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掌編BL小説 深夜二時の攻防 (※R15※)
かつて全裸になって散歩をすることが日課になっていた俺だが、だからといってこんな扱いを望んでいたわけじゃない。
「ほら、このへんなら街灯もないし、大丈夫でしょ?」
昼間のうだるような暑さがいまだに残る真っ暗な公園を見渡して、サイトウが俺の背中を励ますようにポンポン叩いた。
「無理! ほんとそんなの無理だから! なんでこんなことしなくちゃいけないんだよ!」
「え? なんでって……」
ぶんぶんと
掌編小説『夏の魔物』(BL)
夏には魔物がいるらしい。
会ってしまえば最後。今までの自分とは全く別な人間にされてしまうという。そして魔物は夏の終わりとともに跡形もなく消える。
「――それって暑くて頭おかしくなるってこと?」
隣を歩く英に胡乱げに見下ろされて、僕は首を振った。
「違う、夏の魔物に会うと破滅するって話だよ! ……あれ、違うか。ええと」
空に掛かった半月を見上げながら、さっきサークルの飲み会で先輩から披露され
掌編小説『秘密』(BL)
――『川田直次郎中尉殿 昭和二十年七月二日沖縄喜屋武岬に於て壮烈な戦死をとぐ、謹んで哀悼の意を表す』
学校から帰ると、ちゃぶ台に一枚の紙が乗っていた。その側で母さんが背中を丸めてじっと畳の目を凝視していた。
「母さん。これ……」
「さっき、届いたんよ」
けたたましい蝉の声にかき消されそうなほど小さな声で母さんが呟いた。
「とうとう直次郎まで帰ってこんかったわ」
終戦から一年も経って、突然
BL系公募情報(備忘録)
大手出版社さんのBL系公募の情報をまとめた備忘録です。(2024/1/16現在)
・徳間書店 キャラ文庫小説大賞(第2回 2024/1/15 締め切り)
部門①ファンタジー部門
②センシティブ部門
400字詰め原稿用紙80~300枚程度
ひとり最大二作まで
プロ・アマ不問
過去応募したものの改稿作は選考対象外
Web発表作品は応募可(ただし非公開にする必要あり)
掌編小説『勘弁してくれ』
ぎしぎし軋む階段を降りると、白い割烹着姿で厨房に立っていた千佐が振り向いた。
「あれ、どうしたの拓巳」
「便所」
小さく呟いて厨房の横の珠のれんを右手でかき分けてくぐる。すると一斉に八個の目玉が俺を突き刺した。
L字型のカウンターに、今日の客は四人。サラリーマン二人組と最近常連になった赤ら顔のオヤジ、厚化粧のおばちゃんだ。
裏通りにひっそり佇む千佐の店は、十人座ればもう満席という小さな小料
短編『平行線のゆくえ』
じいちゃんが死んだ。立派なじいちゃんだった。
海辺の田舎町の小学校の校長を二十年以上勤め上げ、退職してからも教え子が野菜を持ってかわるがわる尋ねてくるような人だった。大きく開けた口で「わはは」と笑う、太陽みたいな人だった。その孫である私は、そんなじいちゃんの素晴らしさを何一つ受け継いでいない。
早朝のまぶしい光が車の窓から差し込み、小さなちりひとつひとつを金色に浮かび上がらせている。車の中に低