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2025年の京都の休日、御所で出会った彼女はオードリーヘップバーンそっくりだった。

2025年の京都の休日、御所で出会った彼女はオードリーヘップバーンそっくりだった。

京都御所の雰囲気は、2025年になっても、そうは変わっていないだろう。
大学院生の一朗は、やっと書きおわった論文の疲れを癒すため、御所を散歩し
ていた。
かなり悶々としていた彼は、
「こんな時、可愛い彼女がいてくれたらなあ」
と呟いていたかもしれない。
そんな一朗に、
「彼女になってあげてもいいわ。でも、本日限りよ」
と声をかける品の良い美人がいた。
「ええ、君、誰?あれえ、誰かに似てるなあ」
そうそう、彼女は女優のオードリーヘップバーンそっくりだった。
「いいから、いいから」
そんなわけで、一朗は、御所で知り合った女性と京都市内をデートした。
「ねえ、あの店、マクドナルドじゃ!!行ったことないの。連れてって」
「ええ、行ったことないの」
その女性は、不思議な子で、マクドナルドや牛丼やラーメンを生まれてから一
度も食べたことないらしく、
「世の中に、こんなに美味しいものがあるなんて」
と大きな目を、さらに大きくして食べていた。
一朗は、食事をしたり、いろいろ話している内に、彼女のことを気に入ってし
まった。同時にJ国の王女様ではないかと思うようになった。昨日のニュース
で、J国の王女が、京都に来ていることも、小耳に挟んだことも思い出した。
「ねえ、君、ひょっとして」
「ダメ、それ以上言わないで。私、会いたい人がいるの。いっしょに探してく
れる?この人」
「この人と君、どういう関係?」
彼女が見せた携帯端末には、地方の大学で講師をしている一朗の母のデータが
映っていた。一朗の母は、一朗が生まれる前からネット上で、人生相談をして
いたのだ。
「ずっと、この人に相談に乗ってもらってたの。私に自分に正直に生きなさい
って教えてくれた人」
彼女は、一朗の母と実際に会って話をしたくて、お付きの人に内緒で飛び出し
てきたのだ。
「もし、この人に会わせたら、俺と付き合ってくれる?」
「いいわ。でも、私と正式に付き合ったら結婚することになると思うわ」
「君のような美人と結婚できるなんて夢みたいだ。すぐに見つかるよ」
「ほんと」
「まあ、来いよ」
一朗は大喜びの彼女と一緒に、タクシーと電車を乗り継いで、彼の母がいるホ
テルに彼女を連れて行った。
フロントで一朗の母の名前を言うと、しばらくして、背の高い女性の客室係が、
二人を案内してくれた。一朗の母は、そのホテルの部屋を事務所かわりにして
仕事をしていたのだ。
「どうしたの?」
「うん、この人が会いたいって」
「どこかで、見た顔だな」
彼女は、大変恐縮して、一朗の母と話し始めた。彼女は、もちろん仮名で相談
していた。彼女は、周りの人が紹介してくれる男性を、どうしても好きになれ
なくて悩んでいたのだ。そんな彼女に自分に正直に生きなさいとインターネッ
ト上でアドバイスしていたのが、一朗の母だったのだ。
「で、私、理想の人見つけました。この人です」
彼女は、一朗を見た。一朗は驚いたが、すぐに
「母ちゃん、ええやろ」
その日が初対面の二人と聞いて、一朗の母は驚いた。
「もう少し、ゆっくり付き合ってみたら」
と勧める一朗の母に、
「先生は、私に、自分に正直に生きろとアドバイスしたではありませんか」
と言って聞く耳を持たなかった。
数日後、J国の王女と一朗が婚約したというニュースが世界を駆けめぐった。

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