肥料も島産で ~「ほとり」にしか作れない香川本鷹を~
島の唐辛子で、香川の伝統野菜でもある香川本鷹の本格的な栽培も今年で二年目。今年は昨年とは違い、島ならではの肥料や土壌改良材を投入しています。
①アマモ
アマモは、晩夏の台風一過で島の海岸に打ち上がる海藻です。藻場と呼ばれたりもします。その昔、沿岸地域やもちろんウチの島でも、このアマモが肥料として活用されていました。アマモを始め海藻肥料はカリウムが多く含まれ、たとえば作物の根張が良くなったりします。特に小規模農家によってこのアマモは重宝されていました。
しかし、戦後大農地かが進み、動物性肥料、そして何より化学肥料が一気に普及すると、このアマモは肥料業界から姿を消します。一時は、漁師がアマモを獲り、農家に売るなんてサイクルまであったそうですが。
私の暮らす島でも、畑にアマモを投入しているのは、家庭菜園を含めてもごくわずかです。
さて、このアマモは昨秋9月末ごろにえっちらおっちら海岸から畑に運びました。今指導してくれている農家のおじいさん曰く、アマモの他、アオサも肥料になるようです。
②雑草堆肥
こちらも昨秋にセイタカアワダチソウなどの雑草を粉砕し仕込んだもの。厳密にいうと、こちらは肥料と言うよりも土壌改良剤になります。なぜ秋に仕込むかと言うと、これまた島のおじいさん曰く、冬を乗り切る前に雑草たちが栄養分をその体にため込むからだそう。
効果をざっくりいうと、土がふかふかになったり、また肥料分は少ないとはいえ効き目がゆっくりなので、長く畑で効力を発揮します。
ちなみにこの堆肥作りについては以下でまとめています。
おじいさんは腐敗した魚を活用していますが、私は畑の土と米ぬかで発酵させるようにトライしてみました。
③竹パウダー
その名の通り島の竹を粉砕して作るもの。こちらもどちらかというと肥料と言うよりは土壌改良材に近いものです。効能としては、例えば竹に含まれる乳酸菌が肥料分解を促進させ、肥料投入量を減らすことができます。
こちらは地元NPOが少量のみですが生産してくれています。ただ高齢師だらけの島なので、これが長く使えるかと言われると・・・・うーんムズカシイ。
島産の肥料や土壌改良材を使う意味
もちろん外部で購入した有機肥料も使用しています。すべてを島産の資材で賄って、農を生業するのは現状は不可能です。商売ではなく、自家消費のためだけなら可能なのかもしれませんが。
といっても、できる限りは島で手に入る素材を使って栽培を続けていければと考えているのも事実です。それがいくら手間であっても。
その理由は食味が良くなるというのはもちろんですが、一番の狙いは「差別化」、そして「農法の伝承」にあります。
「農法の伝承」は、せっかく先人が開発し受け継いできた農法なのだから、それに私もトライしてみたいというとてもシンプルな話です。
ほとりにしか作れない「香川本鷹」を
差別化はもしかすると、一番大きな理由かもしれません。
まず①大規模農家との差別化。
今回紹介したような資材は、大規模農法ではシンプルに量が足りず、なかなか活用できないものです。であれば、逆に小規模農家だから使える資材を使ってみようをかなと。大規模農家と同じやり方では、絶対に勝ち目がないので。
そして何よりも②他の香川本鷹農家との差別化
実はと言うと、香川県内の各地で香川本鷹を栽培する農家が増えてきました。「伝統野菜の栽培」というと、どこかそれだけで珍しさがあるように思えますが、それを実践する農家が増えていけば、この点に大きな価値はなくなっていくことでしょう。つまり、「君だけじゃなくて、みんな香川本鷹育ててるじゃん」ということ。ともするときっといつかこう尋ねられるかもしれません。
無論、離島で作っているという事実はそれだけで差別化の理由になるのかもしれません。でも離島だろうが、本土だろうが同じような肥料や土壌改良材で作られている香川本鷹だと知ったとき、消費者の皆様はウチの香川本鷹を見て、どうお感じになるのでしょう?それぞれを区別して認識してくれるのだろうか?私がお客様なら「他と同じよね」と思ってしまうかもしれません。
であれば、離島で作っている香川本鷹ではなく、離島でしか作れない、もっといえば「離島ですらもうこんな手間のかかる方法ではやってない」を実践する農業を続けていくべきだと考えています。
そうすれば、「離島ですらもうこんな手間のかかる方法ではやってない」がいずれ「ほとり」にしか生産できない逸品になると考えています。
今年も本畝へ植え替えが終わりました。
ぜひ今後とも香川本鷹の成長をお見守りくださいませ。
★そんな島旅農園「ほとり」は香川県丸亀市の離島「さぬき広島」にあります
農家民宿ですので、ご宿泊も可能です
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