新潟スタイルの集大成:2022 J2 第37節 アルビレックス新潟×水戸ホーリーホック
新潟シフトな守備戦術を用いてくるチームが多い中、水戸は自分達のスタイルを信じて突撃してくる漢!!秋葉監督。
そんな揺るぎないスタイルの水戸を正面から打ち破った俺たちの新潟。メンバーが変わってもサッカーが変わらないのは本当に痺れる憧れる。アルベルト時代から続く新潟スタイルの集大成と言っても良い試合だった。
ということで、非常に熱量の高かった水戸戦を振り返る。
圧縮守備の水戸を剥がす新潟のビルドアップ
新潟の代名詞と言えばショートパスでトライアングルを繋ぐビルドアップになり、大体どのチームもキッチリと新潟対策を仕込んでくる。
京都不在のJ2今シーズン、ガス欠上等ハイプレスで貫き通すチームは減少傾向となり多くはブロックで中央封鎖という選択肢をチョイスする。
昨シーズンの新潟攻略セオリーはハイプレスだったが、今シーズンはどんなハイプレスも躱してしまう強さを手に入れた新潟なので無駄に付き合わないでブロックを固めようというチームが増えたのかもしれない。J2の戦術レベルを底上げする俺たちの新潟。
そんな新潟対策となるが、水戸は守備ブロックの専用シフトを敷くことなく己のスタイルをそのまま全力でぶつける漢気溢れるサッカーを披露してきてくれた。結果として最初から最後までスタイルを貫き通した水戸にはリスペクトしかない。
秋葉監督の試合後インタビューも清々しいもので、サッカーのスタイルもDNAも持っている新潟ゆかりの秋葉監督にはいつかアルビレックス新潟の監督をやってもらいたいと思っている。
2021シーズンはアルベルト監督が本当にコテンパンにやられたので、今シーズンの結果も内容も圧倒してのダブルは2年がかりのドラマとなった。
水戸の超圧縮守備とそれを上回った新潟の攻撃
水戸の守備の特徴は縦横に超圧縮して、高い位置でボールを奪ったらセカンドボールを拾うなり最速縦パスを打ち込んで超高速カウンターを炸裂させるというスタイル。モダンサッカーで言うところのストーミングの部類になる。
縦横圧縮、ボールを奪いに行くことで奪える確率とゴールに迫る回数を上げることはできるが圧縮の外側には広大なスペースが広がってしまうというのが弱点となる。加えて、圧縮を掻い潜れるスキルや戦術を持っているチームが相手で、かつ攻撃強度が守備強度を上回った場合には大ピンチを招いてしまう。リスク管理が大事になる戦術でもある。
そしてこの試合、結果の通り水戸の圧縮を新潟の攻撃が上回った試合となった訳だが、新潟は水戸のスタイルの「プレスで引っ掛けてセカンドボールを回収して攻撃に転じる」を水戸よりも高いクオリティで実演しての圧倒的勝利。これが先の秋葉監督の新潟リスペクトのコメントになったりする。
見た目の形は違うものの哲学そのものは新潟と同じものを持っている秋葉水戸のサッカーである。
以下、具体的なシーンを振り返る。
水戸の堅守
水戸は序盤から圧縮守備で新潟のビルドアップを封じつつ、ゴール前まで運ばれても慌てずに硬いブロックを組んで絶対死守の集中力。最後の最後は絶対に割らせないという意志の強さを感じる最終ライン6人体制という時間も多かった。
そんな水戸の圧縮守備を新潟はいつものやり方で攻略していく。個人的にはスペイン式と呼んでいるが、442守備の2の間にボランチを置いて中央から外内トライアングルでボールを進める形のアレである。ボールを受けて即リターンやオリエンタードするヤンは千回単位で見ているかもしれない。
しかも現時点の新潟はヤンと見せかけて伊藤が落ちてきて中央で受けるみたいなピリ辛な味変も加えてくるので、まともに442で対応しようとすると苦難が待ち受けていたりもする。今回の水戸も例外なく伊藤に落ちて受けて捌かれて地獄のロンド・メーリーゴーラウンド。
セカンドボールの回収
この試合の熱源となったのは双方のセカンドボールへの執念。
圧縮してサイドに追い込んで3人がかりでボールを奪いに行って引っ掛けて縦パスをズバッと蹴るぞ!と水戸の猟犬がボールを溢すまではできているが新潟も溢れたボールを水戸よりも速い出足で確保する。かと思ったらさらに水戸の猟犬が噛み付いて溢して地獄の奪い合いというシーンが多発。
この文字だけ呼んだら少年ワーワーサッカーじゃねぇか!と思うかもしれないが、ボールを確保できたら即縦!即縦!即縦!安藤木下超突撃!の水戸と、まだまだ慌てる時間じゃない… と言ってボールを後ろに戻す新潟のコントラストが本当に美しかった。とにかくこの部分の熱量が本当に高かった。セカンドボール回収デュエル。水戸ゴール前でセカンドボールを回収してずっと俺たちのターンを続ける時間帯も多かった俺たちの新潟。
なお、セカンドボール回収率は新潟の圧倒で冒頭秋葉監督コメントのとおりではあるが、たまたまこの試合で高クオリティだったのが新潟というだけなので水戸は自信を失わずにセカンドボール回収を極めるサッカーを追求してほしい。そのサッカーは本当に魅力的だ。
水戸の守備を掻い潜る新潟
水戸の守備を掻い潜るキーマンとなったのは三戸。
前半6分のクロスを蹴り込むまでの一連のシーンは美しかった。アルビ公式YouTubeチャンネルの動画の中でもこのシーンは小島のキックから確認できるので何度でも見返してほしい。
ビルドアップやり直しの流れの中で小島がピンポイントで藤原にフィードして水戸の守備を片寄せさせておいてからの外→内→外コンビネーションで一気にサイド最終ライン裏を取って三戸のクロス投下。小島のフィードは「このキックが凄い2022小島大賞」にノミネートされた。
三戸のクロスが飛んだ先には谷口がタイミングピッタシに飛び込んでおり、これはドンピシャヘッド決まったヒャッハー!と2秒後の未来を予測した全新潟だったがボールはクロスバー直撃。決まっていれば小島から繋がるというスーパープレイだった。惜しい!
三戸はこのシーン以外にも前半12:40に自らの猟犬ハントで一気に抜け出しを狙ってイエローカードで止めるしかない水戸みたいな状況も多く作り出していたし、前半14:00の最終ラインサイド裏への抜け出しからのペナ内切り込みも見事。前半21:40のセカンドボール回収から中央にドリドリ突っ込む勢いも若さ爆発で好感度ヨシ!三戸と水戸の使い分けが難しい。
三戸が復帰してとにかく推進力が一気に上がった俺たちの新潟。松田とシマブクは頑張れ。イッペイは慌てず怪我治せ。
ゴール前での崩しと星雄次
ゴール前では新潟得意の楔パスを絡めたコンビネーションでゴールに迫る。
前半8:20には水戸のパスミスをヤンが拾って、直後に打ち込んだ楔を谷口が受ける。谷口はダイアゴナル(斜め)に突撃してくる伊藤に優しく渡して伊藤は低く抑えつつもしっかりとインパクトを当ててシュートを放つが水戸キーパー山口のナイスセーブに阻まれる。決まっていたらパスミスを逃さずキッチリ決める超決定力な俺たちの新潟だった。その後も伊藤の超絶コントロールショットを防いだりと大当たりの水戸キーパー山口。
そんな決めきれない流れの中、先制ゴールを決めて輝いたのは星。スワンの星。
スタートポジションはボランチだが積極的に前に出て高い位置でボールを受けてシュートまで持っていくシーンが多く見られたし、ゴールを決めた時のことを聞かれて「試合で使われない怒りを込めた」みたいなコメントが出ていたとか。改めて見るとそんなシュートが多かったアングリー・スター。ストライカー谷口に対してボールくれくれアピールが半端ない。本当にゴール決めたかったんだろうな。
水戸の超速縦とデンの対人守備
水戸は奪ったら超速縦!最終ライン裏が空いていれば超速縦フィード!という超絶シンプルな攻撃を仕掛けてきて、その狙いがバッチリ嵌まったのが前半19:50のシーン。
新潟のゴール前猛攻を凌いでキーパー山口が中央に待ち構える屈強安藤瑞季を狙って蹴ったキックは俺たちの屈強トーマス・デンに弾き返される。が、水戸はセカンドボールを拾って最速縦フィードを右サイド寄りをゴールに向かって走り出している安藤目掛けて蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたボールを「オフサイド!」と副審にアピールするも華麗にスルーされるトーマス・デン。このアピールの所作でダッシュ速度が落ちて安藤に最終ラインを突破されてしまうトーマス・デン。
これはフリーだ!安藤キャノン炸裂だ!と全水戸全新潟が未来を予測したその直後、出足遅れたはずのデンがペナルティエリア内における完璧なフットボールコンタクトでボールを回収する。
このプレイはマジでデン神としか言いようがないし、来シーズンのJFAのレフェリングスタンダードの解説動画に載せるしかないプレイだった。本当にここまで登ってくるまで辛くて長かったであろうデン。オーストラリア代表としてワールドカップに出場してほしい。
高木善朗の5年間
現時点で最高の状態にある新潟のサッカーだが、ずっと最高の状態だったわけではなく降格前後の暗黒期は長かった。
そんな辛い時期も新潟のために走り続けてきてくれたのが高木であり、新潟の昇格ストーリーに欠かせない人物の一人でもある。むしろ主人公かもしれない。
高木が入団したのはJ2降格後の2018年だが、当時の個人的な印象は「攻撃はできるが守備意識が低すぎる。感情的になることも多くて安定しない」というものであり、今ほど圧倒的な存在感がある訳ではなかった。
試合自体には主力として多く出場していたが、ゴールという結果は数字として残っておらず、守備の雑さもあって難しい選手だなという印象が強かった。
しかしながら、2020年からアルベルト監督の指導を受けると守備が著しく改善され攻撃のストロングもより際立つようになり感情のコントロールも備えるという選手に大きく成長し、2021年シーズンにはハットトリックを含む10ゴールを決めるだけではなく、被ファウル数もNo.1というゴールを決めることができるゲームメイカーとなった。「コイツにボールを持たせたらヤバイ大賞2021」を受賞するんじゃないかという超攻撃的なフットボーラーへと変貌を遂げた。
2022シーズンにおいてもここまで9ゴール6アシストとなっており、新潟の奪った66得点の1/4くらいは高木関連のものとなっている。被ファウル数の72も堂々たるNo.1となっており、どのチームも「高木を自由にさせないにはファウルしかない」という対応しかない状態になっていた。前半20:20のシーンにおいてヤンからの超絶パスに反応して抜け出したシーンは本当に素晴らしかった。高木はストライカーということを証明するようなプレイだった。
被ファウル数がどんなに多くてもこれまで怪我をせずフル出場に近い状態でチームへ献身してきた高木。
新潟サポーターからしたら暗黒期から昇格までのストーリーにおける主人公の一人としての存在でもあった高木の物語は前半25:30に突然中断となってしまう。
このアクシデントにより今シーズンの出場は実質不可能となってしまったが、来シーズンはJ1で高木のターンを何度でも見たいのでクラブも選手もサポーターも、高木を必ずJ1に連れていくと心に決めずにいられない。これは絶対にJ1に昇格しなければならない。J1で活躍する高木を見るのは全新潟の願いでもある。高木善朗の物語はまだ終わっていないのだ。
ファンタジスタ伊藤涼太郎
サッカー戦術の進化に伴い見かけることが減少傾向な印象の強いスルーパス。そんなスルーパスを超絶技巧で何度も見せて全新潟を虜にしてしまうのが伊藤涼太郎である。
守備5人を切り裂く超絶スルーパス。マラドーナやメッシはドリブルで5人を切り裂いたがパスで5人を切り裂くのは伊藤涼太郎である。このプレイでゴールが決まっていたらファンタジスタ伊藤涼太郎を日本中に超絶アピールできていたんじゃないだろうか。惚れる。
伊藤は今シーズン入団当初からスーパーなプレイヤーだったが、シーズン終盤においては凄みマシマシ。いやはや本当に凄いプレイヤーで全盛期のグティじゃないかと興奮する。グティ涼太郎。
「努力と謙虚ささえあればサッカー史上最高のフットボーラーになれた」というのはグティを評する際に良く使われる言葉だが、伊藤は努力と謙虚さを兼ね備えて史上最高のフットボーラーになってほしい。
復活の谷口海斗
この試合でキッチリとゴールを決めた谷口。俺たちはお前のゴールを待っていた。
怪我で途中離脱していた谷口だったが、この試合では自分のスタイルとストロングを存分に発揮してゴールという結果も出たので自身もサポーターも全員大満足だったのではないだろうか。
偽9番の動きでボールを引き出しつつ最終ラインを動かしたり楔の受け口を担いながら常にゴールを狙い続けるだけではなく、サイドから強い推進力を出すこともできる。
実質なんでもできるストライカーの谷口がJ1でどこまでできるかというのが楽しみなので新潟はなんとしてでもJ1昇格を果たさなくてはいけないし、J3でホテルマンやりながらキャリアをスタートさせた谷口自身の物語の続きを新潟で見たいというのもある。
交代してもスタイルと強度が変わらない新潟
後半には交代策として島田松田秋山ゲデスと立て続けに選手を投入するが、それぞれがそれぞれのポジションで役割を全うして試合をクロージングさせる。高木の交代というスクランブルに対応した小見も十分すぎるほどの役割を果たした。
島田は高いクオリティーで試合に緩急をつけるコントロールができるし、松田は若さ爆発なゴリゴリドリドリ突破やワンツー抜け出しを試みる。秋山が入れば引いた相手をファンタジーなパスやロブ一発で攻略するし、ゲデスも攻守に新潟のスタイルを体現できるようになって琉球戦ではゴールも決めた。
秋山なんかは本当にこのまま選手としてのキャリアが終わってしまうのではないだろうかとシーズン途中は思っていたので今の輝きは本当に眩しくてしょうがないし、小見の課題だった守備が直近の試合で一気に改善されたのは松橋監督の育成手腕としか言いようがない。
スタメンだけではなくベンチやベンチに入れない選手も含めて新潟のサッカーができるというのが新潟の強さだし、これはJ1に上がったとしてもクラブとして継続してもらいたい。このような流れがクラブのアイデンティティになりサッカーが文化として根付くことに繋がるのです。
昇格まであと3勝。目の前の試合を大事に戦ってもらいましょう。
オープンチャットでのリアルタイム解説
試合開始前
デンを勝利で代表に送り出したいですね。
星がボランチ先発ですが伊藤と渋滞を起こさないか心配になります。
もしかしたら水戸のコンパクトな守備を星伊藤で左に寄せてから逆サイドの三戸にサイドチェンジというプレイが見れるのかもしれません。
サイドチェンジ、琉球戦の時はボールは綺麗に飛んでいくものの松田のトラップがイマイチでチャンスを潰していたのですが、三戸ならキチンと収めて突撃できるはずです。
サイドチェンジを意識しながら観戦すると面白いかもしれません。
攻撃的なスタメンですので前半で一気に畳み掛けたいですね。
琉球戦のサイドチェンジの形です。左に寄せて右に振るとなりますでしょうか。
水戸の守備は縦横にコンパクトなので小島やデンのフィードも刺さりやすいと思います。
前半終了時
熱量の高い良い試合ですね。
新潟は良い守備が良い攻撃に繋がるという好循環の流れを掴んで離しません。
高木負傷交代のあとは上手くいかない時間帯がありましたが、ディフレクションを拾って星のゴールです。谷口のパワーショットも期待値高いです。
今日の新潟はとにかくプレスからセカンドボールを拾いまくってベクトルを常に前に向けます。水戸は押し込まれて6バックのような壁を作らざるを得ません。今日のテーマは間違いなくセカンドボールでしょう。最後まで拾い続けることができるかがチェックポイントです。
水戸の椿が非常に良いですね。来シーズンはマリノス枠として新潟に来てくれないでしょうか。星のタスクを更に高いクオリティでこなすことができると思いますし複数ポジションもできるでしょう。
水戸は奪ったら最速超速縦アタックですのでカウンター対策は入念にというお願いになりますね。
セカンドボール回収について書いたnoteです。
ボールにアタックに行く選手の周辺にスタンバイしている選手や距離に注目してみて下さい。セカンド溢れろ!と念を送っているかのようなスタンバイの仕方をしています。
試合終了後
最後までセカンドボールを拾い続けました。これは最強新潟です。
守備が課題だった小見がなんと逞しくなったことでしょうか。ほんの数試合でここまで劇的に変わるのは松橋監督の育成手腕でしょうか。
もしかしたらスワンの大声援で足が動いたということもあるのかもしれませんね。DAZNでも雰囲気は凄く伝わってきました。星も松橋監督もインタビューで声援について喋ってますね水戸も最後まで諦めずに超速トランジションで挑みますが、水戸のストロングを新潟のトランジションが上回るという秋葉監督からしたら悔しい試合でしょう。
決まらなければ決まるまで撃つという松橋監督のコメントが頼もしいですね。シュート数25本超えているかもしれません。
昇格まで残り3勝、いよいよですね。
(小島から最終ライン裏に一発で抜け出すシーンについて)アウェイの水戸戦もそうでしたが、水戸の守備は縦横に圧縮してトランジションを制する戦術ですので裏一発は有効ですね。前線から奪いに来るのでハイラインになりがちです。
守備を圧縮してスペースを無くしてボール回収したら最速縦というのが水戸のスタイルですので裏ポンは面白いように入ります。
そして、今日の新潟は水戸がやりたいセカンドボール回収の形をそのまんまハイクオリティでやってみせましたので秋葉監督からしたら悔しさ100倍でしょうね。いつもの新潟ポゼッションのクオリティもそのままでしたので圧巻の新潟です。
あの手この手で新潟に挑んでくるチームがある中、自分達のスタイルをそのまんまぶつけて来た水戸にはリスペクトですね。
「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。