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新潟式4231ビルドアップ:2022 J2 第10節 ファジアーノ岡山×アルビレックス新潟

炸裂した新潟式ビルドアップからのビューティフルゴール。全てが完璧だっった先制点。

外から観る分には全てが予定通り計画通りだと思っていたが、実際には岡山が4123&433プレスではなく4231&442ブロックで挑んでくるという戦術変更により新潟に少々の混乱が生じていた試合だったという選手監督のコメントが出ていたのだが、それでもこのプレイ。

そういうところから思うに、新潟のビルドアップは完全に文化になったんだろうという誇らしさがある。

今回はアルビレックス新潟2022シーズンにおける4231ビルドアップについて解説していく。

なお、開幕当初にやっていた伊藤をフル活用した4123ビルドアップは以前の解説を参照してほしい。

442ブロックを破壊できるビルドアップ

サッカーのピッチサイズを考えると守備戦術の基本は442ブロックが最も合理的で効率的かつ汎用的なので守備の基本となるのが442ブロックだったりする。

シーズンを通して多様なチームに勝ち続けることを考えたら442ブロックを攻略できる攻撃方法を構築することが合理的な判断となる。

その442ブロックを攻略するための攻撃を封じるために433プレスや541ブロックや最近のトレンドの532ブロックみたいな守備の派生が生まれる。いわゆるメタゲーム。サッカー戦術の歴史はメタゲームでもある。

そして、伊藤をシステムの中枢に組み込んだ新潟の4123を用いることで442ブロックを破壊することは容易だったが、アンカーに高(ヤン)を置くしか選択肢がなくてヤンの体力と心中するシステムだったことは否めないし、左利きキッカー要員の島田をフル稼働できなかったりヤン不在時の戦術崩壊という懸念があった。

このようなシーズン序盤で、4123で試合内容は申し分ないものの勝ち点3という結果がなかなか出ないことが伴い、4231にシステム変更した松橋監督だったが、見事にこれがハマって勝ち点3が拾えるようになったというのがここまでの新潟。

そんな新潟の4231の話になる。

基本に忠実に5レーン

現代サッカーの基本となっている5レーンだが、愚直にこれを遂行しているだけと言ってしまえばそれで終わりになってしまう。

5レーンでポイントとなるのはトライアングルを作ること。そのためには前後の味方が同じレーンに立ってはいけない約束事がある。例えばウイングの選手が内側のレーンに入れば、サイドバックの選手は外側のレーンに飛び出す(オーバーラップ)。逆にウイングが外側にポジショニングすれば、サイドバックは内側のレーンに走り込む(インナーラップ)。
「同じレーンに3人立てば、三角形を作れないからボールが回らない」
その状況を作らないためにも、お互いのポジショニングが重要となるのだ。

J2では追随を許さないレベルでボールを回せる新潟なので、基本に忠実にプレイするだけで相手を圧倒できたりする。

非常にシンプルなサッカーであるが、あえての特徴と言えば442ブロックの2の中間に選手を置いて、そこを中心に5レーンを利用したトライアングルを作るという形になる。バルサやスペイン代表がやっている形でもある。

高(ヤン)を中心に捉えた5レーン配置。

この状態からヤンにボールを入れると相手の守備が緩ければヤンがターンして前を向いて攻撃のトリガーになれるが、新潟の場合はヤンのターンではなくボールを出し入れする目的は442ブロックの2をピン留めして動けなくすることである。

守備にターンの危険性を意識させることにより、ヤン1人で相手2人の動きを留めることができる。

この形になると近くにいる島田がボールをフリーで受けることができるようになるし、島田がプレスに合うようなら逆サイドの伊藤が落ちてきてボールを受けることもできる。島田、伊藤、高木が落ち気味になって守備も付いてきてくれれば至恩や谷口目掛けて裏抜けフィードを供給できるようになる。まさにこの試合のゴールの形。

実際には中央でボールを受けるのはヤンだったり島田だったりと流動的だし、伊藤じゃなくて高木が落ちてきたり状況によっては谷口がメチャクチャ落ちてくることもあるが、5レーン配置の基本を崩さずに誰かがそこに配置されているという原理原則を愚直に遂行しているのが新潟のビルドアップとなっている。

このように、フォーメーションの表記は4231となっているが実際にはそのように配置されているわけではなく、そのポジションにこのくらいの人数のプレイヤーを選んでいますというのが新潟のフォーメーションになる。フォーメーションなんてただの記号なのです。

ということで、ヤンと島田を同時起用したいから電話番号が4231になりましたというだけである。やっていることは基本的に4123と変わらない。重心が前になるか後ろになるかという違いだけで、重心を後ろにしたほうが安定したので継続しているという現状ではないでしょうか。

442ブロックを破壊し続ける新潟のビルドアップに注目です。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。