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フットボールコンタクト(ジャッジでフラストレーションを溜めない観戦方法):2022 J2 第20節 徳島ヴォルティス×アルビレックス新潟

引き分けだったものの上位陣が揃って敗戦となったため首位に立った俺たちの新潟。このまま負けずに勝ち続けてもらいたいところ。

この試合では新潟の攻撃を止めるために徳島がファウルで止めるというハードな対応をしてきた感が否めなかったのでその辺りについて解説してみる。ジャッジでフラストレーションを溜めない観戦方法の解説になる。

ハードな対応を求められた試合

この試合の徳島のハードな対応はヤンがメディアに語っていたりして、本当にハードだったんだなとは思う。

「試合全体を通して徳島はファウルが多く、もう少しカードを出してコントロールしてほしかったというのはあります。でも矢印をそこにではなく、自分たちに向けて取り組んでいかないと。引っ繰り返せるゲームだったし、アウェイからも勝点3をしっかり持って帰れるよう、チームとして強くならないといけないと感じました」

https://www.jslink.jp/news/jslink/n-00258661/

SNSなんかでは徳島のハードな対応にネガティブな意見が多かったけど、個人的には怪我人が出るほどのハードぶりでは無かったので「別にいいんじゃないでしょうか」という感想だったことは最初に書いておくが、公式スタッツでもフリーキックのカウントが徳島の7本に対して新潟には26本がカウントされていたことを考えればファウルの数も多かったんだろうという事実は確認できる。

個人的には怪我人が出るとか出てしまいそうというようなジャッジでなければ観ている側としては許容範囲と判断するようにしているので、これこそがジャッジでフラストレーションを溜めずに観戦するコツだったりする。ジャッジの基準がブレるという別の要因はあるが今回そこには触れない。

とはいえ、明確な定義や基準がない状態で応援しているチームに不利なファウル判定があるとどうしても疑問を持ってしまうののがサポーター心理というものだ。その心理を落ち着かせるためにも一般論を横に携えておく必要がある。実際には試合の当事者である監督ですら感情を抑えられずにインタビューでジャッジにアレコレ言ってしまう世界なので感情を抑えろという方が無理なサッカー観戦だし感情を爆発させるほどの魅力がサッカーにはあるわけでだが、それでも客観的に見たらどうなのかという視点は常に持ち合わせておいた方が良い。

ノーマルフットボールコンタクト

フットボールコンタクトと略してしまうが、正しく理解するためにはノーマルフットボールコンタクトという「ファウルにならない接触」という言葉で把握しておく必要がある。フットボールコンタクトという言葉自体は和製英語かもしれない。

なお、どこかでノーマルフットボールコンタクトという言葉が定義されているわけではないので、まずはファウルの定義を競技規則から引用して確認しておこう。引用箇所としては「第12条 ファウルと不正行為」になる。

競技者が次の反則のいずれかを相手競技者に対して不用意に、無謀に、または過剰な力で犯したと主審が判断した場合、直接フリーキックが与えられる。
(略)
・不用意とは、競技者が相手に挑むとき注意や配慮が欠けていると判断される、または慎重さを欠いてプレーを行うことであり、懲戒の罰則は必要ない。
・無謀とは、相手競技者が危険にさらされていることを無視して、または結果的に危険となるプレーを行うことであり、このようにプレーする競技者は、警告されなければならない。
・過剰な力を用いるとは、競技者が必要以上の力を用いる、または相手競技者の安全を脅かすことであり、このようにプレーする競技者には、退場が命じられなければならない。

https://www.jfa.jp/laws/soccer/2021_22/

ファウルになるかならないかは全て主審が決定することになっている。競技規則のWEB版には丁寧にファウルとなるプレイ集の動画へのリンクが貼ってあって、どれもこれもこれは酷い系の痛々しい映像が鑑賞できる。

選手生命を脅かすプレー

では、ファウルにならないプレイとは何かということになるが、この辺りは基準がレフリングスタンダードという形で変更になるので情報を毎シーズン追うしか無い。2022シーズンについては以下のとおりに明言されているので書き出してみよう。

動画の中で明言しているのは選手生命を脅かすプレーについてだが、サッカーを日頃から観戦している者にとっては当たり前のことしか言っていない。当たり前のことしか言っていないが完遂するのは難しいというのがサッカーである。

サッカーはルールがシンプルゆえに自由度が高く、多くの裁量が審判に委ねられるので試合毎に異なる基準が適用されることになるが、JFAはこのように「これはダメ!ゼッタイ!」というガイドラインを提示してくれている。このガイドラインはJリーグを観戦する上での基準にすることができる。これを一般論として携えておく。

脚部へのチャレンジ

アタックの対象がボールではなく、意図的にせよ結果的にそうなってしまったにせよボールに触れずに脚部へのコンタクトはファウルになる。

スライディングタックルに代表される脚部へのコンタクトだが、脛などの脚部は一定の力を加えると折れてしまうので競技規則で保護具の着用が義務付けられているのは皆さんご存知のとおり。骨折すれば半年単位の治療が必要だし、その後の選手キャリアにも多大な影響を及ばしてしまう。

上半身へのチャレンジ

全般的に同じことしか言えなくなってしまうが、脚部同様にアタックの対象がボールではなく、意図的にせよ結果的にそうなってしまったにせよアタックの対象がボールでない場合にはファウルとなる。ボールに向かう力と同じ力で相手を蹴ったら骨折など重篤な怪我をしてしまう。これを意図的にサポーターに対してやってしまうと伝説として語り継がれることになるしサッカーを飛び越えて社会的制裁を受けることになる。タイのキックボクサーに蹴られても壊れないお笑い芸人の臀部は凄い。

頭部へのチャレンジ

映像は上半身へのチャレンジの上位互換みたいな感じになっているが、結果的に頭を蹴る形になってしまうケースが多い。何かあった際の重症度は他のどの部位よりも高いものとなるのでファウル以外の何ものでもないジャッジになる。キーパーが飛び出してボールを保護しようとしたところに猛ダッシュで走り込んで蹴り込むシーンなどで発生しやすい。意図的にサポーターに対してやってしまうと試合開始前に退場という事態になってしまうことになる。

乱暴な行為

いわゆる肘打ち。報復としてのそれも対象で、一発レッドカードとしてよく見る光景。「肘打ちだとレッドになるから噛みついておくか」というようなことを思った人がいるのかどうかは知らない。

サッカーは紳士のスポーツでサッカープレイヤーは紳士であれという文脈を考えれば当然のファウル判定。肘打ちがどれだけ痛くて辛くて泣きたくなるかは実際に喰らえばわかる。

なお、この行為には競技規則に「頭突きを含む」と明記されており、主審や副審が見ていなくてもオンタイムライブ中継でカメラに写ってなくても頭突きしたら即退場で偉大なサッカーキャリアを終了させてしまうことになる。それはそれで伝説になる訳だが、やっぱりダメゼッタイ!

このようなことをJFAが公式に発しており、このとおりに運用することを審判団に通達しているということになる。当然、クラブを通じて選手全員に通達されていて選手にも順守徹底のメッセージを発信している。

これらの目的と意図は「選手生命を脅かすようなプレーはフィールドから排除する」ということであり、選手あってのJリーグという考え方がベースとなる。

ファウルだが選手生命を脅かさないプレー

今回の試合のポイントはここになる。

徳島の視点に立てばルールを最大限活用して試合を運んだと言えるし、新潟の視点に立てばスムーズでエキサイティングな試合を期待していたのに阻害されたという不満が残る結果となった。

当事者のコメントを確認できていないので推測でしかないが、これはある意味で徳島のチーム戦術だったと思うし、選手生命を脅かすことなく試合を運んだという事実は残っている。

選手生命を脅かさないように「ファウルで止めて相手にフリーキックを与える」というペナルティを受け入れる、そのペナルティを受け入れた上で試合に勝つという徳島の割り切りはエンターテイメントとしてどうかという視点はあるが、勝利という目的を達成するためには用いることができる手段の一つとなる。

決して立派とは言わないが、ルールの範囲内で取ることのできる行動を取った徳島のチーム戦術だったのではないだろうか。親善試合の日本×ブラジルもブラジル視点では日本に大きな不満を持っているように思える。

フットボールコンタクト

気持ち良く終わりたいので最後に美しいフットボールコンタクトの世界を紹介しておく。見ればわかるさ、美しいフットボールコンタクトの世界。

エキサイティングで感情をポジティブに爆発できる試合をたくさん見たいですね。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。