ヒント 神秘的なものと科学的なもの

大学の大先輩からの勧めで、"日本の弓術"(オイゲン・ヘリゲル)を手にすることとなった。神秘的な何かに心惹かれる著者が日本をその研究フィールドとし、さらには弓道において、日本の神秘主義を経験するという経験談を著したものである。

経験談と紹介したが、経験こそが神秘主義の本質にあるのであるから、理屈をこね回す科学的な態度とは異なるのは当然で、むしろ矛盾のない著作であると思う。"手に触れることのできない"何かにものごとの本質は宿り、また、そのことは"手に触れることで"感じとることができる。科学万能な世の中にあっては、データや構造理解が幅を利かせているが、それは西洋的な科学主義であると説く。禅の精神が生活に沁み込んでいる日本人に西洋的な科学主義を理解することは難しいともいい、また、その逆に、ドイツ人である著者が日本を理解することは困難さを伴うといいながら、3年間の修行の果てに免許を得たことで、日本の神秘主義に接近したとして喜ぶという構成である。

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