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2021年1月の記事一覧

春待ちの畑、荒起こし

春待ちの畑、荒起こし

立春を間近に控えた大安吉日

怠惰な冬の温もりを気合いで振りほどいて

まだ眠そうな畑に今年初めての鍬を入れる。

そろりそろりと鈍った身体を気遣いながら掘り起こし

ぺたぺたと蔓延った野の草の根を解しては畔に放り

ゴロゴロとした黒いツチクレを軍手で握りつぶせば、

ひさびさに感じる生きた大地の感触と肥えたいい匂い。

コロコロと出てくる掘り残したいもに顔をほころばせ、

だんだんと体内時計が畑

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雪の華

雪の華

雨がみぞれに みぞれが雪に変わる

渇いて枯れ果てていた古い河跡に

新鮮な湧き水が流れ込んだように

色のない景色にすっぽりと埋もれて

目を凝らさないと見えなかった梢枝が

はっきりとした輪郭を伴って浮かび上がる

急峻な斜面の上から見た川面に近い木々は

遠近法を無視して広がる真白な花火のように

チリチリと細かい華を散らして咲き誇る

しんしんと響く音のない音

夕闇迫る頃 不意に訪れた幽

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富士山、雪化粧

富士山、雪化粧

今年は雪が少なくて、

何やら良くないことがあるんじゃないかと

地元のおじさんが心配してましたが、

これで安心して過ごせますね。

惚れ惚れするような雪化粧です。

大寒を過ぎて、冬も折り返し。

まだまだ寒い日が続きますが、

だんだん日が長くなってきたような気もします。

大雪予報が外れて暖かさが残る陽だまりの中で、

もうしばらくあなたの美しいお姿を楽しんで

元気をいただいて帰ります。

1月の星々ー奇跡の始まりの日ー

1月の星々ー奇跡の始まりの日ー

その日の朝一面の雪景色が世界を変えた。

欲望に駆られた街は小さなしるしにも心を満たし、

孤独な群衆は微かなぬくもりにも笑みを交わし、

人を羨まず、昨日を嘆かず、明日を憂えず、

いまこの時を心から尊び、暖かな夢を紡ぎ始める。

一年で一番寒い季節に始まる物語。

僕たちは奇跡の時を生きていく。

枯れてなお命を宿す

枯れてなお命を宿す

凛とした空気と静けさに支配された冬の里山

枯葉を敷き詰めた斜面には幾本もの立ち枯れの樹

張り巡らせた根はがっしりと岩土を抱き抱えているが

かつて聳えた逞しい幹はもうすでになく

風雨に朽ちた白い抜け殻だけが横たわる

天寿を全うしたか、はたまた命半ばで倒れたか

そのいきさつは知らないけれど、

やがて土に帰るその時までも

湿り気を保って苔草をはぐくみ

その身を砕いて冬越しの虫をかくまい

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紅梅神社

紅梅神社

雪混じりの寒さから一転

陽射しが温い午後のひととき

寒ちぢみした身体をほぐしてくれたのは

川岸の小さな神社で出会った

やわらかなべにいろのほころび

やしろにその名を冠する紅梅は

いにしえから人々に告げてきた

どんなに厳しい冬にも終わりがあり

暖かな春の日が必ず来ることを

今がどんなに辛い時だとしても

季節は必ず巡っていくことを

雪の気配

雪の気配

記録的な大雪で、もう雪なんてうんざりなみなさまには

本当に本当に申し訳ないのですが。

今日は朝から雪の気配を感じて、ソワソワしています。

いつものルーティンもそこそこに

何度も何度も窓の外を眺めて、サッシを開けたり閉めたり。

心なしかいつもより小鳥たちの声も控えめで

風の匂いもしっとりと湿り気を含んでいて

トゲトゲしかった空気が丸みを帯びて感じます。

いい具合に、うっすらと雪化粧が

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ハタチのきみへ、ハタチのぼくへ

ハタチのきみへ、ハタチのぼくへ

思えば、あの頃は少しでも早く大人になりたいと願っていた。

少しでも早く自分の足で立ち、

誰にも頼らず自分の力で稼ぎ、

自分ではない何者かになりたいと。

ふるさとの優しい人々の絆が

自分を縛りつける足枷にしか思えず、

誰も知らない大きな街で、

自由に自分の力を試したかった。

それまで歩んできた道のりの確かさよりも、

自分の前に広がる可能性の無限さを憧れた。

人生の道程の半ばを経過

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泣き初め

泣き初め

睦まじい時を過ごした松の内が明け

名残を惜しみながら暇乞いする我に

あれやこれやを持たせんとするあなた

ふと言葉が途切れたと振り向けば、

みるみる涙が溢れ出しての笑い泣き

深い理由などひとつもないけれど

忙しい日常に戻る手前で訪れた心の空白

今年初めて流した優しい涙はきっと

たくさんの笑顔を連れてくる呼び水。

改めまして、あけましておめでとう。

今年もどうぞよろしくね。