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サッカー観戦で学ぶ守備戦術:2022 J2 第14節 アルビレックス新潟×ツエーゲン金沢

連休の連戦を負けなしで走っている俺たちの新潟。前節で心配になった秋山も今回の試合では堂々たるプレイでフル出場。あとは超絶パスでアシストを決めてくれたら俺たち大満足するのでヨロシク秋山。

この試合は金沢の守備が前半はブロック、後半はプレスと両極端に振れたのでサッカー観戦を戦術的に観るコツを守備という視点で解説してみる。

どの守備パターンなのかを確認する

新潟は攻撃に特徴のあるチームだし、新潟の攻撃については色々語られているのでとりあえず見ないという割り切りをする。2021年以降のJ2はどのチームも新潟のビルドアップをどうやって守備で攻略するかという命題を設定して挑んでくるので新潟の攻撃はとりあえず気にしない。どうせ誰がスタメンでもやることは大体一緒。そこが新潟の強みでもある。

守備の基本は大雑把に442と433と541の三種類で、それぞれにブロックとプレスという2つのパターンがある。これらの組み合わせで守備の特徴が決まるし相手チームが仕掛けてくる新潟ビルドアップの攻略方法や狙いも見えてくる。

サッカー守備戦術における主なパターン。

実際にはこのパターンに当てはまらないパターンもあるが、基本的にはこのパターンのどれをやっているのか把握することに意識を集中させると良い。

近年では532ブロックや523ブロックや4231プレスというものがあるが、どれも5レーンを基本とするモダンサッカーを攻略するために編み出された守備戦術だしJ2においては頻繁に見るものでもないのでとりあえず気にしなくて良い。以下2つのnoteは参考までに。

それでは個別パターンの解説となる。

442ブロック

最もオーソドックスな守備戦術でサッカーのピッチを最も効率的に守れるのが442ブロック。442の並びでブロックを作って縦パスを網に絡めとる守り方。

ピッチ全体を最も効率よく守れる442ブロック。

442ブロックはブロックの形を維持したまま全体をスライドさせてボールをサイドに追い込んでから奪うというやり方が基本になる。いかにしてブロックのグリッドを維持したままブロック全体をスライドさせられるかという練度が問われる守備戦術でもある。

2022シーズンでは群馬の練度が高かった。大槻監督のサッカーは堅実で強いと思うが、新潟は442ブロック攻略のセオリーであるサイドチェンジで破壊した。サイドで奪いにくるということはブロックが片方のサイドに寄るということで逆サイドに広大なスペースが生まれる。してやったり。

群馬戦でゴールに繋がったサイドチェンジによる442ブロック攻略。

442プレス

442プレスは442ブロックの形を基本としながら2トップが前線から外側にボールを追い出してサイドハーフが大外までボールを積極的に奪いにくる方法。練度を高めた442の行き着く先はこれになると思う。J2だと金沢や町田が伝統的なスタイルとして確立している。

2トップがパスコースを限定させて誘導し外側で奪取する442プレス。

アグレッシブな守備となるが飛び出たサイドハーフのスペースをサイドバックが埋めてというように連動した動きが必要になりスタミナの消耗も激しい。

最近は442ブロックを敷いた状態からサイドハーフが相手サイドバックを牽制しつつボールが出た瞬間に猛プレスというのがトレンド。

J2ではこの守備方法が最も多いような気がするし、新潟対策としてはスタミナ消耗を最小限に抑えつつ新潟のストロングを消せるという汎用的な守備方法だと思う。プレスと呼ぶべきかブロックと呼ぶべきかは非常に曖昧。

基本ブロックだがサイドバックにボールが入るタイミングで単独プレスに行く形。

近年では2トップがワンサイドカット猛犬プレスしてボール追い出しという形の442プレスは暑苦しい印象を持つようになったし、新潟にそれをやっても華麗なパス回しで躱されて終了するので新潟相手にはどのチームも旧タイプの442プレスをやってこない。

守備は構築しきれてないが新潟のビルドアップは封じたいという時に442ブロック基盤のサイドハーフプレスという形になることが多いような気がする。

なお、日本で442と言えば長崎の監督をやっている松田浩氏の存在がある。442守備戦術を語らせたらスペシャルな存在だし長崎のサッカーも屈強な442守備である。松田氏の書籍は疑いようの無い良書なので守備戦術の入門として推奨せずにはいられない。

433ブロック

433ブロックの主な目的は中央封鎖。

442ブロックでは1枚目の壁を突破されがちだが、最前線を2人ではなく3人にすることで1枚目の壁を突破されにくくなる。とにかく壁の枚数を増やす守備が433ブロックとなる。

中央突破を防ぐ433ブロック。

新潟のビルドアップはボランチのヤンを中心とした中央からということを考慮すれば新潟対策として合理的な守備方法になるが、2列目の壁の幅が短くなるので新潟のストロングであるサイドハーフにボールが渡りやすくなるということにもなる。この辺りはどこで勝負するかとというチームの方針で決まってくる。

433ブロックが効果を発揮した試合は開幕戦の仙台で、新潟相手に前半は442ブロックを敷いてきたがインサイドハーフの伊藤を落とす形のビルドアップに翻弄されてしまったので後半から433ブロックへ変更。これがうまく嵌って新潟は開幕戦勝利とすることができなかった。

433ブロックで伊藤にビルドアップ参加させなかった仙台の後半守備。

433プレス

攻撃的な守備と形容されることの多い433プレス。前線3枚でとにかくセンターバックやサイドバックからボールを奪い取ってしまえという守備となる。

キーパーに対しても積極的にプレスを掛けていくのが442プレスとの違いであり、キーパーまで含めた数的優位でビルドアップする新潟に対して数的不利の状況を作らせない対応となる。スタミナの消耗は最も激しいが、キーパーのキックミスを誘発できれば大チャンスである。

キーパーにも積極的にアタックする433プレス。

433プレスが強力なJクラブといえば京都になる。京都は433プレスでJ1昇格を果たした。新潟との試合は圧倒的な攻撃的攻撃 vs 圧倒的な攻撃的守備という熱いガチンコバトルが繰り広げられた。圧倒的な走力体力気力破壊力な京都だった。

541ブロック

541ブロックは最も守備的な守備となる。ハーフウェイラインより後ろに下がってゴール前に圧倒的な壁を構築してパスコースを塞ぎシュートが入らない状況とするので観ている側からすると爽快感を感じられない試合になりがち。

屈強な壁2枚でシュートもパスも通させない541ブロック。

基本フォーメーションが3バックの場合には必然的に守備は5バックとなる。サイドに張り出したウィングバックが最終ラインに落ちて5バックを形成するのがオーソドックスな形。ちなみに1トップはカウンター要員でしかないので守備のタスクはほとんど無い。

541の場合は守備の壁が2枚しか無いので前の方でブロックを作ると裏ポン一発で大ピンチになってしまう。結果として自陣に引きこもる以外の選択肢はない。無いはずなのだが伊藤監督時代の甲府は伝統的に541ミドルブロックをやっていたりした。541プレスは構造上成立しない。

541ブロックは3バックのチームならほぼ間違いなく使ってくるので代表例というのは特にないが、今シーズンの対戦相手では千葉が541を使ってきたものの新潟の攻撃の前ではうまくいかなかったので後半から433ブロックに移行して凌ぐ試合展開となった。結果はアーッ!

このように守備のパターンを把握して観戦すると戦術的な面白さを感じることができるかと思いますし、これらの守備戦術を新潟がどうやって破壊するのかという部分に着目すると新潟のサッカーがより楽しく観戦できるかと思います。

サッカー戦術って楽しいですね。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。