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リトリート442ブロック:2022 J2 第35節 アルビレックス新潟×FC琉球

戦術が噛み合う拮抗した前半、ゴールラッシュで完勝を決めた後半。夜中に順位表確かめ首位を奪還。このままの勢いで昇格の予感。

スワンでの声出し応援も観ていて非常に気持ち良かったナイスゲーム。

本当に戦術と戦術が噛み合ってナイスゲームな前半だったし、その展開は間違いなく琉球のリトリート442ブロックだった。リトリートとは「撤退」の意味。

そんなリトリート442ブロックと新潟の攻略方法について解説する。事前に守備観戦に関するnoteを読んで貰えると嬉しい。

リトリート442ブロックの狙い

ちなみに、リトリート442ブロックとはあんまり言わない。リトリート442か442ブロックのどちらかだと思うが、とにかく引いてブロックということが言いたい。今回琉球が敷いてきた442守備は図のとおり引いてブロックという形になる。

琉球の敷いたリトリート442ブロックと新潟の配置。秋山はサリーダ(ボランチが最終ラインに落ちる動き)したりしなかったり。

琉球の狙いとしては、下手にプレスで突っ込むと新潟の華麗なビルドアップでかわされて一気にゴール前という展開になってしまうし、どうせボールを運ばれるんなら最初から引いてしまえば無駄な体力を使わなくても済むというもの。

加えて、ブロックを崩されてガタガタになった状態でゴール前の対応をするよりは綺麗なグリッドを作って待ち構えた方が守備強度を向上させることができるだろうという意図はDAZNの画面越しにも感じ取ることができた。

引いて守る?引いて守るのならば541ブロックでも良いのでは?と思うかもしれないが、それだと攻撃に転じるには火力が不足するし琉球には野田と草野という割と屈強なフォワードが存在するのでブロックに絡めて奪って強烈屈強カウンターを当てたいというのもDAZNの画面越しから伝わっていた。

ということで新潟対策として琉球が用いたのはリトリート442ブロックだし前半はこの狙いが十分機能していた。琉球としてはポゼッションが10%でもゴールの確率が1%でも一発ゴールが決まればオールOKの狙いである。

そんな琉球が毎試合リトリートしているのかは定点観測していないので不明だが、アトレティコBでの監督キャリアを持っているナチョ・フェルナンデス監督なので442はナチョ監督のスタイルなんだろうなとは思う。

442ブロックにおけるボールハント方法

442ブロックの基本はボールの出どころを限定させて誘い込んで奪うというものになる。出どころを限定させて奪う方法は大きく分類して「サイド追い込み型」と「グリッド誘い込み型」の2つが存在する。

サイド追い込み型は、いわゆるワンサイドカットと呼ばれる方法でボールホルダーにアプローチしてボールを外に追いやって、タッチラインを背にしたボールホルダーを身動きできない状態にしてから複数人で奪うという形になる。442ブロックで一般的なのはこの方法だと思う。泰基は本当に狙われまくっていた。

ボールホルダーに対するワンサイドカットでサイドに追い込む形。前方を複数人で塞ぎつつタッチタッチラインの存在をうまく活用することで攻撃側の選択肢を限定させる。

もう1つの方法であるグリッド誘い込み型。こちらは中央グリッドにパスを誘い出してから刈り取る方法。

442ブロックを敷かれた場合、フィジカルに自信満々じゃない限りフィジカルコンタクトは避けたいし、新潟にフィジカル強者はそこまで多くないという現状。琉球はここに狙いを定めていた感はある。

新潟がグリッドの中央でボールを受けようとすると後ろから物凄い勢いで詰めてきて後ろから当たってボールを奪おうとするシーンは試合中頻繁に確認できた。

敢えてスペースにボールを出させて後ろから体を当てて奪う形。前半は高木と松田がアタックされまくっていた。

というような琉球のリトリート442ブロックだったが、新潟はこの守備をどのように攻略しようとしていたのか見ていこう。

サイドチェンジとダイレクトリターンパス

サイド追い込み型への対策

サイド追い込み型への対策はサイドチェンジがセオリーとなる。

442ブロックはコンパクトに維持しないとグリッドが広くなって中央にボールを通されてしまう。とにかく縦横をコンパクトに維持しないといけないのが442ブロックである。

縦横をコンパクトにするとピッチの横幅を全てカバーすることはできないので、ボールサイドに守備を寄せれば逆サイドに広大なスペースが発生するのは必然。この逆サイドスペースにサイドチェンジという形でボールを飛ばすことができればサイドハーフなどのアタッカーにフリーでボールを預けることが可能になる。

サイド追い込みで片方に寄ったブロック。サイドチェンジでアタッカーにフリーでボールを預けることが可能になる。

この試合、サイドチェンジ自体はセオリーどおりに松田へ何本か飛んで行ったが松田のトラップミスや受ける位置がよろしくないなど、せっかくのチャンスメイクを無駄にするシーンが多かった。

後半から投入された三戸は松田が収めきれなかったようなボールも難なくピタッ!と収めてギュンギュン切り込んでいたので松田はもっと頑張れ。三戸、シマブク、松田で切磋琢磨して新潟の最強右サイドを構築してほしい。

グリッド誘い込み型への対策

グリッド誘い込み型に対するアンサーは新潟にとっては当たり前のプレイになってしまうが、ダイレクトパスでボールを戻すことにより守備に当たられる前にボールを離してグリッドに歪みを生じさせてから空いたスペースを突くという形である。

入れて出して入れて出してという新潟が一番得意なやつ。

グリッドにボールを入れて当たられる前に戻すと必然的に生まれるスペース。このスペースを突いてチャンスメイクを狙う。

このような攻防が繰り広げられ、戦術と戦術が噛み合ってお互いの攻守が一歩も引かず拮抗した試合展開となり、「サッカー観てるな!」という充実感を得ることができた前半だったが後半一気に試合が動き出す。

ゴールシーン解説

まずは高木の先制ゴール。

そういや泰基はロングスロー持ってたな、ということを誰もが忘れていたであろう泰基のロングスローからの先制ゴール。

ボールを拭くこともなく投げたので琉球側はロングスローが飛んでくると予想していなかったような気はする。誰もが予想外だった形でゲットした先制点。

追加点は伊藤のラストパスを高木が蹴り込んだゴール。

秋山から伊藤に出した守備を飛ばすパスも見事だったがが、高木は蹴れるが守備は届かないという僅かなスペースにピンポイントで出した伊藤のパスも凄い。伊藤の180度ターンするコントロールオリエンタードも絶品。伊藤と高木のゴールデンコンビ爆誕である。

最後は嬉しい初ゴールとなったゲデス。

試合終盤で琉球が前掛りになっていたというのもあるが、見事なグリッド誘い込みにカウンターを当てるプレイ。

マイケルからのパスで守備を釣り出してワンタッチで叩いて生まれた最終ライン裏のスペースへラン。結果として裏抜けしたゲデスの元に幸運のボールが転がり込んで最後は落ち着いてコントロールショット。

残り7試合、一戦一戦目の前の試合を確実に戦い抜きましょう。

オープンチャットでのリアルタイム解説

試合開始前

泰基がお久しぶりで三戸復帰のゲデスですね。マイケルも戻ってきました。マイケルデンの壁は威圧感ありそうですね。

ヤン秋山のユニットはヤンが後ろで秋山は前目でプレーしたりするんでしょうか。伊藤高木のユニットもあるのでボランチ二人は前に出ないような気はします。

琉球は大本ベンチスタートですね。泰基とのマッチアップは見れるでしょうか。戦力やチーム状況からしたら確実に勝ち点3を取らなくてはいけませんが残留ブーストの存在は我ら新潟も良く理解しているはずなのでしっかりと勝ってもらいたいです。

今日は声出し応援ですが、現地参戦の皆さんは選手の後押しをよろしくお願いします!

前半終了時

琉球のリトリート442ブロックが硬いですね。ナチョ監督なのでどうしてもアトレティコを意識してしまいます。洗練されていますし前半は最後まで集中していました。

新潟はセカンドボールを相手陣内で回収しまくりですがゴールを割れません。松田へのサイドチェンジが多く入りますが期待感は大きくありません。

琉球はとにかく屈強な前線2人が1%の確率でも一発決めればOKですので心理的には琉球の方が落ち着いているのではないでしょうか。DAZNスタッツ出ましたが琉球は狙い通りでしょうね。

決して派手な試合では無いのですが、新潟はセカンド回収のプロセスがとにかく美しいですし決まらないだけでゴールへのプロセスも洗練されています。琉球のリトリート442も洗練されています。

個人的にはサッカー観てるな!という感じの良い試合なのですが、せっかくの声出しなのでもうちょっとエモーショナルな展開も観たいですね。

試合終了時

終わってみれば完勝でした。内容も求めるものが多く見れてほぼ完璧でしょう。

ゲデスは嬉しい初ゴールですし三戸も復帰早々キレキレです。秋山もデンも一気にポテンシャルが開花して力蔵監督の育成手腕が光ります。

サダムスレイはJ2キングオブチートではないでしょうか。殴ってドン!のJ1チームからオファーくるんじゃないでしょうか。

泰基はロングスローが得点に繋がったものの本職ではない田上の方が新潟のサッカーを体現している状況、かなりまずいですね。

今日のパフォーマンスは来季の契約にも影響するのではないかと心配になります。田上の方が圧倒的に外内の移動量が多く滑らかでした。攻撃時に特に派手に上がる訳でもなくストロングが見えませんでした。

フリエ岡山の結果どうなるでしょうか。

(秋山のサイドチェンジについて)秋山のロブやフィードは本当に芸術的です。

この試合ではSNSで「SBが絞る」というような表現を見かけましたが、琉球のタイトな442ブロックをセオリー通りにサイドチェンジで攻略しようとしていました。

サイドチェンジの飛び先は松田でフリーで受ける形が何度も作れていたのにトラップそのものやコントロールオリエンタード(ボールを受ける体の向きの作り方)がよろしくなくてことごとくチャンスを潰していました。

そんな松田とネガティブな部分の対する三戸の受け方向き方のコントラストは明確でしたね。

三戸があんなにギュンギュン切り込めるのはこの所作が洗練されているからですし、松田が結果的に縦に走りがちになる理由でもあるのではないでしょうか。

秋山は本当に新潟のスタイルに欠かせない存在になりました。一時はどうなることかと思いましたが、こうやってダメな時も良い時も見続けることができるのは新潟サポの特権ですね。

以前守備戦術観戦の基本について書いたnoteです。

新潟のスタイルを442ブロックで防ぐのは相性が悪すぎるのですが、信念を持ったチームは442ブロックで来ますね。

ナチョ監督が今後どういったクラブでどういったキャリアを積むのかはわかりませんが、琉球戦を見る限り442の代名詞になるかもしれません。

こちらは新潟のスタイルがが442ブロックに対して優位であることを書いたnoteです。

442ミドルブロックと新潟のビルドアップ配置例

こういう配置になるのでボール回されまくりになりますし、プレス&ライン上げをすれば裏ポンです。

こういった制約の中で琉球はリトリート442ブロックでビルドアップ無視を決め込みます。そこまで読んでいたのかどうかは知りませんが、松田へのサイドチェンジは放置とか決めていたのかもしれませんし結果オーライでした。

そんな要素が絡まって前半は渋さ爆発のナイスゲームが展開されました。

(泰基のプレーについて)タイキと田上、松田と三戸を定点観測で見直しましたがタイキは悪くなかったですね。むしろ現時点でできることを基本に忠実に愚直にこなしていました。

伊藤が常にIHの位置にいるので結果的に大外張りっぱなしになっているだけで伊藤が大外に行けばきちんと内側にレーン移動してトライアングル形成しています。オフザボールのフリーランがいまいち効果出ずというところがネガティブに写ってしまいました。

縦位置としては比較的高めなのですが受けて戻すを繰り返していたのでこの辺りが初見での物足りなさを感じたのだと思います。

しかしながら、本人も目印にしているであろうペナ角を踏む斜めランはタイキのスタイルになるでしょうね。この飛び込みからゴールも十分狙えます。

秋山同様、これから一気に伸びる可能性は感じさせてくれました。とにかく今は基本に忠実にやっているだけでしょう。田上は既に独り立ちしているので全部自分の判断と責任で動くという大人の対応とのコントラストが大きかっただけですし、私も求めるレベルが高すぎたようです。タイキ、基本はしっかりできています。

松田はやっぱりトラップミスとかでチャンス潰したシーンは散見されました。

一方の三戸、松田が苦しそうにトラップするようなシーンでも違和感なく収めるのは足の速さが大きいですね。足の速さとトップスピードでボールをコントロールする技術が本当に凄いです。

ということで、タイキは再評価、松田は頑張ってという形に修正させてください。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。