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地球から戦争を消滅させるだけで、人類は300年進化する。

ある星の宇宙船ターミナルでは、初老の夫婦が娘リカの旅立ちを見送りに来て
いた。地球より数百年進んだこの星では、一人前になると地球に冒険旅行に出
かけることになっていた。見た目は地球人と何ら変わらないこの星の若者は、
地球で、さまざまな出来事を間近に見て貴重な経験を積み、1年後に帰還し、
それぞれの道に進む。
「あなた、リカ、大丈夫かしら。地球では、相変わらず戦争が行われているそ
うだし」
リカの母が心配するのも無理はない。リカの最初の地球での訪問地は長年に渡
り紛争が続いている地域なのだ。ところで、この星では、もう3百年以上、戦
争はない。
「大丈夫、万に一つも危険はないはずだ」
「それにしても、地球人は、いつまで戦争をするつもりかしら」
「それぞれの宗教、思想、信条は互いに認め合えないと思いつづける限りは、
当分、戦争をするだろうな。私たちの祖先が達成した1つのすごい目標を見つ
けるまでは、何万回も同じ失敗が繰り返されると思うしかないだろう」
この星では、すべての宗教や思想は、すべて一つの不思議な世界とつながって
いると考えられていた。そのことが分かった三百年前から、一切の戦争はなく
なった。それと同時に、貧困や悲惨な事件も、全く消滅していた。地球人から
見れば、まるで天国のような星だった。
さて、リサは、両親に見送られて、定刻通りに地球に旅立った。リサは地球時
間の約1時間ほどで地球に着いた。とは言っても、リサの身体は、地球近くの
宇宙空間に浮かぶ小さな宇宙船にあった。で、リサは地球上で意識のみを動か
して、さまざまな人類の行動を観察する。
もし、仮に、地球人がリサの意識と遭遇したとしたら、それは、ある人は、女
神と呼ぶかもしれないし、また、ある人は亡霊とか幽霊とか、さらに、おばけ、
と呼ぶかもしれない。

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