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人生を一句で決める156作

「 人生を一句で決める156作 」  

                  火山竜一(ひやま りゅういち)

第一章 恋愛・失恋 標語 14作         ~ 人生は愛だ ~

    

恋愛はキャッチボールだ――
『 いい球放らないと、捕ってくれない 』

恋愛はバッティングセンターだ――
『 一生懸命振ったら、腰がふらふらに 』

恋愛はゴルフだ――
『 カップインまで、何打でも打つ 』

恋愛はテレビだ――
『 スイッチ入れないと、永久につかない 』

恋愛は病気だ――
『 治す薬はないよ、治す気もないし 』

恋愛は賭けだ――
『 外れても、自分の責任さ 』

恋愛は宝くじだ――
『 期待しないと、ときどき当たる 』

恋愛は競馬だ――
『 自分に鞭当て、ライバル抜くぞ 』

恋愛はサイコロだ――
『 六回振れば、一回は当たるはずなのになあ 』

恋愛は酒だ――
『 ほどほどにしないと、アル中に 』

失恋は涙だ――
『 泣いた後、新しい自分に出会えるさ 』

失恋したら整骨院――
『 次の予約は、いつにしますか 』

失恋は夢だ――
『 目覚めたら、忘れている 』

失恋はドリンクさ――
『 飲めば飲むほど、ファイト湧く 』


第二章 青春詩集 『 青銅の月 』18作  
     ~  生と死と青春と  ~

序文    お は よ

   ~  目次  ~

大学時代      1
冬の夜 森の中で  2
凍傷の街      3
食いつく夏     5
沈黙の海      6
無邪気な白砂    7
歩く羽毛      8
夜のざわめき    9
不在        10
水の流れ      10
鳥の飛沫      11
へいわの ふん   11
生命の海      12
雫の先       16
子供たちの夜    17
真空の青春     19
飛び立てよ蠅    21
自由空間      23

  「大学時代」


文字で埋まった大学ノートの上に
 一輪の薔薇
   春の陽光にあたたまる

その時突風が
 薔薇は崩れて転げ落ち
   文字は一斉にながれだす


  「冬の夜 森の中で」


木枯ら荒ぶ
森の中
爆音立てて
散る枯葉
茫洋として
漂い進む
人魂の
落ちる涙は
霜の上
全ての暗黒
掻きむしる
寒風の殺陣
その底で
蠢く笹の葉
破廉恥な舞
嗚呼
静物の乱痴気騒ぎを
見下ろすは
青銅の月


  「凍傷の街」

痛い冬が
来る

足音だけが
何処からか‥‥‥

生の気配は
遁走し
路地裏を
焦燥だけが
逃げ惑う

開いた戸に
不在の部屋が
闇を
吐く

物言わぬ土壁
風化の微動

矩形の大気の寂寥

風が
外れた雨樋に
躓いて
呻く

転がる
錆びた剃刀
鳥肌の
失踪

雑草の騒めきばかり
蔓延る街

もはや
化石にすぎぬ道
その上を
夏の後悔が
埃にまみれて
踊っている

片隅で
さくさくと
心臓のぬくもりが
鋭角の冬に
砕かれていく

垂れこめた
雲から
太陽を
掘り起こす者は
いない

時計仕掛けの
運命が
相変わらずの廃墟を
灰色に
氷結していく

凍傷の街中で

時は止まった


  「食いつく夏」

油の弾ける
鉄板のような
砂丘

重い
鉛の

戯れる
小波

ムクリ
起き上がる
太陽

運ばれてきた

まるく
屈む
大空

弓のように
張る水平線に
弾かれた飛び魚が
食いつく


  「沈黙の海」

果てしなき平原
果てもなく時を刻み続ける
無心の大地

水平線に佇む空
充満する雲の重圧
涙の父

大空の鏡
天を仰ぐ
寂寥の凪

ただ在るだけの
巨大な沈黙
それは


  「無邪気な白砂」


誰もいない
昼下がり
渚の白砂
さらさらと
何も知らずに
流されて
気持ちよさそに
さらさらと
時の風紋
撫でながら
くつくつ笑う
散歩道

何を思うか
白砂は
子供のように
戯れて
何時ものように
楽し気に
海を忘れて
さらさらと
さらさら
さらさら
さらさらと
平らです


  「歩く羽毛」

空気の
 笑いの中を
歩くように
 歩く

日向の
 通りの中を
歩くように
 歩く

足跡を
 くすぐりながら
歩くように
 歩く

もういいかい

まあだだよ

舌ベロ出して
さあ行こう

いつも
 星のように
歩くように
 歩く


  「夜のざわめき」

死の街並みに
充満したるは闇

暗黒の大空に
失われたるは北極星

灰色の壁の
囁くは落書き

路地の隅を
彷徨するは溝

道に対峙する
二十四時間嘆息の川

闇に蠢くは
交尾の悶え

駆逐されたるは
生者の人人人人

蒼ざめて
駆け巡るは暗殺者

安らかに眠るは
死者の又、人人人人


  「不在」

あなたが去って、来たお前

     白(ぱく)


  「水」

流れ流れて
  何時までも
    白く渦巻き
      泡立って
        何処まで下る
          果てもなし


  「鳥の飛沫」

白鳥が胸に突き刺さり
嘴が肋骨に挟まって
一滴、鮮血が落ちて牡丹になった

鴉が頸に突き刺さり
嘴が動脈に潜り込み
血飛沫舞い落ち桜の花弁になった

僕は二羽の鳥を、グイッと抜き
ムシャリムシャリと食べは始める

嗚呼
空腹の色は紅


  「へいわの ふん」

あさい
ねむりの
生死
なかば
かるい
まどろみ
愛も
なく
もうろうとした
まなこに
憎みも
ない
ささいな
微音
羽毛の

ながれ
つづける
ときの
たいくつ
孤独の
あくびに
沈黙の
にがわらい
ああ ふん
ああ ふん
ああ ふん ふん


  「生命の海」

暖かな
朝靄の漂う
海へ
おんなが
駆ける 

裸の若い
おんなは
尻と乳房を
弾ませて
象牙色の渚を飛び越え
焼けつくような太陽に
抱き着いた

渚の小波が
心地よい
ライトブルーの朝の海
大空の
テーブルクロスが
よく似合う
その上に
陽光が
のんのんと乗っている

最後の
海だと
目を細め
老いた海女が
やってくる

海に鍛え抜かれた
節くれだった
重い足
砂浜に
深くて暗い
足跡を
一歩また一歩と
刻んでく

陽光に温まる
珊瑚が詰まった
宝玉の海
小魚の影が
ふとよぎる

嬌声を上げる幼子(おさなご)が
波を蹴散らし
白い大気を
掻きまわす
その下で
寄せては返す小波が
散らかる足跡
舐めていく

海女が
来る
無限の海に
目を細め
仕事が終わったと
呟きながら
腰を
伸ばしもせずに
夕日に
別れを告げた

海底に
重すぎた夜が
沈殿し
寡黙な海星(ひとで)が
漫歩する

朝が来た
おんなは何処だ
不在の寂寥が
泣いている
浜に伸びた
海藻の髪
寄せくる波が
梳いていく

波は時を知らせ
風紋は時を刻む

大地の底の
マグマが
目覚ましだとしても
人影だけは
目覚めない

過剰で不毛な夏
朝は駆け足で去っていく

静かな昼だ
波もない
眩しい夏だ
常夏の
おお
生命の海


  「雫の先」
 
暗渠に挟まる魂の
うら悲しい呻きが
真珠となって
氷のテーブルの上に
凍える夜
顔のない少女が
泣き伏した姿で
凍死した

忘れ去られた
母の命日に
崩れた
少女の亡骸より
青春の化石が
鳩となり
廃墟の大空へ
飛翔した

広漠とした
大空の中
我を忘れた
罪なき鳩を
戦場の
気まぐれな
流れ矢が
貼り付けた

沈黙の大地に
悲しく遠い
鳩の胸より
鮮血が
規則正しく
滴って
見知らぬ額を
打ち続けるのだ


  「子供たちの夜」

子供の眠る
小さな街に
宵の
帳が
おりてくる
静かな静かな闇の中
一つ
また 一つ
窓の明かりが
消えていく

みんなが眠る
この街に
夢の
大気が
満ちてくる
静かな静かな空の上
一つ
また 一つ
瞬く星が
ふえていく

夜の
闇が沈む街
沈黙の
底が蠢いて
色とりどりの風船が
静かな静かな大地から
一つ
また 一つ
浮かんで
いく

風船の漂う
大空に
山から
カラスが
飛んできた
静かに静かに近づいて
一つ
また 一つ
割って
いく

カラスの去った
月夜の晩
割れた風船より
精霊たちが
踊り出し
静かに静かに輪になって
一人
また 一人
歌い
だす

宴たけなわの
輪の中で
子供の
夢が
芽をふいて
静かに静かに広がって
一つ
また 一つ

開く

大気の揺らめく
明け方に
騒ぎつかれた精霊たちは
子供の夢を抱きしめて
もうすぐ朝だと呟くと
静かに静かに目をつぶり
一人
また 一人
消えて
いく


  「真空の青春」

生臭い
夜だ
何処かで
魚が
腐っているのではないか
叫声しかあげぬ
赤子に
疲れきった母親のように
生が虚しく思える夜
俺は
路地で
血を吐いた

喉から
漏れる
孤独な音が
街灯の下で
掌を鮮血が濡らしていく
耳元に
響く嬌声
振り向けば
表通りに
揺らめくネオンサイン
うるさいぞ
夜の蝶

吐いて
出るのは
俺の人生
アルコールとニコチンと胃腸薬と・・・・・・
今まで
口にしたすべてが
笑いながら
泣きながら
叫びながら
賑やかに
俺の口から
去っていく

胸の
奥から
込み上げてくるもの
俺は謝るように四つん這いになり
街灯の下で
最後の力をふり絞る
こいつを
こいつを
開ききった口から
ついに
真空が
這い出した


  「飛び立て蠅よ」

飛び立て蠅よ
空はお前のためにある
あの青い空は しかし
お前には何もしやしない

飛び立て蠅よ
空はお前のためにある
あの青い空は しかし
お前のことなどどうでもいいのさ

そうさ蠅よ
空はお前のものじゃない
空は地べたを眺め
お前は空を見あげるだけだ

そうさ蠅よ
地べたでいくら肥え太ろうと
空は何も言わないさ
地べたはお前の全てだからね

でも蠅よ
地べたで退屈に溺れるなら
地べたで一人ぼっちになるのなら
知り尽くした地べたに何があるのか

でも蠅よ
地べたを暗すぎると思うのならば
地べたを狭すぎると思うのならば
虚ろな己に気が付くはずだ

よく聞け蠅よ
そんなお前の世界は
空なのだ
行ったこともない空なのだ

よく聞け蠅よ
後は
死しかないのなら
飛び立てよ

そうだ蠅よ
大空の中で
知るだろう
己が黒い点にすぎぬこと

そうだ蠅よ
ただひたすらに 
飛び続けろ
空はそういうお前のものなのさ


  「自由空間」

これからは
自由になろう
どこまでも
どこまでも
自由になろう

まるで
岩にぶつかる
大きな波が
弾けるように
飛び出そう

生真面目な
雪の壁が
気紛れな大気の身震いで
一斉に崩れるように
乱れ落ちよう

鳥籠の
鳩のように
開いた蓋から
ククッと笑って
飛び立とう

時計を捨てよう
靴を捨てよう
鞄を捨てよう
帽子を捨てよう
手帳を捨てよう

つかんだものを投げ捨てて
背負ったものを振り捨てて
締め付けたベルトを外したら
陽光の中で
風に身を任せよう

蛇口は
開けたまま
命の水は
流れ
続ける

口から溢れ
部屋から溢れ
街から溢れ
国から溢れ
地球から溢れ

宇宙に流れ落ちるままに
無限の空間に広がるままに
永遠の時間の中で漂うままに
暗黒の星雲に溶け込むままに
無音の静謐に浸るままに

去るものは
追わず
放っておき
空っぽになったら抱きしめようぜ
真空を


後書き    か ん ぱ い


第三章 就活川柳 100連発 総集編  
    ~ 仕事が教えてくれる ~

就活で 夢は希望に 衣替え

面接で 会社の名前 間違えた

面接で 動機訊かれて 動悸する

知らぬこと 知ったふりして 脂汗

面接で 「オス」と挨拶 体育会

就活が 苦労の始まり 人生は

就活で 新しい背広 よれよれに

内定は ゴールじゃないぞ スタートだ

ライバルの 会社が両方 内定に

面接を お見合いみたいに かしこまり

就活で 試験をやるとは 知らなんだ

雨の日に 「晴れてくれ」と 就活へ

霧の日に 道に迷って さようなら

大口を たたいてばかり 喉枯れた

人事様 選んでいただき 三拝す

面接で 優しい顔で 突っ込まれ

向かないと 思っていたのに 向いていた

一言が 天国地獄 紙一重

面接で 開き直って 道開く

面接で 語った夢は 地球規模

面接で 語った夢が 現実に

営業の 最初の商品 自分なり

就活は すてる神あり ひろう神あり

就活で 泣いた分だけ 糧になり

CMに 出ていた女優 影もなし

就活で 夢は枯野を 駆け巡る

欲捨てて 鐘が鳴るなり 法隆寺

就活で 本当の自分 発見す

ちょっと寄り 覗いてみたら 内定に

資格取り 資格取っても まだ△

就活の 何次面接 果てもなし

やりがいで 選んだ会社だ 「選んでよ」

就活が 泣いて笑って 終活に

私も 苦労したよと 面接官

知らぬ道 歩いてみたら 来た道に

変わり者 卒業したら 専門家

難問を 解くのが快感 コンサルに

新人の 本当の姿 スーパーマン

本好きが 作家になれず 編集長

編集者 作家の卵 温める

学校の 生徒会長 今社長

学校の 不良少年 今社長

面接で 話せなくても 文学賞

面接で コントやったら 笑われた

就活が 終わって飲む酒 二日酔い

面接が 終わって飲む酒 悪酔いに

将来性 仕事しなけりゃ わからない

入り口は 出口より狭い 人生は

同じ社に 再々受験 顔なじみ

天才は 忘れたころに やって来る

「おめでとう 君が一番 最後だよ」

口達者 仕事させたら 沈黙す

口重い 仕事させたら 天才だ

なせば成る なさねばならぬ 就活は

戸を叩け 足を踏み出せ 押していけ

就活の リターンマッチ 勝つまでは

寒い日に 会社訪問 脂汗

闇の道 閃きだけで 歩いてる

靴の底 穴が開いたら 道開け

吉報は 忘れたころに やってくる

就活は みんなが通る 細い道

適性が やる気次第で 乱高下

大口を 開いてばれた 虫歯穴

マスクして メガネがくもり 五里霧中

二枚目が マスクをしたら 三枚目

面接は マスク取らぬと 同じ顔

面接で マスク取ったら でかい口

スマートに マスク取ったら 無精ひげ

マスク取り 口紅一緒に 取れちゃった

面接で マスク取ったら メガネ飛び

応援団 社歌を歌って 内定に

マネージャー 配属先は 野球部に

神社寄り 賽銭はずんで 面接に

面接で 人相占い 社長趣味

占いが いつ当たるのか 占った

我が道は 迷路だろうと 道一つ

彼女から 励まされては 就活へ

結婚の 前に決めるぞ 就活を

今一つ 押しが足りない 相撲部員

就活は 一勝すれば 全勝だ

茶髪顔 黒染め出発 就活GO

道迷い スマホで確認 本社どこ

玄関を 掃いている人 社長さん

伊達メガネ 顔に合わず 度も合わず

ネクタイを しっかり締めて 息止まる

台風で 面接官は 誰もいず

就活で 泊まったホテルに アイドルが

就活で 初めて来たよ 東京に

「卒論は 就活の後で 取り組みます」

「卒業は たぶんきっと おそらくは」

卒業は 「約束します」と 空手形

スーツ買い サイズが合わず ダイエット

ネクタイの 長さが合わぬ 面接日

面接で 背が高いのに 小さくなり

面接で 机がなくて 足震え

内定の 予想をするのは もうよそう

面接で これが私と 胸を張り

面接で 気合入れすぎ 空手部員

「力抜け」 面接官も 黒帯だ

会社の 偏差値決める 受験癖


第四章 いつも元気だ 終活川柳 24作 
    ~ 最後はみんな一緒 ~

もう十分 遺言したら 長生きに

遺言書 慣れないWord 誤字だらけ

親不孝 遺言読んで 墓参り

遺言書 忘れた漢字 ひらがなに

就活が 年をとっては 終活に

終活は 履歴書不要で 面接なし

終活は 生きてる証 何回も

終活は まだまだ先と 医者に行き

終活を やればやるほど 閃きが

定年で 次の仕事は 終活だ

「終活」の 本を買っても 積読(つんどく)だ

相続税 税務署窓口 おもてなし

遺言に 気持ちだけを 書いた夜

遺言の 推敲地獄 小説家

遺言を 筆で書いては 墨だらけ

遺言書 入れた場所を 忘れたり

遺言で はじめて明かす 株の穴

遺言で はじめてわかる へそくりが

遺言書 文字は大きく 中身薄

金色で 遺言を書けど 金はなし

遺言書 いれものだけは 立派だね

終活で 財産借金 足すとゼロ

遺言の パソコンファイル どこいった

遺言書 パスワード設定 やりすぎた


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火山竜一  ( ひやま りゅういち )
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