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審判(選手を守るために):2020 J2 第33節 ジュビロ磐田×アルビレックス新潟

昇格に僅かな望みを懸ける両チームの結末は1-1のドローで試合終了のホイッスルがなった時には双方虚無という雰囲気。

この虚無感に溢れてしまった試合では後半81分にロメロが負傷交代となってしまったが、このロメロの負傷は審判が試合をコントロールしていれば防げたと思うし、負傷により交代せざるを得なくなった結果として生まれた虚無。

ということで審判の話。

審判とは

審判の役割について競技規則から引用してみよう。最新のルールブックはJFAのサイトから無料で入手できる。IFBA(国際サッカー評議会)の競技規則日本語訳というものだ。

この規則の第5条に主審について記述されている。

1. 主審の権限
各試合は、その試合に関して競技規則を施行する一切の権限を持つ主審によってコントロールされる。

もうひとつ引用してみよう。用語集の審判用語の項目から。

審判員(match official(s))
サッカー協会または試合を管轄する競技会に代わり、サッカーの試合をコントロールすることに責任を持つ1人または複数の人員を指す一般的な用語

このように、審判(主審を中心とした複数の審判員)は競技規則に基づき試合をコントローする権限と責任を持つことになる。

「試合をコントロール」というキーワードがここまでで何度か出てきているというか意図的に出しているのだが、今回の試合は審判が試合をコントロールできなかった試合だった。

試合後のインタビューでアルベルト監督もめちゃプンスカしてたけど、個人的には磐田の得点の起因となったスローインの判定よりもファウルの取り方に疑問を感じた。

競技規則の冒頭に書いてある一文を引用してみよう。

サッカーには、競技規則がなければならない。「美しいサッカー」の美しさにとって極めて重要な基盤は「公平・公正さ」である。それは、競技の「精神」にとって不可欠で重要な要素であり、競技規則によって担保される。最高の試合とは、競技者同士、審判、そして競技規則がリスペクトされ、審判がほとんど登場することのない試合である。

この試合、実は審判がそこまで登場する試合ではなかったのだが、審判がリスペクトされた結果ではない。

審判が適切にファウルを取らなかった結果、選手は「このくらいで当たってもファウルにならないのなら、もうちょっと強くアタックしても大丈夫だな」とファウルの基準が徐々に上がり、最終的にサッカー選手の体が耐え切れないほどの強さでアタックしてしまった結果は選手の負傷。

審判も選手も競技規則をリスペクトして「過剰な力で」アタックさえしなければ起きなかった負傷だし防げた負傷でもあり、一番起きてはいけないことが起きてしまった。これが選手生命に関わる怪我だったりしたら人生を大きく変えてしまうことになってしまうし、それを望む者など誰もいない。

似た雰囲気の試合として第30節のヴェルディ戦があるが、あの試合は怪我人が出なくて本当に良かったと胸を撫で下ろした試合だった。あの試合も何かタイミングの悪い瞬間があったら怪我人が出ていた試合だったと思う。

これは個人的な審判という存在への考え方だが、審判は試合を円滑に進めるためにあるのではなく「選手の安全を守るため」にあると思っている。

サッカーという理論と感情が複雑に混ざり合ったゲームにおいて、ピッチの中の選手は感情が理論を上回る瞬間がどうしても出てくると思うし、強い感情は強い行動を伴う。

強い感情を伴った行動は観る者を熱狂させるが相手選手に矛先が向けば凶器になりえるし、何より私は狂気で荒れたピッチを見たくない。

ただし、審判がピッチの中に存在すれば選手の強い感情を第三者の客観的な視点で説明することにより理論と感情のバランスを保ちゲームに安心を与えることができる。

審判とはこういった役割を担っていると思うし、その為に競技規則に沿った対応を求められているのではないだろうか。

競技規則をリスペクトして過剰な行動とならないように、そのゲームにおける閾値を超えたら笛を吹く権限と責任を有しているのではないだろうか。実際にはこの閾値の設定がなかなかに難しいと思うのだけど。

今回、本当に辛い結果となってしまった具体的なシーンを見てみよう。時間は後半75:20。

磐田が最後方からロブパスで中盤にボールをフィードすると磐田の受け手がトラップするタイミングに合わせて中島が激しくチャージして双方激しく絡まり合いながら倒れ込むもノーファウル。主審が目の前3mの位置で目視した判定であり、実際に中島はボールにアタックしているし、この判定に異を唱えた選手もいない。

そして、このプレイで溢れたボールを拾ったマウロがパスを出してロメロがターンした瞬間、磐田の選手が中島と同じようなタイミングでボールを狩りに行ってロメロの右膝を内側から弾き飛ばしてボール奪取するもノーファウル。こちらもキチンと視野を確保したうえでの判定であり異唱える選手もいない。

しかしながら、結果としてロメロがこのプレイで負傷して動けなくなったことで交代となってしまった。

この試合、審判は少々の接触ではファウルを取らないという基準は試合開始から明確に持っていたと思う。

基準は基準で良いのだが、その基準が選手レベルやプレー強度、試合の流れに合致した基準なのかということは良く考えなくてはいけないのではないだろうか。

笛を吹きすぎて試合の流れを止めることでサッカーの魅力を損なってしまうのは良くないこととされるが、やはり審判は選手の安全を守るために存在していると思う。

ちなみにプロリーグの審判は様々なプレッシャーや苦労や地道な積み重ねを経てピッチに立っているということは我々サポーターもキチンとリスペクトしなくてはならない。プロリーグの笛を吹いているというだけで一定の品質は担保されていると判断していい。

審判、本当に大変な存在だと思わずにいられない。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。