マガジンのカバー画像

2021

100
運営しているクリエイター

#夏

こっちへ来なはれ。

こっちへ来なはれ。

西に傾く炎天の太陽

陽射しの力はまだ強く

大地の熱は冷めぬまま

遥か彼方に立ちのぼる

大きな大きな入道雲

生き物のように湧き上がり

涼しげな濃い紫の影を拡げる

おーい、そこのきみー

そんなところで見てないで

さっさとこっちへおいでなさい

畑の野菜も学校の花壇の草花も

みんなで君を待ってるよー

狙われた縞模様

狙われた縞模様

それは、収穫適期まであと数日に迫っていた。

苗を植えてから2ヶ月半、小さな実をつけてから1ヶ月余

場所も時間もかかるけど、夏一番に収穫が楽しみな君。

日ごとに縞模様がくっきりと浮かんできて

叩けばコンコンと水分たっぷりの音を響かせて

あともう少しと楽しみにしていたのに。

ああ、それなのに、それなのに。

無常にも、それは空中からの刺客に襲われて

外壁を破られ、ぱっくりと傷口を開いてい

もっとみる
蝉時雨ー7月の星々ー

蝉時雨ー7月の星々ー

お社の大樹が参道に濃い影を作る。

短い命を燃やす蝉時雨が

容赦なく鼓膜をつんざく。

からん、からんと鳴る錆びた鐘の音。

ぱん、ぱんと響く乾いた柏手。

まるで映画のように蝉の声が一瞬鎮まり、

深い海の底のような蒼い静寂が支配する。

深く一礼をして祈りを解いたその人は

ひとつ深呼吸をして歩き出した。

ふわりふわり

ふわりふわり

夏本番を思わせる太陽が 麦わらの天辺を強烈に刺す

梅雨の気配はどこへやら せっかちな一番蝉が鳴く

夏の畑は変則シフト 朝夕2回のサマータイム制

昼のひなかは太陽の出番 葉っぱを照らして光合成

その間わたしは畳で大の字 うちわを扇いで昼休憩

森からの涼風が そよりそよりと遠慮がちに吹いて

玄関の白い薄布を ふわりふわりと優しく揺らす

夕べの仕事をイメージし うつらうつらと夢の入口

夏本番への予行演習

夏本番への予行演習

去年の秋、森の古屋に住むことになった時

夏にはこいつをそばに置こうと決めていた

日本の家屋もだんだん機密性が良くなって

殺虫剤の性能もあれこれいろいろ進化して

無臭や微香や無煙が好まれるようになって

久しくこいつを見かけていなかったけれど

この古家にしっくり来るのはこいつだろう

暑かった今日も暮れて、

畑終わりのひとっ風呂そして冷えたビール

大好きな森に続くガラス戸を全開にしたら

もっとみる