徳島ヴォルティスの賽の目ブロック:2022 J2 第30節 アルビレックス新潟×徳島ヴォルティス
このキックが凄い!2022にノミネートされそうな秋山の超絶キック。ゴメスの飛び込みランも素晴らしいし徳島の守備を寄せたコレクティブな動きも良い。
これ、利き足じゃない左足なんだぜ?そして試合最終盤に差し掛かった時間帯の同点ゴールなんだぜ?
などなど、このシーンだけ切り取れば非常に熱量の高い試合だったが通してみれば本当に酷い試合だった。
2失点とも徳島のしてやったりというよりは新潟のあり得ない連携ミスが重なる目を覆うような酷い失点の仕方だったし、徳島の完全新潟対策な変則守備にいいように嵌められた試合だったと言っても良い。
ということで、徳島が新潟対策として繰り出した変則守備について解説する。最後に失点シーンの解説もおまけで書いた。
5212の賽の目ブロック
新潟との対戦で盛岡が繰り出してきたペンタゴン・ブロックというものがあるが、徳島ポヤトス監督が繰り出したのはペンタゴンの改良版と思ってもらえればいい。ペンタゴン・ブロックの弱点を補強した結果の賽の目ブロックとなる。
このペンタゴンブロックは盛岡以外にもたまに仕掛けてくるチームがあるが、新潟はこのペンタゴンに対して自信満々にペンタゴンのど真ん中でボールを受けて破壊するということをやってきた。
そんな過去をリサーチしたのかどうかは知らないが、徳島ポヤトス監督はペンタゴンではなくサイコロの5の目の形のブロックを敷いてくる。
このブロックが大ハマりしたのがこの試合。
ペンタゴンなら高(ヤン)が中央に入って新潟のストロングであるショートパスで打ち込んでペンタゴンの形を歪ませてから攻略ということができたが、賽の目ブロックを敷かれるとそもそもヤンが中央に入り込むことさえできない。児玉は本当に良く効いていてヤンが何もできない時間が長く続いた。
こんな形は全くもって想定していなかった新潟なので、ピッチ上の11人がなんとか攻略方法を考えて前半凌ぎましょうという展開になる。そんな新潟イレブンが対応した方法は、とりあえず空いているサイドからボールを回して中央レーンに持っていこうというもの。
しかしながら、徳島もこの回し方を誘っているのは明確で、タッチライン際までボールを追い込んでからハントするという対応を当然のように仕掛けてくる。
やっぱりそうなるよな!というのはピッチ上もベンチも観ている我らも予想通りの展開となるので、この形になったらマズいよなぁ… ということで新潟は敢えての中央突破を試みる。中央封鎖に対して中央突破を試みる新潟に痺れる憧れる。
具体的にどのように中央突破を仕掛けたのか確認してみよう。場面は前半8:30くらいのシーン。
最終ラインのセットからヤンが中央にポジショニングして外に流れる動き&ボールの動きでヘソの児玉を釣り出してサイドに密集を作り出してからボールを最終ラインに戻す。
そのタイミングで賽の目ブロックの手前にポジショニングしていた星にボールを預け、星は児玉が戻れないタイミングでボールを受ける。
児玉は星にアタックできないので賽の目の後方を担う白井が飛び出るしかなく、白井が飛び出たスペースに伊藤がポジショニングしてフリーで受けるという形。
最後の高木ターンが決まっていれば賽の目ブロックを完全攻略した形で決定機だったので、ここで決めていれば徳島の戦術を試合開始早々に破壊して一気に試合を決めることができたはずなので、感想戦としてこのプレイはターニングポイントだったかなと思う。
おまけ:失点シーンの反省会
その後もなんとかして賽の目ブロックの内外でパスを出し入れしながら中央レーンにボールを置いてシュートということを狙い続けるが、徳島も児玉を中心に鉄壁を敷いて前述のシーンほど上手く崩せるシーンがなかなか訪れず、そんなこんなしているうちに最終ラインからのパスミスを奪われてショートカウンターからの失点。酷い!
続いて2点目。これはちょっとマイケルな失点。
新潟サポの間でよく言われる相手のフィジカルFWに小柄サイドバックのミスマッチとか、そういうレベルの話ではなくて守備ブロックの配置が圧倒的におかしい。カウンター喰らってスクランブルという状況はあるが、それでも酷い。
動画には映っていないが、ことの始まりはゴメスが攻め上がりの状況でプレスでサイドに誘導されて史哉が苦し紛れに蹴り出したボールを回収されてからのカウンター。
ボールを奪われた際にゴメスは激上げしているので守備タスク不可、加えて史哉が左タッチライン際にいるので藤原とマイケルがスライドして2トップにマンマークの形になる。
ここまではカウンターの対応としては良くて、マイケルもボールをブロックしかけたが徳島の白井が後ろから猛烈に走ってきてセカンドボールを回収する。この時マイケルがイエロー上等で止めていたら良かったというのは感想戦。
で、ここからが動画のシーンとなるが、ヤンが左サイドでボールホルダーに対応して、マイケルは軽くボールホルダーに寄せに行く。この寄せ自体は最近バシバシとアーリークロスをフリーで上げさせている新潟なので、そうはさせないという意識からしてOKだが、その後が非常にマズイ。
ゴメスが猛ダッシュで最終ライン左に戻ってくるのを見て安心したのかマイケルは変なタイミングでボールに背中を見せて自分のポジションに戻ろうとする。
これでは後ろに目はついていないので状況把握できないし、ボールから目を切るなというのは少年サッカーでも教える話。さらに、戻ろうとするポジションには史哉が既にいるのでマイケルの配置場所が存在しない。
この後は白井、児玉、新井にマークを外されて、ゴメスが対応しなくてはいけない大外ボールホルダーをヤンが慌てて対応することになり、その結果ゴメスは意図してなかったであろう白井を追いかけるはめになり、対応間に合わずにクロスを上げられて一美を目視認識できていない藤原の後ろからドン!。その時マイケルは自分の配置場所を見つけられずに傍観という酷いプレイ。
クロスと死角からの飛び込み自体はなんの捻りもない基本中の基本。ミスマッチとかそれ以前の問題がこのプレイには存在していた。
ではどうやったら防げただろうか。
一つは先に書いたマイケルがイエロー上等で白井の突破を止めれば良かった。もう一つはどうして!という疑問しかないマイケルの変なタイミングでのフラフラジョグ。
ゴメスが戻り切るまで時間を稼いでからマイケルが自分の配置場所を見つけてゴメスとヤンでクロス対応しつつボールを回収したりゴール前ブロック固めたりが必要だったと思うし、どうしてそのタイミングでマイケル離れるの!と思った5秒後に失点という頭を抱える失点シーンだった。
マイケルが変なタイミングで離れずにゴメスの戻りを待っていれば、児玉→新井→児玉→白井クロスの流れは断ち切れたはず。結果としてクロス上がった後もマイケルは存在場所がないので何もできない。
こういうのをひとつひとつメモリーして、同じ失敗を再現させないように昇格まで走ってほしいですね。あの絶望的な状況から同点に追いついた訳なので、チームとしての地力は確実に上がっているのは全新潟が知っています。
「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。