。地球より数百年進んだこの星では、一人前になると地球に冒険旅行に出
かけることになっていた。見た目は地球人と何ら変わらないこの星の若者は、
地球で、さまざまな出来事を間近に見て貴重な経験を積み、1年後に帰還し、
それぞれの道に進む。
「あなた、リカ、大丈夫かしら。地球では、相変わらず戦争が行われているそ
うだし」
リカの母
西暦2100年の社員研修
2100年ちょっと過ぎ、科学は飛躍的に進歩したようである。たとえば、大
人の為のリアリティーゲームなどは必見である。誰もが一度は聞いたことのあ
る忠臣蔵に出演できるのである。しかも、実際に江戸時代にタイムマシーンに
乗ったかのようにワープ体験できるのである。だから、社員研修などに、この
ゲームを使う会社まで現れた。もちろん、社員に忠誠心を抱かせるためである。
某社の新入社員である翔太郎も、このゲー
すべての人間の後ろには宇宙を作ったスゴイ神様がついている
美保子は、社員が10人ほどの小さな会社に勤めるOLだ。
なかなか就職が決まらなくて、やっと採用してもらったの
が、この会社だ。
「採用が決まった時は天にも昇る気持ちだったんだけど…」
大きな会社が、次々に倒産している。来年は、もっともっと景気が悪いらしい。大きな会社が危ないのだから、
この会社なんて、どうなるか分からない。そう思うと、美保子は不安で一杯な
のだ。
そんなある日、美保子たちは、居酒屋
世界一大きなクリスマスツリー
もうすぐクリスマスというのに古い教会に住む少女マーヤは
シクシク泣いていました。マーヤを育ててくれた神父様が
天国に召されてしまったのです。マーヤにはお父さんもお母さんも
いませんでした。
あれは15年前のシンシンと雪の降り積もる夜でした。
その日は、国中が湧いていました。それもそのはず、
国王陛下に女のお子様が誕生したのでした。
そんな世間の騒ぎとは無縁な古びた教会を守る孤独な
神父様が夜のお祈
2025年の京都の休日、御所で出会った彼女はオードリーヘップバーンそっくりだった。
2025年の京都の休日、御所で出会った彼女はオードリーヘップバーンそっくりだった。
京都御所の雰囲気は、2025年になっても、そうは変わっていないだろう。
大学院生の一朗は、やっと書きおわった論文の疲れを癒すため、御所を散歩し
ていた。
かなり悶々としていた彼は、
「こんな時、可愛い彼女がいてくれたらなあ」
と呟いていたかもしれない。
そんな一朗に、
「彼女になってあげてもいいわ。でも、本日限り
娘の名前を夫が寝言でつぶやいた別れた恋人の名前にした偉大な妻
今朝、5時に鳴った電話のせいで床屋に行く気になった。男である隆介が、急いで駆けつける必要はないのだ。それと、少しだけれど照れもある。第一子誕生。どうやら娘のようだ。きれいに調髪した頭で、隆介は妻の真由子が入院する。いや、まだ名無しの姫も入院する産婦人科に駆けつけた。
真由子の部屋は3階で、途中の2階に新生児室がある。
「はじめまして」
隆介は、一足早く、我が娘に対面した。スヤスヤと気持ち良さそうに