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谷田 一久 医療経営学者 鳥取県生まれ。一橋大卒。病院勤務から国立医療・病院管理研究所…

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谷田 一久 医療経営学者 鳥取県生まれ。一橋大卒。病院勤務から国立医療・病院管理研究所講師、広島国際大学助教授等を歴任し、日医総研研究員就任。(株)ホスピタルマネジメント研究所代表取締役。日本医療マネジメント学会理事、徳島大学医学部非常勤講師、坂出市立病院経営改善顧問等。

最近の記事

ヒント125 病院経営の好手(こうしゅ)と悪手(あくしゅ)

<2018年5月10日加筆修正>  長いあいだ病院経営に関わっていると、経営者やコンサルタントが繰り出す経営改善の一手に好手・悪手があることがみえるようになってくるものだ。一見、悪手のように見えて、数手先、数年先のことを想定した好手もあれば、目先の改善も定かではなく、しかも、数年先にはきっと問題化するだろうという悪手もある。  残念なことに、今の医療界は悪手が氾濫している。そればかりか、次から次へと新手の悪手が出現する。提案する側はその場限りの商売だが、受け入れる側はそう

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    • ヒント 経営指標のおはなし

      病院経営の場面で、患者数という指標はどこの病院でも業績評価の基本的指標として必須の扱いを受けている。患者数が増加していれば、"よくできました!"というプラス評価。患者数が減っていると"がんばりましょう"というマイナス評価。収支に問題があると、原因として取り上げられるのが患者数の減少。入院期間短縮による病床利用率の低下。結果としての述べ患者数の減少。売り上げの減少。という流れが一ふつうの理解のようである。それはその通りなのだが、説明になっていない。その病院を利用する患者が増えた

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      • ヒント 一流の効率化、下品な効率化

        公営企業たる公立病院は、公共性と経済性を発揮することが求められている。さらに、その経営活動については、公平性と透明性が求めらる。経営上の権限(責任)は、職制の中に細かく規定されているうえに、厳格な予算によって支出の管理が行われている。この厳重ともいえる権限の制御は、行政権力の行使について恣意性を排除するためのものである。 時として、このような事情を理解していない人から、意思決定が遅いとか、事務が非効率であるとの指摘を受けることになるが、真っ当な理由が存在しているのである。こ

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        • ヒント グループ化を考える

          筆者は、これから来るであろう大きな環境変化に対処する方策としてローカルグループ(LG)の形成を推奨している。そのことに気づいているのは筆者だけではない。全国各地で提唱され、法制化された地域医療連携推進法人の支持者も同じように感じていることだろう。また、共同購入組織(GPO)を提唱する人たちもひょっとすると薄々ながら、その必要性を察知しているのかもしれない。 環境変化に際して、仲間を募り、組織を形成すれば、個体がいきなり厳しい環境にさらされることを防げる。グループ組織という環

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        ヒント125 病院経営の好手(こうしゅ)と悪手(あくしゅ)

          ヒント 良い買い手になろう!

          市場での価格競争は、売り手に優勝劣敗の判定を下すことは誰でもが経験しているところである。売り手と買い手はイーブンな関係のようにも思えるが、お金の獲得競争においては、お金をもっているもの、すなわち買い手が強い立場にあると思われている。そして、買い手の動向が売り手の命運を左右することについては、誰もが経験的に知っていることだろう。 買い手の中には、買い手だという理由だけで売り手に対して横柄な態度をとるものをしばしば目にするが、売り手が売り手だという理由で大きな態度をとる場面は滅

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          ヒント 良い買い手になろう!

          ヒント 増収の沼

          国公立病院のはなしである。 わたしは国公立病院の増収について些か疑念をもっている。 国公立病院の経営計画では、患者数を増やすこと、診療単価を上げることが増収策として記載されている。そのためには、目玉商品となる高額医療機器に投資し、診療報酬を押し上げる要素となる医療職をかき集める。 当然とか、仕方ない、何が問題か、と思われるかもしれないが、そこに油断がある。病院が社会的資本としての公共性を備えていることには公も民もない。したがって、その役割を果たすためには、企業としての経

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          ヒント 急性期病院における薬価基準の役割

          医師の処方箋を必要とする医薬品の販売価格(正確には保険請求の基準価格)は薬価基準として定められている。この薬価は二年ごとに改定(見直し)することになっているのだが、このような期間では近年の医薬品開発のスピードについていけないことが現実のこととなった。そこで国は改定期間を短縮することとするのだか、医療機関のなかにはそれに反対する向きもある。 ある病院団体の代表が反対意見を表明したが、その理由は"薬価差益が減る。""患者に説明できない。""現場の混乱が予想される。"など薬価基準

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          ヒント 急性期病院における薬価基準の役割

          ヒント DPCと病院経営

          病院経営の専門雑誌をみると、DPC翼賛会かと目を疑ってしまう。あまりに熱狂的なDPC支持なのでかえって訝しい。そこで、少しばかり冷静になってDPCについて考えてみることにした。本稿を読み返してみると、相当に批判的な部分もあるので、DPCをひたすらに信奉する人は読まないほうがいい。反論するのに反感ばかりがつのるは目に見えるからである。 何となくDPCに違和感を覚えている人、DPCを経営にどう役立てていいか悩んでいる人、そんな人たちに読んでいただきたい。少しは考えを整理する役に

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          ヒント なぜ、いま、ナレッジ・マネジメントか?

          現代の病院経営に欠けている視点を提供してくれるのがナレッジ・マネジメントだからである。 地域医療構想、公的病院のあり方(すなわち、公民協働のあり方)、地方創生との関係、社会保障費の配分問題、医師の偏在問題、医学の進歩への対応などなど、他人まかせ、国まかせ、診療報酬まかせでは到底乗り切れないと思われる問題が目の前に横たわっている。 辣腕や豪腕の病院経営者が登場するとしてもその数はしれている。 かといって、医療現場の個々人で何とかできるというものでもない。 ここに、組織として

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          ヒント なぜ、いま、ナレッジ・マネジメントか?

          DIYのヒント これが本当のDPCベンチマーク

          二ヶ月に一度のペースで医療経営の勉強会を行なっている。主催はさぬき市民病院で、高松市民病院、坂出市立病院、つるぎ町立半田病院の四つの公立病院がもちまわりで開催している。担当病院が定める一つのテーマについて、それぞれの病院が情報を出し合って検討するというゼミ形式の勉強会である。 勉強会は土曜日の9時から11時までの2時間が設定されており、各病院の経営幹部が集まっている。 さて、そのゼミで、比較的多く取り上げられてきたテーマがDPCの比較である。特定のDPCについて、患者構成

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          ヒント 病院のマーケティングはこれから始まる!

          高齢化社会における社会保障財源が問題視されるなか、医療はその中心的な話題のひとつとして取り上げられる。そのテーマは"医療費の伸びをいかに抑制するのか"その一点であるといっても過言ではなかろう。 病床数が多すぎる。高額医療機器が多すぎる。高額薬品を使いすぎる。原価管理の基本に忠実といっていいほどに、数量の規制と単価の引き下げという手法がとられている。病院経営者は気づいているかもしれないが、国は国民に対する医療サービスの提供者の論理を用いており、医療機関はその系列仕入先といった

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          ヒント 病床信仰は根深い

          ある町の病院を診療所とするということについての住民フォーラムが開催された。私はシンポジストとして壇上で意見を述べることとなった。 その病院は、車で20分ほどのところに、同じグループの基幹病院と分院の二つの病院が存在するというロケーションにある。私の役割は住民に医療行政の流れを説き、病床がなくなることの意味を伝えることであると理解していた。まず、医療制度の歴史を簡単に述べ、そして、医療法第6条にある国民の努力について触れておいた。このような場面で経営の効率性を説くことはかえっ

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          ヒント わたしの大失敗

          わたしの大失敗とは、従業員採用時に彼らの倫理観を確認しなかったことにあります。さらには、日常のなかで倫理について語り合う機会を充分にもたなかったことであります。 事件は、その処理に何年も要すものでした。わたしの体験は、採用の失敗が後々に大きな災いとなる可能性を秘めているということの好例なのかもしれません、採用の大切さは誰しもがわかっていることと思いますが、ときに、想定を超えた事態も起こりうるということをお示ししましょう。 わたしが主宰するコンサル会社は従業員數が10人にも

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          ヒント 神秘的なものと科学的なもの

          大学の大先輩からの勧めで、"日本の弓術"(オイゲン・ヘリゲル)を手にすることとなった。神秘的な何かに心惹かれる著者が日本をその研究フィールドとし、さらには弓道において、日本の神秘主義を経験するという経験談を著したものである。 経験談と紹介したが、経験こそが神秘主義の本質にあるのであるから、理屈をこね回す科学的な態度とは異なるのは当然で、むしろ矛盾のない著作であると思う。"手に触れることのできない"何かにものごとの本質は宿り、また、そのことは"手に触れることで"感じとることが

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          ヒント 激化する競争、強化される統制

          地域連携や地域完結といった地域における医療提供体制の方向性が示されて久しい。近年では地域医療連携推進法人制度も整えられ、株式会社でいうところのホールディング・カンパニーのような形態も提唱されるにいたっている。高齢化と医学の進歩による医療費の高騰に歯止めをかけるべく、医療機関機能について分業と集約によって重複を避け、医療費の無駄を省こうというわけである。 しかし、現実はそう簡単なものではない。それぞれの医療機関はそれぞれの歴史や文脈の結果としていまの機能にいたっている。また、

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          ヒント シェアの低さは伸びしろの証?

          1980年代に考案された市場戦略のツールにPPM(product portfolio method)というものがあります。市場の成長性とシェアとの関係性によって、市場への関わり方を示唆するツールです。 市場の成長性が高いか低いか、そして、自社のシェアが高いか低いかの組み合わせによって対応策が示されるというものです。それぞれの組み合わせには特徴的なネーミングがしてあり、感覚的にも理解しやすいと思いますので紹介します。

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